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次世代ブロックチェーン技術 ~個人や社会のデータ共有・価値交換を安全で高信頼に実現する~

エグゼクティブサマリー

インターネットは社会や人々の生き方を大きく変えた。世界中の計算機や機器をつなげることで、誰もが簡単に情報を発信・検索・活用できる「情報伝達のプラットフォーム」となった。一方で、ブロックチェーンはデータの真正性を保証して価値の共有と交換が簡単にできる基盤を提供する。それにより、誰もがそこにある情報を信用できる、いわば「信頼のプラットフォーム」となる可能性があると言われる。本提言書では、このような可能性のあるブロックチェーン技術を個人および社会の重要データの共有と価値の交換を安全かつ高信頼に実現するための基盤技術と位置づけ、その確立に向け実施すべき研究開発課題を特定し、研究開発の推進方法を提言する。

(1) 研究開発による基礎基盤の確立
自由な発想に基づく基礎研究を推進すると同時に、研究者が集うインキュベーションプラットフォームを構築することで、多種多様な研究成果の創出と新たなコミュニティーの育成を行う。これにより、現状エンジニアリングが先行し、基礎・基盤的な研究開発が追い付いておらず、研究者コミュニティーが分散している状況を打開する。

(2) わが国の国家的社会基盤への適用
わが国の国家的社会基盤を確立することで、わが国が目指す社会像Society 5.0 の具現化の一環として、安全で透明性の高い効率的な次世代の電子政府を世界に先駆けて実現することができる。そのためには、まず、次世代の電子政府のグランドデザイン、特にデータ戦略が重要である。その下で、ブロックチェーンによるデータ交換基盤を構築し、国家的社会基盤に適用する。

(3) ブロックチェーンの活用と影響を議論する場の設置
ブロックチェーン技術の潜在的な革新性を考慮すると、ブロックチェーンの真価を生かす社会システムのあり方に関する議論と、それを実現するための人文・社会科学を含めた広範な分野における研究開発、実証実験が必要である。インターネットの黎明期を世界中で育てたような、長期的な視野に立ったグローバルな活動が望まれる。幸いまだGAFA1のような覇者はいない。わが国が国を挙げて取り組む意義も勝機もそこにある。

※本文記載のURLは2020年3月時点のものです(特記ある場合を除く)。