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欧州調査報告書 G-TeC Report 「生物・医学研究におけるシステム的研究アプローチ」

エグゼクティブサマリー

 生物・医学研究におけるシステム的研究アプローチは生命をシステムの観点から統合的に理解することを目指すものである。細胞全体のシステム構造の解明には時間がかかるものの、ゲノムサイエンスの進展により細胞内で機能する分子とその機能的カスケードの研究が進展した。それらの成果を踏まえて、例えば、代謝などの細胞機能の発現のしくみを論理的に解析し、理解することが可能となりつつある。また、それらのシステムを構成する因子の動態を時空間の変化にそって計測するなどにより、その動作原理を解明することも可能となりつつある。生物・医学研究において、このような方法論をとる研究を推進することにより、生命そのものの統合的な理解が進むとともに、疾病の原因解明や薬剤の開発、動植物の品種改良の最適化などライフサイエンスエンジニアリングの進展にも寄与するものと期待される。このような研究分野は、「ポストゲノム研究からのシステム的研究の流れとコンピュータを利用したシステム研究からなる萌芽的な研究」及び「定量的な研究であって、数学、物理、計測、計算科学など様々な知識を駆使する将来の生物・医学のリーディング・テクノロジーとして期待される融合研究」の両方の性格を持つ。本研究分野は、研究開発戦略センターが平成15年3月及び8月に実施した「科学技術の未来を展望する戦略ワークショップ」での議論において、ポストゲノム研究における重要な研究分野として抽出されたもので、生命の統合的な理解の基盤となる新しい研究分野である。
 このような現状を踏まえて、研究開発戦略センターでは生物・医学研究におけるシステム的研究アプローチの観点からの戦略立案を行うため、平成16年度に欧州を中心にG-TeC(Global Technology Comparisons)調査を行った。本報告書は本分野の戦略立案にあたり、欧州での調査結果を中間的に取りまとめたものである。