科学技術未来戦略ワークショップ報告書
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材料創製技術を革新するプロセス・インフォマティクス

エグゼクティブサマリー

本報告書は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が令和3 年1 月24 日に開催した科学技術未来戦略俯瞰ワークショップ「材料創製技術を革新するプロセス・インフォマティクスの俯瞰」に関するものである。

本ワークショップは、4つの科学(実験科学、理論科学、計算科学、データ科学)を融合的・統合的に活用して目的材料の合成プロセスを効率的に探索する手法であるプロセス・インフォマティクスに関して、我が国の科学技術の強化に有効な研究開発戦略策定の一環として開催した。ここでは、プロセス・インフォマティクスの研究開発として今後取り組むべき重要な研究開発課題や、それを実施する研究開発の体制・仕組みなどに関するCRDSの仮説を提示し、個別プロセスにおけるインフォマティクスの活用事例や、プロセス・インフォマティクスに必要な技術群などについての話題提供を基に、総合討論で、取り組むべき研究開発課題・体制、アカデミアと産業界の連携の仕組み、人材育成などについて議論した。

CRDSの仮説として、①プロセス・インフォマティクスの共通基盤研究と、②個別プロセスのインフォマティクス活用研究を両輪として実施することで、材料創製研究におけるプロセス・インフォマティクスの実施体制を構築することができることなどを示した。

話題提供では、個別プロセスにおけるインフォマティクスの活用事例として、無機結晶(バルク・薄膜)、有機合成、機能性高分子、粉体プロセス、それぞれについて、現状と課題・将来展望について紹介いただいた。また、プロセス・インフォマティクスに必要な技術群として、データ科学、シミュレーション・モデリング技術、ハイスループット実験手法、先端計測技術など、プロセスに関連する最新の研究開発状況、課題・将来展望について紹介いただいた。

総合討論では、取り組むべき研究開発課題・体制、アカデミアと産業界の連携の仕組み、人材育成などについて議論を行った。その結果、プロセス・インフォマティクスの確立・普及には、研究者の意識の変革が重要であり、有機材料、無機材料、複合化材料でそれぞれの分野で成功例を作るのが大切であること、まずデータを集めることが重要であること、材料研究とデータ科学の両方の視点を持った若手人材の育成が重要であることなどの方向性が示された。

ワークショップでの議論を踏まえ、CRDSでは今後国として重点的に推進すべき研究領域、具体的な研究開発課題を検討し、研究開発の推進方法も含めて戦略プロポーザルを策定し、関係府省や関連する産業界・学界等へ提案する予定である。

※本文記載のURLは2021年3月時点のものです(特記ある場合を除く)。