調査報告書
- バイオ・ライフ・ヘルスケア
2011年3月
CRDS-FY2010-RR-06
細胞動態の統合的計測~細胞の形態・機能変化と生体分子ダイナミクスの統合的計測技術~
エグゼクティブサマリー
本調査は、生命科学分野の計測、中でも生命の最小単位である細胞の形態や機能の変化(細胞動態)を統合的に理解するための「計測技術」について、国として進めるべき研究開発のあり方を明確化するために行ったものである。
医療・高齢化問題、環境問題、食糧問題やエネルギー問題など人類が直面する課題が浮き彫りにされる中、「生命科学」は21世紀最大のサイエンスと言われ、世界中で多くの研究開発投資がなされている。日本でも「ヒトiPS細胞の樹立」など著しい進展が見られるが、これを支える要素の一つとして、“計測技術”の貢献が大きいことは広く知られている。現在もその進歩は続いており、例えば次世代シーケンサはヒトゲノム配列(60億塩基)を、4分間で解読可能と言われている。計測ターゲットが明確となり、課題が整理されれば、技術進歩のスピードは驚異的である。しかし、小さな分子が集まるとどうして生命の自立的な作動を得るのか等、階層性を上げた統合的な生命動態の理解は進んでいない。現状はデータを細かく分析すればするほど、ますます真理はデータの洪水に埋もれてしまう状況である。
本報告書では、これまでの細胞計測の歴史や動向等を元に、今後の生命科学のチャレンジを支える「細胞動態の統合的計測」技術について、国として進めるべき研究開発のあり方を調査、分析したものである。この結果を、(1)細胞計測の動向、(2)細胞動態の統合的計測の研究開発課題、(3)研究開発の推進のあり方、の3点でまとめている。