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持続可能なものづくりに向けて ~材料開発と評価の循環を探る~
エグゼクティブサマリー
本報告書は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が令和7年4月16日から5月12日にかけて開催した俯瞰セミナーシリーズ「持続可能なものづくりに向けて~材料開発と評価の循環を探る~」に関するものである。
持続可能な社会への移行に向け、ものづくりにも大きな転換が求められている。例えば、環境負荷の低い原料や製造プロセス、希少資源の使用を抑えた材料の組成や構造、新たなリサイクルの方法、再生材の利用など、わが国でも様々な技術開発がされている。 同時に、材料やプロセスを持続可能性に関わる多様な側面から評価する手法や指標の開発も重要である。物質が環境中に出てからの影響評価や、ライフサイクルを通した環境負荷量のデータベース化などが進められている。
材料やプロセスに対する社会的な価値付けが変化しつつある中、わが国が世界の先導的な立ち位置を維持するには、「材料・プロセスの開発」と「持続可能性の評価」が相互に連携した研究開発の推進が一つの有効な方向性である。そこで本俯瞰セミナーシリーズでは、それぞれの現状や今後の課題について第一線の有識者8名から解説いただくとともに、連携の可能性や有効な方策を含めた議論を行った。
持続可能を志向した材料・プロセスの開発においては、機能を保持しながらも、製造時や使用時にかかる経済的およびエネルギー的コストを下げ、また分解時や再利用時に求められる新たな性質や機能を付与していくことが必要である。さらに、資源のリサイクル技術の開発は、資源の有効利用と同時に環境負荷の低減においても有効である。加えて、資源の確保や再利用を進める上では、組成の変動・制約や不純物にもロバストな新たな材料開発の学理や手段の確立が求められる。
材料・プロセスの持続可能性に関わる評価について、製品レベルには、カーボンフットプリントのみならず、人の健康や生態系への影響や、資源消費(マテリアルフットプリント)などを、ライフサイクルを通して評価する取り組みが拡がっている。今後は、これらを統合化する方向と同時に、影響が出るまでの様々な過程を評価する新たな方法の開発や、廃棄物や社会的影響にまで評価の対象を広げていく方向がある。さらに、新興技術や将来技術に対して、予測的な評価ができる方法の開発も重要である。
上記の進展のためには、物質が実環境に出てからの状態変化や流れ(フロー)と、それが生態系や人の健康にどのように影響し得るかの解明を進めて行くことが併せて必要である。さらに、製造や利用場面に関する多様なシナリオを相互の対話を通じて構築し、予見的評価を伴わせながら研究開発の方向性を共に探索していくことが有用である。
「材料・プロセスの開発」と「持続可能性の評価」の連携によって、より効率的で信頼性の高い持続可能性の評価が可能になるとともに、予見的な評価に基づいて新規な材料・プロセスの設計指針を導くことで研究開発の加速が期待できる。
本セミナーシリーズが、関連する多くの研究者や省庁・機関関係者が交わり連携する、一つの契機となることを期待する。
※本報告書の参考文献としてインターネット上の情報が掲載されている場合、当該情報はURLに併記された日付または本報告書の発行日の1ヶ月前に入手しているものです。