- バイオ・ライフ・ヘルスケア
健康研究司令塔のあるべき姿
エグゼクティブサマリー
ライフサイエンス分野は科学技術基本計画で重点推進4分野の1つに位置づけられ、その成果を医薬品、医療機器などのイノベーションにつなげるための集中投資が行われてきた。そして、基礎研究、橋渡し研究、臨床研究の推進のほか、臨床研究基盤の整備や治験環境の充実など、健康研究推進への取り組みも行なわれてきた。これは、急速に少子高齢化が進行するわが国において健康研究が極めて重要な課題となっているためである。
ライフサイエンス研究の成果を国民の健康推進につなげるためには、基礎研究からヒトを対象とする臨床研究、さらに疫学研究までを視野に入れた戦略と、その効果的な運用が不可欠である。しかしながら、現状では関連府省の縦割り施策による研究開発の不連続性が、特に研究費の効率的な活用の面で問題点として指摘されている。
これらの問題を打破するため、関係府省において個別に推進している健康に関連した橋渡し研究及び臨床研究等を、一つの戦略に基づき統一的かつ重点的に進めることを目的として、内閣府に「健康研究推進会議」が設置された。独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター(JST-CRDS)では、当会議を有効に機能させるために、先んじて臨床研究司令塔を設立した英国やシンガポールなどの調査を行い、わが国の健康研究が抱える現状や問題点、臨床研究司令塔が果たすべき役割を検討した。
本提言では、わが国で発足した健康研究推進会議をより効果的な組織として確立すべく、健康研究司令塔のあり方を提案する。具体的には、先端医療技術の開発を推進するため、わが国の社会状況、人口動態ならびに疾病構造の現状や将来を見据えた上での健康研究戦略の立案を使命とし、シンクタンク機能、ファンディング統括機能を持つ推進部会の設置、医薬品・医療機器経済性評価の取り組みや臨床研究・疫学研究のインフラ整備と人材育成を進めることで、健康研究司令塔としての役割を担うことを期待する。