科学技術未来戦略ワークショップ報告書
  • 環境・エネルギー

環境や社会の変化に伴う水利用リスクの低減と管理

エグゼクティブサマリー


本報告書は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が開催した科学技術未来戦略ワークショップ「環境や社会の変化に伴う水利用リスクの低減と管理」の結果を報告するものである。

話題提供では、技術動向について以下の知見を得ることが出来た。
・世界規模の食糧供給のため地下水が用いられているが、持続可能性の危うさが示されている。仮想水の輸入を通して、日本にも影響がある。
・農業用水管理のICTによる省力化支援技術の需要が増している。農業用水の遠隔操作、自動制御の技術開発が進み、省力効果に加えて、電気代の節減や節水効果も確認されている。
・膜ろ過システムにおいて国際的な膜材料の低廉化競争が進んでいる。自動化、省力化、原水の負荷変動吸収等、産業競争力に貢献する中長期的な基礎研究の重要性が増している。
・再生水の研究開発では、定量的微生物リスク評価(QMRA)による衛生学的評価やトータルエネルギー消費量、トータルコスト比較等の社会実装のために境界領域に踏み込み、貴重な水資源を保全する取り組みが進んでいる。
・リスク学の観点から、水利用において守りたい対象は時代とともに変遷してきている。ステークホルダーとの協働・対話の効果的側面が研究と社会との相互作用が重要である。
・水アクセスの不平等において、取り残される低い側の層に目を向けることが重要である。解決策の一つとして分散型水処理に適用可能な紫外線消毒の実証試験が進んでいる。
・水中の重金属成分やアニオン成分を除去する無機イオン吸着材の材料開発、実証試験が進んでいる。低価格プロセスで製造できる手法開発等が進められている。

総合討論では、(1)研究開発を推進する上での課題として推進方法や体制、連携等について、(2)中長期的に取り組むべき研究開発課題について、議論を行った。
(1)では、「社会実装に向けたステークホルダーとの協働・対話」に関して、個別技術の研究と全体との関係、水の研究を行う価値の議論、ナラティブの共有と社会との媒介の仕組み、コミュニティの力による持続性の構築、などが議論された。「社会実装のためのファイナンシング」として、制約条件となるファイナンシング、組織のあり方、適用技術に応じたファイナンシングのモデルなどが議論された。「持続性のためのビジネスモデル」として、一過性にならないための現地での教育、プロジェクト終了後も持続するためのビジネスモデル構築、などが議論された。「中長期的な時間軸での目標設定」について、SDGsの2030年に100%社会実装という理想的な目標の踏まえ方などが議論された。
(2)では、先立つものとして上記(1)におけるステークホルダーとの協働・対話が位置づけられた。そのうえで、「水循環システム」について世界における水資源、水循環という視点で重要な地下水の持続可能性、自然環境などに本来備わる水質の自浄能力、といったキーワードの補完と、水源と利用用途との関係の重要性が強調された。「水処理」では、安全性確保のための多様な処理プロセスと材料技術、水量と水質の安定性とライフサイクルコストの議論、解決すべき課題の材料研究課題へのブレークダウンといったキーワードが議論された。「社会実装のための診断」においては、日本の人口減少・高齢化対策への諸外国の関心、モニタリングで蓄積したデータの強み、といったキーワードの補完と、社会や技術の動向を踏まえた分散型システムや融合技術の適時性、見える化したときに生じる課題が議論された。

※本文記載のURLは2020年2月時点のものです(特記ある場合を除く)。