海外調査報告書
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科学技術・イノベーション政策動向報告~南アフリカ~

エグゼクティブサマリー

 研究開発戦略センター海外動向ユニットでは、我が国の科学技術・研究開発・イノベーション戦略を検討する上で重要と思われる、諸外国の動向について調査・分析し、その結果を研究開発センター内外に「海外科学技術・イノベーション動向報告」として配信している。調査内容は、最新の科学技術・イノベーション政策動向・戦略・予算、研究開発助成機関のプログラム・予算、研究機関や大学の研究プログラム・研究動向などを主とした、科学技術・イノベーション全般の動向となっている。
 本報告書は、南アフリカ共和国の科学技術・イノベーション政策について調査を実施し、取りまとめた報告書である。
 南アフリカはアフリカ大陸の最南端に位置し、豊富な資源のおかげでアフリカ53カ国の全GDPの約25%を占める経済大国となっている。さらに、自動車部品などの製造業、そして金融や不動産業などの第2次、第3次産業も活発である。2004〜2008年にかけては経済成長が5%を超えており、現在最も世界から注目されている経済成長国となっている。また、これらの経済力と比較的安定した政治情勢から他国のリーダーシップをとり、アフリカ諸国との外交関係の中心的役割を担っている。
 一方で、アパルトヘイト時代の影響が未だに大きく残っている。失業率は24.5%(2009年)、HIV/AIDS感染者は世界で最も多い推定550万人を超えている。さらに教育格差が大きいために、国内の経済格差ひいては犯罪率の高さにまで影響が及んでいる。これらすべての問題によって白人技術者が流出し熟練技術工・技術系中間管理職が不足、さらに黒人層に対する教育の遅れにより黒人技術者が不足するなど人的資源が大きな問題となっている。
 また、将来への展望を考慮した「10年イノベーション計画(TYIP: the Ten-Year Innovation Plan)」を2008年に発表、科学技術の向上、人材育成などを取り入れ、10年後の発展した南アフリカを目指している。
 2009年発足のズマ政権では、科学技術は人々の生活を劇的に変化させるものという認識に立ち、地域開発と貧困撲滅に科学技術を活用していく方針を取っている。