調査報告書
  • 科学技術イノベーション政策

課題解決型イノベーションの推進体制の構築に向けて−中間報告書−

エグゼクティブサマリー

 本年3月11日に発生した東日本大震災への対応をはじめ、激動する世界の中で我が国が多くの課題を抱える中、間もなく策定される第4期科学技術基本計画においては、課題解決型イノベーションの推進が前面に掲げられる見込みである。同計画に基づいて、政府は今後大震災からの復興・再生や、「グリーンイノベーション」、「ライフイノベーション」等、我が国が取り組むべき重要課題を明確に設定し、そうした重要課題への対応に向け、国として総力を挙げて科学技術イノベーションの実現に取り組むことになる。課題解決型イノベーションの推進にあたっては、産学官等の多様で幅広い関係者が主体的に参画し重要課題に関する戦略の検討から推進までを行う「科学技術イノベーション戦略協議会」(仮称、以下「戦略協議会」という。)の創設が構想されている。戦略協議会は、総合科学技術会議の調整の下、重要課題ごとに設置され、当該重要課題の将来ビジョンを明確にするとともに、その実現に向けた戦略策定に資するための戦略を幅広い観点から検討することをミッションとしている。だが、戦略協議会の具体的なあり方に関しては、今後検討を要する点も多い。例えば、戦略協議会が取り上げる課題、課題設定の方法、戦略協議会の組織的位置づけ、参加メンバーの選定等に関する方針については現時点で確定しておらず、今後、産業界・学界等の意見を踏まえつつ、十分な検討を行っていく必要があると考えられる。
 本報告書では、そうした検討に資するため、戦略協議会に類似する内外の既存の取組みを整理するとともに、産業界・学界等の関係者に対するインタビュー等を通して戦略協議会のあり方について得られた意見をまとめる。インタビュー等を実施した過程においては、いくつかの論点について、産業界・学界等の関係者の意向がある程度明確に示された。例えば、戦略協議会は総合科学技術会議直属の組織とするのでなく外部組織が運営すべきとする意見、設置期間は5-10年程度が適当であるとする意見、参加メンバーの数は10名以下とすべきであるとする意見、戦略協議会に強い権限が与えられるべきであるとする意見等が目立った。一方で、戦略協議会で取り上げるべき課題や、参加メンバーの選定方法、戦略協議会の全体調整等を担う「戦略マネージャー」に求められる資質といった論点については、非常に多様な意見がだされた。
 本報告書では、課題解決型イノベーションの推進に関連して、戦略協議会のあり方以外の事項に関して行ったインタビューの結果も示す。その結果からは、今後我が国が課題解決型イノベーションを推進していく際、研究者ネットワークの形成を促進するファンディングのあり方や、課題解決型イノベーションを担う研究者のキャリアパスの確保等についても、今後検討していく必要性が示唆された。課題解決型イノベーションの推進が、学問のフロンティアを切り拓く原動力ともなることを考慮すれば、これらの点は極めて重要な政策上の事項として位置づけられる。