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G-TeC報告書 脳神経関連疾患の予防、治療に向けた基礎的研究の海外動向

エグゼクティブサマリー

 精神・神経疾患の理解と克服に向けた研究開発を進めるために、近年急速に理解が進みつつある分子・細胞レベルでの神経細胞機能解析技術やヒトゲノム研究の成果を活用することが望まれている。更に、ヒトの脳の機能や構造を解析できる脳イメージング技術の進歩がもうひとつの有力なツールである。これらの要素技術に関する研究開発とともに、その技術を総合的に活用し基礎的な知見を臨床研究から社会的価値創出につなげるために、どのような取り組みがなされているかを調査し、また、我が国の優位性や不利な点を明らかにするために、本G-TeCを実施した。
 今回の各研究開発拠点の訪問の中で全般的に重要であると思われた点は、欧米における臨床情報の活用や先端機器開発を進めるための分野融合的な共同研究に対する意識の高さ、それを推進するマネージメント能力の高さである。特にアカデミアにおいては、それぞれの研究者の自由発想的研究による成果が、具体的に応用へと展開されている。その際、全てを自前で実施しようとはせず、それぞれの専門性を生かすためにどのような共同研究体制を構築すべきかを強く意識している。具体性を持ち十分検討されたゴールの設定が必要であり、またそれを達成するためのスピードを重視するという研究者のマインドにより、実質的な共同研究が支えられているという印象を受けた。特にスピード感に関しては、米国と比較して我が国ではまだ十分意識されていない。この明確なゴール設定と達成までの時間に対する意識から、役割分担を明確にした共同研究体制が組まれるわけであるが、一方で、こうした役割分担が研究者個々の専門性に基づく自由発想的な研究を担保しているようにも見受けられた。