科学技術未来戦略ワークショップ報告書
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社会変革を先導する量子科学技術

エグゼクティブサマリー


本ワークショップでは、量子科学技術で社会変革を起こすために必要な研究開発の方向性を明らかにするとともに、その推進方策について第一線の研究者と議論することを目的とした。まず、日本の強みである基礎理論や知識・技術基盤等を活かしながら、そのシステム化・実現化に向けたイノベーションを誘発し、当該分野の研究開発を長期的に継続、進展させていく仕組みに関して、産学官から話題提供していただいた。総合討論では、産業・イノベーション、国際戦略、知財・標準化戦略、人材育成の観点から、量子科学技術に関する研究開発の推進方策や拠点形成・運営のあるべき姿、さらにはそれらを実現するための課題などについて議論した。

これらの議論を行うため、CRDSの考える解決策を仮説として2つ提示した。一つは研究開発の底上げ、多様化を図るため、研究開発、コミュニティ形成、人材育成などへの各種支援制度の充実が重要であるとの仮説、もう一つは人材、知識・技術を集結し、現状では散発的と言われる我が国の研究開発をある決まった目標に向かって集中させることが必要との仮説である。ここでは、研究開発・教育の複数の拠点を様々な体制、規模で形成していくことを想定している。

話題提供では、国内外の研究開発動向と国際戦略、人材育成、標準化に関する取組みと将来展望について、量子科学技術全体、量子コンピュータ、量子計測・センシング(特に量子慣性センサ)、量子暗号ネットワーク、量子マテリアルの領域から報告がなされた。また、拠点形成・運営と研究推進方策として、理化学研究所計算科学研究センター(R-CCS)、量子科学技術研究開発機構量子生命科学領域における例が紹介された。さらに、産業・イノベーションに関する話題として、研究機関とベンチャー企業の視点から量子コンピュータ研究開発の方向性が示されるとともに、大企業の研究開発におけるオープンイノベーションの位置づけなどが報告された。最後に、内閣府における「量子技術イノベーション戦略」検討状況について中間報告がなされた。

総合討論では、上記仮説の検証のため、(1)研究開発の推進方策、(2)拠点形成・運営、(3)ボトルネック・重要課題、の3点について具体的な議論が行われた。

ワークショップでの議論を踏まえ、CRDSは、今後、国として重点的に推進すべき研究領域、具体的な研究開発課題を検討し、研究開発の推進方法を含めて戦略プロポーザルを策定し、関係府省や関連する産業界・学会等へ提言を行っていく予定である。

※本文記載のURLは2020年3月時点のものです(特記ある場合を除く)。