海外調査報告書
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科学技術・イノベーション政策動向報告~オーストラリア~

エグゼクティブサマリー

 研究開発戦略センター海外動向ユニットでは、我が国の科学技術・研究開発・イノベーション戦略を検討する上で重要と思われる、諸外国の動向について調査・分析し、その結果を研究開発戦略センター内外に「海外科学技術・イノベーション動向報告」として配信している。調査内容は、最新の科学技術・イノベーション政策動向・戦略・予算、研究開発助成機関のプログラム・予算、研究機関や大学の研究プログラム・研究動向などを主とした、科学技術・イノベーションにかかわる動向全般となっている。
 本報告書ではオーストラリアの科学技術・イノベーション政策について取りまとめた。
 オーストラリアは、小麦・牛肉などの農畜産物や、鉱物・エネルギーなどの天然資源に恵まれ、広大な大地を利用した観光業、そして金融や不動産業などの第2次、第3次産業も活発である。近年の世界的金融危機からも早い段階で景気後退から脱出し、オーストラリア経済は先進国の中でも際立って回復を続けている。2009-10年度の実質GDP成長率は2.3%で、19年連続のプラス成長となっている他、失業率も2009年後半以降低下傾向にあり、米国、欧州、日本など他先進諸国に比べ雇用情勢も改善の段階にあるといえる。オーストラリアは現在、経済の成長に伴って消費と投資が増大し、それがさらに経済を成長させるという好循環の中にある。イノベーションに関わる国全体の研究開発費も年々増加傾向にあり、政府は同国のイノベーション政策において、その地理的特異性や豊富な天然資源、質の高い高等教育を活かし、産業振興に限られた取り組みではなく教育、産業、国民生活など経済社会全般において科学技術の重要性が認識されることを目指している。新しいテクノロジーの出現に基づいた新たな産業およびサービスの創出、さらに既存の分野の競争力の向上に焦点を当てるなど、長期的なビジョンのもと取り組んでいる。