その他報告書
- バイオ・ライフ・ヘルスケア
2006年7月
CRDS-FY2006-XR-01
「臨床研究に関する委員会」中間とりまとめ報告
エグゼクティブサマリー
わが国では、国民皆保険制度が整備され、国民一人当たりの医療費を低い水準に保ちつつ高水準の医療を幅広く提供する、世界にも類を見ない医療提供制度が構築されてきた。
近年、生活習慣の欧米化や人口構成の高齢化により、世界に先駆けて癌、血管病、認知症の増加といった大きな困難に直面することが予想されており、予防・診断・治療および介護の全てにわたり持続可能な医療・社会保障システムの構築が急務とされている。
イノベーション創出のためにはイノベーションの種から実へ育て上げる臨床研究開発戦略の強化およびイノベーションを結実させる政策の強化が必要である。それを実現するために、統合的かつ迅速な研究、すなわち統合化迅速研究(Integrative Celerity Research;ICR)が必要である。
ICRの推進方法には、臨床研究の科学性・倫理性・信頼性を担保しつつスピード・質・コストを向上するための国際レベルの社会システム構造改革が必要で、そのために評価方法の改善、事業化の推進などの基盤を整備しなければならない。個々の医学的課題を解決するための具体的な研究プロジェクトの実践から構成される、臨床研究開発戦略である。
ICR推進体制を整備促進する意義は、臨床研究において「科学のための科学」から、「社会のための科学」へのパラダイム・シフトを実現することである。産官学のそれぞれに役割があるが、最終的な受益者は国民であり、健康の維持発展、予防・診断・治療の向上、ニーズにあったサービスの提供が期待される。
ICRによって持続的発展が可能なイノベーション創出基盤を実現するためには、国境を越えた産学官連携を強化すると共に、いわゆる国家として、成果の社会への還元を阻害する制度的要因を除去する必要がある。