海外調査報告書
  • 海外動向

公的研究機関の動向報告(事例調査) -運営上の工夫を中心として-

エグゼクティブサマリー

本調査は、各国の主要公的研究機関が果たしている役割を明確にし、各々がその機能を強化し競争力を維持するための近年の取り組みを事例として紹介する目的で行った。 調査の対象としたのは、米国、英国、ドイツ、フランス、中国の5つの研究機関である。複数分野の基礎を含む研究全般に取り組む大規模な研究機関を中心に、優れた研究成果を上げている研究機関をネイチャー・インデックス(影響力のある雑誌に掲載された論文数を指標とする)やノーベル受賞者の輩出数などを参考にしながら選定した。

米国エネルギー省国立研究所、英国医学研究会議傘下の分子生物学研究所、ドイツのマックスプランク協会、フランス国立科学研究センター、中国科学院はいずれも各国を代表する公的研究機関であるが、各々の国の研究をめぐる政策・環境が異なるために、機関の性格や機能は大きく異なる。

マックスプランク協会、フランス国立科学研究センター、中国科学院は、大規模な総合研究機関で、各国の研究開発を推進する中心的な存在である。一方、米国には、ドイツ、フランス、中国のように多分野にわたる研究を行う公的研究機関は存在せず、分野ごとに研究所が存在する。今回は数ある研究所の中から、原子力・エネルギー研究を中心に物理学、生物学、情報科学、材料科学等比較的幅広い研究を行うエネルギー省国立研究所を調査対象とした。また、英国では研究開発の主軸が大学にあり、他の主要国に見られるような大規模な公的研究機関は存在しないが、小規模であるが分野に特化し、優れた業績を上げている研究所が数々存在する。本調査では、その一例として医学研究会議傘下の分子生物研究所を取り上げた。

調査項目: 各研究機関につき、以下4つの調査項目を設定して調査を行った。特に、資金調達、人材育成、他機関との連携に関しては、各フェローが複数回現地ヘ足を運び、ヒアリング調査を中心とした情報収集を行った。

1.各研究機関の概要 (沿革、組織・運営体制、位置付け・役割、研究戦略等)
2.運営資金
3.研究人材の採用・育成
4.他機関との連携

報告書の構成: 本報告書では、調査結果を米国エネルギー省国立研究所、英国医学研究会議傘下の分子生物学研究所、マックスプランク協会、フランス国立科学研究センター、中国科学院の順に報告し、各機関の運営上の工夫について事例を紹介する。 後者の3つの大規模総合研究機関については、研究機関全体の概要と運営上の工夫について説明をする。エネルギー省国立研究所は、一つの大きな機関ではなく、17の独立した研究所より構成される集合体であるため、まず、エネルギー省国立研究所について全般的な説明した後で、そのうちの一つであるローレンス・バークレー研究所をとりあげ、運営上の工夫について具体例を紹介する。また英国については、医学研究会議の概要や役割を説明した後、その傘下にある分子生物学研究所の取り組みについて詳細を紹介する。

※本文記載のURLは2020年3月時点のものです(特記ある場合を除く)。