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超低消費電力システム

エグゼクティブサマリー

 研究開発戦略センター(CRDS)では、今後の重点研究テーマの一つとして、情報技術を基礎としたシステム/ネットワークの不連続的な「低消費エネルギー化」あるいは「低消費電力化」を検討している。その理由は、今後展開する高度ネットワーク社会を見通すとき、地球環境保全とエネルギー消費節減の視点からも、提供するサービスの高品質化の視点からも、さらには産業技術の国際競争力の視点からも、この分野が極めて重要と判断されるためである。
 こうした認識から、5-10年先を見据えたとき「超低消費電力システム」を実現するための基礎的研究の対象としてどのようなテーマが重要であるかを明らかにし、これらの重点研究テーマを推進するための挑戦課題・推進方法などを時間軸を加えて明確化することを目的として、異なるシステム階層分野から専門家が参加して議論を行うワークショップを2004年10月に開催した。
ワークショップ参加者は、大きく3つのシステム階層に分けた分野、すなわち、ソフトウェア分野、アーキテクチャ/VLSI設計分野、デバイス/回路分野、からの専門家、及び関連省庁の政策担当者とJST関係者である。
 本ワークショップの結論、提言は以下の王に要約される。
1.高度ネットワーク社会の情報インフラ(ネットワーク、システム、機器)が、その機能、環境、ユーザに応じて、要求されるサービス品質(Performance & Dependability)の提供に必要かつ十分なだけのエネルギーあるいは電力消費量を自律的、適応的に維持するような情報システム管理技術の確立を目指すべきである。
2.そのため、情報システムのあらゆる階層(応用/サービス、アルゴリズム/SW・HW分割、プロトコル、OS、コンパイラ、Microアーキテクチャ、クロック分配管理、Vdd&周波数制御、回路、テクノロジ/デバイス)で総合的なエネルギー/電力消費管理を行い、10年後に最終的なサービスレベルで現行レベルの1000倍のエネルギー/電力削減(同じ情報処理を行うのに必要なエネルギーが1/1000)の達成を目標とした研究開発を行うべきである。
3.技術水準の検証と投資効果のデモンストレーションのために、期間4-5年程度でシステム階層を横断する「超低消費電力システム」試行プロジェクトを産官学連携体制で実施することを提案する。
4.このプロジェクト目標の達成には、情報システムのあらゆる階層分野において現在の技術の単純な延長線上にはない技術革新が必要である。また応用分野においても、バッテリー駆動型コンポーネント技術、ネットワーク技術、超高性能分散コンピューティング技術など、成果の異なる種々の技術革新が必要になる。さらにそれらを統合する新しいシステムの管理技術が要求される。このことから、このプロジェクト実施を通じて、目標達成の直接的効果や関連周辺技術への波及効果のみならず、我が国の産業技術の国際競争力強化に大きな役割を果たすことになると考えられる。