俯瞰ワークショップ報告書
  • バイオ・ライフ・ヘルスケア

ライフサイエンス・臨床医学分野 ~主にグリーンバイオ分野を中心に~

エグゼクティブサマリー

科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)では、国の科学技術イノベーション政策に関する提言書の作成にあたり、対象とする研究分野の国内外の研究動向や研究開発の注目動向などの網羅的な調査(俯瞰調査)を行っている。本報告書は、その俯瞰調査に際し、平成 26 年度に JST-CRDS が実施した、「グリーンバイオ」分野に関するワークショップの結果をまとめたものである。今回、グリーンバイオ分野として植物科学研究のみならず、微生物機能や生態系・多様性保全を含む形でワークショップを開催した。
本ワークショップの目的はグリーンバイオ分野を俯瞰することで、当該分野の研究開発の方向性の妥当性の検証と、優先的に実施すべき具体的方策の抽出に資する情報収集を行うことが目的である。政府が打ち出した「攻めの農林水産業」や環太平洋パートナーシップ(TPP)協定のように、食料安全保障に対する関心が高まっている。そうした中、科学技術による研究開発がどのように社会ニーズに貢献できるかを示すことは科学による貢献とともに、科学者の義務でもあり得る。本書ではアンケートおよび俯瞰活動を通じて明らかとなった科学技術の現状と社会的背景に関する説明を第1章にて、有識者検討会合の結果およびアンケート調査の概要を第2章から第5章にて説明する。これらの調査から浮かび上がった重要研究開発領域の要点整理を行った。農業・食料生産関連、微生物機能関連、生態系・多様性保全関連、それぞれにおける重要領域を第6章にて提案する。2013 年の CRDS が発刊した俯瞰ワークショップ報告書「グリーン・テクノロジー分野」でも指摘があった通り、この分野の抱える課題が複雑化しており、単独の府省等で研究開発を実施するレベルではなくなってきている。そうした中、内閣府主導の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)では「次世代農林水産業創造技術」が取り上げられ、農業分野に対する連携がはじまったことは非常に意義がある。また、上記報告書でも取り上げられている通り、具体的な出口の設計なしに研究開発投資が行われてきたという経緯も今後解決すべき問題点である。これは、わが国としてあるべき姿が明確でないことに起因するものと思われる。政府として「攻めの農林水産業」を成長戦略と位置づけていることから、この分野における国が関わる意義は明確になりつつある。そのため、わが国があるべき姿を明確に設定し、科学技術による貢献と制度的な改革も含めて、次世代基盤技術構築のための産官学協働体制を確立する必要性があると考える。
以上を踏まえ、JST-CRDS ではこのような観点を今後も一層重視し、異分野、異業種を融合させ、具体的な研究テーマの検討、期待される研究成果、国際競争力等の分析を加えた上で更なる検討を行い、より実効性の高い研究開発戦略、研究体制、プラットフォームの提案を行い、包括的な戦略を提案していく予定である。