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次期EU研究イノベーション枠組みプログラム(FP10, 2028-2034) 欧州委員会提案

エグゼクティブサマリー

本報告書は、欧州連合(EU)にて2028年から新たに始まる「研究・イノベーション枠組みプログラム(Framework Program:FP10 “Horizon Europe”)」の欧州委員会提案をまとめたものである。

報告書の章立てと要点は以下に示す通りである。
第1章:FP10構成案
第2章:FP10欧州委員会案策定に向けた動き
第3章:注目ポイントの整理
最後に、いくつかの用語や公表文書を説明するスライドを追加した。

FPとは、EU加盟国を対象とした複数年にわたる研究助成プログラムである。共同研究開発プロジェクトを通じて、EU における科学技術分野の能力および産業競争力の向上を目指して実施されている。また、近年では欧州研究圏(ERA)の構築・強化、グローバリゼーションへの対応、気候変動などの社会的課題の解決なども目的とされている。最初のFPであるFP1は1984年に38億ユーロの予算で始まり、その後年々予算と取り組み内容を拡大し、第9期のFP9では、2021〜2027年の7年間で955億ユーロの当初予算が措置された。

2025年7月16日に公表されたFP10案では4つの戦略分野(柱)が提案されている。第一の柱で卓越した科学、第二の柱で競争力と社会、第三の柱でイノベーションを支援する。第四の柱では欧州研究圏(ERA)の強化を目指す。

2024年に二期目の政権運営に乗り出したvon der Leyen欧州委員長は、効果的で適正な規制、EU法を適用する際の管理負担の軽減、法律の簡素化、中小企業支援等を通じてEUの競争力を高めること目指すとしており、この基本方針が研究・イノベーションを助成するFP10にも明確に反映されている。

Horizon Europeの制度設計に見られるEUの特徴(強み)として、以下の5点を挙げることができる。これらのすべてを我が国の政策にそのまま当てはめることは現実的ではないが、学ぶこともできる部分も多いと思われる。

  1. 数年をかけての綿密な全体制度設計
  2. 個別プログラム単位での設計・評価・改善
  3. 全体・個別プログラムにおける予算の柔軟な運用
  4. 政策の一貫性
  5. 他の政策・プログラムとの連携、総局(日本の省庁に相当)間の連携

本報告書にはFP10の政策立案に影響を与えたとされる専門家グループの提言ならびに現行FP9中間評価、前期プログラムFP8の最終評価の概要を合わせて記載し、FP10への理解を深めることで、日本の科学技術・イノベーション政策を検討する上で有益な視座を提供できれば幸甚である。

※本報告書の参考文献としてインターネット上の情報が掲載されている場合、当該情報は2025年8月に入手しているものです。