ワークショップ報告書
  • 科学技術イノベーション政策

「エビデンスベースの科学技術・イノベーション政策の立案」:エビデンスをどう「つくり」「つたえ」「つかう」か?

エグゼクティブサマリー

エビデンスベースの科学技術・イノベーション政策が実現するためには、政策立案にかかわるステークホルダーの有機的な連携と協働を行うシステム的取組が必要である。つまり、政策決定者が意思決定のためにエビデンスを「つかう」ためには、科学コミュニティを中心として科学的方法により「つくら」れたエビデンスが、政策決定者の手に適切に「つたえ」られるシステムが必要である。
欧米においては、科学技術・イノベーションのメカニズムを科学的に解明する「科学技術・イノベーション政策の科学(SciSIP: Science of Science and Innovation Policy)」の研究を促進し、そこから得られるエビデンスを政策決定において利用する具体的な取組がすすんでいる。例えば米国では、「科学政策の科学」省庁連携タスクグループを2006年に発足させて省庁における「科学政策」決定における科学的ツールの開発と利用を促進させようとしている。米国科学財団(NSF)では2005年にSciSIPプログラムを発足させ、人文社会科学を中心とする学際的学術研究に助成を始めている。日本においても、第4 期科学技術基本計画策定に向け、社会・国民との関わりを重視して政策の説明責任を果たすこと、さらに効果的・効率的な政策立案のため、エビデンスベースの政策立案の重要性が強く認識され始め、エビデンスを「つかう」ことへのニーズが政策担当者から高まっている。しかしながら、政策プロセスでどのようなエビデンスが必要なのか体系的な整理とそのための議論が進んでいるとはいえない。また、政策プロセスで「つかわ」れることを意図したエビデンスが、科学コミュニティから積極的に「つくら」れ、蓄積されているともいえない。エビデンスを、政策プロセスへ橋渡しをする「つたえ」る機能も十分であるとはいえない。科学技術振興機構研究開発戦略センター(JST-CRDS)では、平成22年3月に、国際WS「エビデンスベースの科学技術・イノベーション政策の立案: エビデンスをどう「つくり」「つたえ」「つかう」か?」を開催した。