調査報告書
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平成26年度調査報告書 米国のEngineering Research Centers(ERC)— 融合型研究センターのFederal Flagship Scheme —

エグゼクティブサマリー

 システム科学ユニットは日本におけるシステム科学技術の振興を目指して5年前に科学技術振興機構(JST)の研究開発戦略センター(CRDS)に設置された。本ユニットは、科学技術の現代の発展段階において、科学技術によるイノベーションは究極的にはシステム構築として実現される、との認識のもとに活動してきた。この認識に基づいて、ユニットは 1)要素技術をシステムに統合する力を日本の科学技術が備え、2)それを通して科学技術の成果を社会に効率よく還元し、3)それによって現代社会が直面する困難な問題を解決することが出来るための研究助成の構想を模索してきた。特に、システム科学ユニットが目標としている上記三つの課題を解決するシステムズアプローチを体現したプログラムをどのように設計したらよいかについて、さまざまな視点から検討してきた。
 本年2月に米国科学財団(National Science Foundation:NSF)工学局長のPramodKhargonekar博士が来日しJSTを来訪した。その折、彼を通じて、NSFがすでに30年近くにわたって継続的に支援してきた工学研究センター(Engineering Research Centers:ERC)の情報を得て、NSFがシステム科学ユニットが提案しているシステム構築を主軸に据えたシステムズアプローチをその研究戦略の基軸に据えていることを知った。その後の調査で、ERCプログラムは極めて優れた実績を上げ、NSFのさまざまの事業の中でもトップクラスの評価を得ていることが分かった。われわれはこの情報に大変興味を持ち、ERCの成功の主因はシステムズアプローチにあるのではないか、との期待を持った。期待が事実であるかどうかを確かめるために実際に全米各地のERCを現地に訪問し、その実情を調査することにした。