調査報告書
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  • 科学技術イノベーション政策

科学技術イノベーション政策の科学における政策オプションの作成 ~ ICT分野の政策オプション作成プロセス ~

エグゼクティブサマリー

21世紀はIoTを含む情報通信技術(ICT)が社会経済の構造を一変させるような技術革新の流れの中にあるといえる。この調査研究の目的は、複数の科学技術イノベーション政策の社会経済的な影響を分析、評価し、政策の効果を試すことができるような手法を開発することにある。

ここで提案する手法は、まずエビデンスに基づく技術シナリオを作り、それと未来ビジョンとのギャップ分析によって政策課題を導く。そして生産性の向上係数(P-index)によって導出された3つの政策パターンを示し、それぞれの政策パターンごとに経済的影響を比較する。

経済的影響のシミュレーションは「多部門経済一般均衡的相互依存モデル」に基づく。このモデルで用いるデータは日本国内の産業連関表を拡張して短期・長期ブロック、労働市場、賃金、海外および最終需要などのブロックなどを加味して、有形・無形資産を反映したものである。今回のシミュレーション結果では、IoTの進展によって総生産量とGDPが増加する一方、技術的な失業と労働需要の移動が見られた。また需要側でのプロセス変化に対する全生産性(TFP)の向上だけでなく、プラットフォーム・ビジネスを拡大するような情報提供サービス部門の生産性向上や、新しい市場の創造や国際的な生産ネットワークの構造の変化促進までを示唆している。今後、人と機械の新しい関係を構築するためには、情報技術を横断的に利用できる、そのようなビジネス・プラットフォームが不可欠であろう。

この調査報告で示した分析的な枠組みは、IoTに限らず、多くの領域においてエビデンスに基づく量的な政策評価アプローチを提供しようとするものである。