- 情報・システム
未来研究トーク 実施報告書(2012~2014年度)
エグゼクティブサマリー
未来研究トークとは、社会の永続的な発展に向け、将来の研究分野を発見・創造するために、産学官の多様なセクタから若手メンバーが集い、継続的に議論を行うコミュニティである。多様なメンバーが互いに信頼関係を築き、互いに問題俯瞰力と問題設定能力を鍛錬しあい、そこで得られた能力、着想、人脈を自らの文脈で活かすという目標を掲げ、2012 年度から 2014 年度までの 3 年間を通じて定期的かつ継続的な会合をこれまで 10 回開催した。未来研究トークの成果は、形成されたコミュニティ、議論が深まるワークショップのデザインである。
形成されたコミュニティは、2015 年 1 月現在、アカデミアから 18 名、企業から 24 名、JST(日本科学未来館を含む)から 12 名というバランスの人員構成となっている。数理科学やコンピュータ科学の専門家を中心として、互選により順次メンバーを拡大し、物性・回路、センサ・ロボット、社会・政策、知財・経営、メディア・デザインの専門家も参加し、メンバーの専門分野の多様性を広げられた。コミュニティは、俯瞰力と問題設定力を生み出す基盤である。メンバー間の自律的なコラボレーションや、持ち帰った経験を各メンバーが自分の出身母体で活用する例も見られる。
議論が深まるワークショップのデザインは、話題提供の後にグループに分かれて議論をして議論の成果をシェアするという枠組みを確立し、「企画」「ワークショップ設計」「ワークショップ実施」「レビュー」というPDCAサイクルをまわすワークショップデザインのフローで運用してきた。また、GROW モデルを活用したワークショップの設計や、ワークショップ運営時における早期に議論を深めるためのルール、専門知識を活かすためのルール、際立った意見も埋もれないためのルール等を作ってきた。
未来研究トークの活動を通じて、「コミュニティ作り」に関して次のような重要な示唆が得られた。この活動の最大の受益者は参加者である。信頼関係で結ばれ、自らが受益者として参加する人たちの集まりこそが “ コミュニティ ”であり、それは自立しうる。このコミュニティを健全に発展させるためには、参加者にとっての利益を増大させる努力を続け、受益者以外からの支援はむしろ受けないほうがよい。
以上の振り返りに基づき、今後は CRDS の活動の枠を超えて、ここで生まれたコミュニティを自立させ、更に発展させることとした。
CRDS は、プロポーザルを作成する際などに、専門家をワークショップに招聘して議論する形式が主流であり、研究開発戦略の立案に活用するためのコミュニティ作りに関する明確なプラクティスをもっているわけではない。この未来研究トークの発展は、CRDS の「場の形成」の一類型になりうるものと考える。