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トポロジカル量子戦略 ~量子力学の新展開がもたらすデバイスイノベーション~
エグゼクティブサマリー
本報告書は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が平成28年12月19日に開催した科学技術未来戦略ワークショップ(WS)「トポロジカル量子戦略~量子力学の新展開がもたらすデバイスイノベーション~」に関するものである。
現在、情報通信技術や人工知能技術の進展を支える電子デバイスは、微細化・高速化・低消費電力化への要請が世界的に高まり続けているが、ムーアの法則の終焉が近づいていると認識されているように、既存のデバイスや技術では性能向上の限界が顕在化しており、新しい技術的なパラダイムが希求されている。本ワークショップは、限界突破を目指すアプローチの1つとして、近年急速に発展しているトポロジカル物質群とトポロジーに付随して発現する多彩な物性に関する研究開発に着目する。トポロジーの概念に立脚した量子力学の新たな展開を加速すると共に工学応用領域のデバイスイノベーションを目指す一連の研究開発戦略「トポロジカル量子戦略」を掲げ、研究の現状の把握、今後取り組むべき研究開発課題の抽出、固体物理・素粒子物理・数学・工学が融合・連携するための仕組みなどについて第一線の研究者と議論することを目的に開催した。
ワークショップでは、まず、JST-CRDS における調査・分析結果から得られた全体像、課題、研究開発戦略検討の仮説を提示し、その後にトポロジカル物質に関する研究の現状と将来展望、数学・素粒子物理から見たトポロジカル物質の理解、さらには量子コンピューティング・スピントロニクス・フォトニクスなどへの具体的な応用展開に関する話題提供、最後に総合討論を行った。
総合討論では、主に世界をリードするための研究実施体制・産学連携の仕組み、および社会・経済的インパクトについて議論を行った。本研究分野を推進していく上で重要なことは、米国や中国のような人海戦術ではもはやわが国に勝ち目はなく、若手研究者の活用および異分野融合・連携を加速させつつ、現存のリソース(ヒト、モノ、カネ)を効率よく組み合わせた戦略的な研究実施体制を構築することが重要であること等の共通認識が得られた。また、まだ基礎研究の段階ではあるものの、実用化されたときのインパクトが大きい分野になる可能性を秘めているため、産業界を巻き込んだ研究コミュニティを形成することが重要であること等の指摘があった。
本ワークショップでの議論を踏まえてCRDS では、今後国として重点的に推進すべき研究開発領域、具体的な研究開発課題、その推進方法の検討を含めて、戦略プロポーザルとして提言を発行した(戦略プロポーザルは2017年3月末発行)。
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