俯瞰ワークショップ報告書
  • 環境・エネルギー

エネルギーネットワーク・統合システム(EMS、スマートグリッド)

エグゼクティブサマリー

 電力・ガス自由化、再生可能エネルギー導入促進、IoTによる社会インフラの高度化・スマート化などエネルギー分野でも大きな変化が起きている。安定供給、低コスト、低炭素化に向け、従来からの集中型電源と送電系統との一体運用に加え、情報通信技術の活用により太陽光発電等の分散型電源や需要家の情報を統合・活用した、高効率、高品質、高信頼度の電力供給システム、更に熱供給も含めてエネルギーネットワークシステムの構築の重要性が高まっている。またCOP21の目標実現のためにはエネルギーネットワークシステムにおいても革新的、戦略的取り組みが必要である。

 このような背景のもと、未来型のエネルギーネットワークのあり方とそれに向けた国家的見地に立つ研究開発戦略(科学技術テーマ)の方向性について、有識者との意見交換や議論を行った。

 得られた結果として、将来期待される社会像は、IoTをベースに実社会のさまざまな情報、センシングされたデータが集められ、それらをサイバー空間で共有化し、実社会にフィードバックすることで豊かで活力のある社会を目指しており、各ドメインのプラットフォームがつながることで新たな価値が創出されることにある。このような将来の社会像の中でエネルギーネットワークは、構成する一部として、重要な位置付けとなる。まずは今後普及拡大するスマートメーターを介して、電力グリッドの配電系の需要家の膨大な資源をICTでつなげ、能動的な需要家資源の活用が期待されている。さらには、分散資源につながった情報の活用により、付加価値を創造するプラットフォームに衣替えすることが重要と考えられおり、そのための研究開発や制度設計が必要との認識が得られた。このように、長期的に考えられる将来のエネルギーネットワークの絵姿としては、超分散、双方向化、個人化、広域化が進展し、インターネットのようにエンドユーザの個々のアクセスに制約がなく、高速制御が可能、かつ分散化が進展したレジリエンスの高いエネルギーネットワークのイメージが浮かび上がった。また、研究課題や進め方について、サイバー空間における情報処理技術、物理層である電力潮流制御技術、配電網における電力の電子市場取引の可能性など、超分散化された需要側資源の利活用に対しての技術および仕組みづくり、場の形成の重要性などの指摘があった。