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科学技術国際シンポジウム報告書 イノベーションを牽引するシステム科学技術 ~日米中の動向に学ぶ~

エグゼクティブサマリー

 科学技術振興機構( JST)研究開発戦略センター(CRDS)のシステム科学ユニットは日本の科学技術政策が重点分野推進から課題解決に方向転換するに伴って2009年に発足した。発足当時「システム科学」はJSTのほとんどの関係者にとって耳慣れない分野名であり、 実際それまでこの分野に対する競争的資金の投入はほとんど皆無の状態であり、その意味でわ れわれのユニットの活動はゼロから出発しなければならなかった。実際われわれがシステム科 学技術の重要性をJST内外で説いても手応えを感じる場合は少なく、時には「なぜシステム科 学のようなユニットがCRDSで必要かわからない」という感想を面と向かってぶつけてくる JST の担当者も少なくなかった。その様な状態の中で我々は2010年に「システム構築による重要課 題の解決」と題した戦略提言を発刊してその存在感を世に問い、システム科学技術推進委員会 を組織してシステム科学技術の現代的な展開の道を探った。これらの活動の詳細については「プ ログレスレポート:システム構築型イノベーションの重要性とその実現に向けて」(CRDS-FY2013 -XR-03)を参照されたい。
 最近ようやくシステム化の重要性は国内外に浸透し、その結果日本の科学技術はシステム科 学技術への投資が不十分であり、日本の産業技術はシステム化のフラグシップが弱いことが認識され始めてきた。われわれの主張はようやく聞く耳が現れる環境に恵まれ始めたといえる。
 一方、これまでの海外調査から、米国や中国ではシステム思考が社会に浸透しており、システム科学技術の教育やシステム思考の活用が行き届いている現状が認識され、また、国内の産業界、学術界の方々との意見交換により国内における問題意識も表出されてきた。この情報を 政策立案にかかわる有識者を含め、広く一般の方々と共有するとともに、海外より米国NSFの工学局長、中国科学院システム科学研究所の前所長を招いて、日本のシステム化の現状と課題 について議論し、理解を深める場として科学技術国際シンポジウム「イノベーションを牽引するシステム科学技術 -日米中の動向に学ぶ-」を平成26年2 月に開催した。その内容をここに報告する。