戦略プロポーザル
  • 環境・エネルギー

温室効果ガス排出削減に向けた研究開発の推進について −産学官のネットワーク形成による科学技術イノベーションの実現−

エグゼクティブサマリー

温室効果ガスの排出削減は、我が国全体の緊急かつ重要な課題であり、特に、先端技術の果たす役割が大きいことから、産学官の科学コミュニティは総力をあげてこれに取組む必要がある。
本戦略提言では、CO2等の温室効果ガス排出削減に向けた研究開発の進め方を提言し、研究開発のシナリオを提示する。

温室効果ガス排出削減に向けた研究開発は、
その成果がスピーディに実用化され、社会に普及する必要があること。
既存技術の延長・改良では限界があり、新たなブレークスルーをもたらすような基礎研究からの貢献が必須であること。
政治、経済、外交等のさまざまな側面があり、多くの分野の研究者の参画が必須であること。
人文、社会科学の研究者等との連携が不可欠であること。
等に配慮する必要がある。

科学技術振興機構研究開発戦略センター(CRDS)でのこれまでの知見を踏まえ、温室効果ガス排出削減に向けた研究開発の推進方策として、特に以下の5項目が重要と考え、提案する。

 推進方策1 大学-研究開発独法-企業をつなぐネットワークの形成
 推進方策2 基礎科学研究者の貢献
 推進方策3 社会と科学技術の相互作用の重視
 推進方策4 人文、社会科学との連携
 推進方策5 国際的な展開

またCRDSでは、環境技術に関する俯瞰ワークショップ(平成20年7月)を開催し専門家の参加を得て長期的なものも含めた技術の俯瞰や、主として大学等において実施される目的基礎研究に関して、今後の重要研究開発領域、課題等について提言を行ってきた。CRDSのこれまでの蓄積を基に、注目される研究開発動向等の調査・分析から抽出された6つの技術について、基礎研究、技術の構成に向けた研究、製品化研究等の課題を示す。

太陽電池
太陽光による水素エネルギー生産
非食料系バイオマス
水生・海洋バイオマス
電気自動車・燃料電池自動車
グリーン・オブ・IT

我が国全体として、温室効果ガスの排出の大幅削減を実行していくためには、以下の方針に沿った研究開発を推進していく必要がある。
2020年を念頭においた中期的スパンでは、確実性の高い技術を中心に、産学官が連携して、研究開発をこれまで以上に加速し、科学技術イノベーションを実現していく。
2050年を念頭においた長期的スパンでは、基礎科学研究者の参画も得て、ブレークスルーをもたらすような研究を強化し、その成果を発展させる。
この2つは、個別に行われるものではなく、推進方策1で述べたネットワークをベースに相互に連携して推進されることが重要である。
本提案が一石となり、広範、多様な議論・行動が開始され、現実の排出削減につながっていくことを期待する。