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調査報告書 G-TeC 「生物分子システム」領域の研究の動向と展望について
エグゼクティブサマリー
生命体はそれが単細胞生物であれ多細胞生物であれ、細胞を基本的な生命単位として形づくられている。その細胞の構造は脂質の二重層を主要な要素とする膜構造系とタンパク質を主成分とする骨格構造系とによって成り立っている。そして、これらの細胞構造体はそれぞれが分子のシステムとして相互に共役しつつ機能し、生命の基本単位としての細胞構造の成立と機能の発現を基礎づけている。このような細胞の膜構造系と骨格構造系の形成及び機能発現に関する研究の分野にあっては、日本の研究者の貢献度は非常に高く、久しく世界一級の研究水準を維持してきた。一方、遺伝子発現の産物であるタンパク質は、それ自身、単体(monomer)、多量体(polymer)あるいは他のタンパク分子種と会合し複合体として働き、細胞構造を生み出して細胞の機能発現を担うことから、タンパク質によって演出される営みを生物の分子システムとしてとらえ探求する新しい潮流が生まれた。そこで、我が国の研究者の活性度と国際的な研究動向を重視し、2005年3月に、科学技術の将来を展望するための戦略ワークショップのひとつとして『生物分子システム』をとりあげ、当該分野の研究推進の重要性、重要研究課題、研究の推進方法等を鋭意検討した。
その結果、細胞内のタンパク質およびすべての複合体の動態の俯瞰的観察、すなわち、細胞全体の状態を把握することが最も重要であり、タンパク質等の分子から細胞全体を理解するには、細胞膜をはじめとする「膜構造系」と「骨格構造系」に注力してそれらの構造形成と機能発現について新たな研究展開が緊急な課題であるとの結論を得た。この結論を踏まえ、当該分野及び関連分野の研究の現状を国際的視野から、改めて正しく把握するために海外調査を実施した。本報告書はその調査結果の大要をとりまとめたものである。