調査報告書
  • バイオ・ライフ・ヘルスケア

バイオセキュリティに関する研究機関、資金配分機関、政府機関、国際機関等の対応の現状調査報告

エグゼクティブサマリー

 本調査報告では、わが国の研究開発におけるバイオセキュリティ上のリスクとその対応に関する現状を報告する。この調査は、我が国の研究者が寄与してきたウイルス研究の成果公表をめぐる一連の国際的議論を受けて、科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)ライフサイエンス・臨床医学ユニットが作成したものである。
 本報告書では、今後JSTが研究支援および資金配分機関として実践すべきバイオセキュリティ上のリスクへの対応やそのマネジメント体制を整備するにあたっての必要事項を検討するとともに、今後の我が国のバイオセキュリティ政策の推進に向けてさらなる調査検討が必要な項目を整理し、平成24年度JST-CRDS戦略スコープ検討チーム「ライフサイエンスのリスクマネジメント(仮称)」等にこれを引き継ぐことを前提としている。
 第4期科学技術基本計画においては、感染症研究の推進が震災からの復興ならびにライフイノベーション双方において重要視されている。一方、従来からバイオセキュリティ上のリスクをはらんでいた感染症、ウイルス研究などに、近年発展が著しい合成生物学的アプローチが加味されることによって、「生命現象あるいはそれを支える生物学的機構自体の人為的操作」によるライフサイエンス研究成果の両用性や誤用の懸念が現実のものになりつつある。したがって、わが国の今後のライフサイエンス研究の推進においては、これまで以上にバイオセキュリティ、バイオセーフティに配慮したリスクマネジメント体制を早急に確立することが必須である。しかし、JST-CRDSでは合成生物学を巡るデュアルユース問題については認識していたものの、2011年11月以前に、潜在的危険性をもつ生合成産物の施設内外での取り扱いに関する安全性の担保や成果の発信手続きについての提案やその専門家からの情報収集、各ステークホルダーとの議論の場の提供について重点をおいてきたとは言えない。今回、ライフサイエンス研究の当事者を主体的に巻き込み、適切なルール作りを含む我が国のライフサイエンス研究におけるリスクマネジメントの在り方について提言を行い、実践していくための根拠資料として、本報告書を作成、発表する。このような取り組みは、トップダウン型の研究開発を支援する独立行政法人としての社会的責任から見ても重要である。
 なお、本報告書は、ライフサイエンスひいては科学技術全般におけるバイオセキュリティ問題への対応に関する国内外の現状調査の中間報告としてまとめた。