意思決定を支援する最適化手法の革新 -社会価値創造への貢献-

エグゼクティブサマリー

本プロポーザルは、数理最適化手法では厳密解を得ることが難しい問題に対して、機械学習と組み合わせることで実用上有用な近似解を得る最適化手法の研究開発を提案する。

社会課題の解決においては、政策立案、資源配分、リスク管理など、数多くの重要な判断が求められる。これらの判断を体系的かつ定量的に支援する手段として最適化手法が役に立つ。同様に、企業など組織や事業の経営においても多岐にわたる判断が求められるため、それらの定量的支援にも最適化手法が役に立つ。

数理最適化手法は、1947年に発表された線形計画法に始まり、計算機の発展と共に研究開発が進んだが、次のような問題がある。

  • 問題が大規模で高次元(膨大な数の変数を含む)な場合、計算量が爆発的に増大して計算ができない
  • データが欠損したり誤差やバイアスを含んだりして、うまく計算ができない
  • 最適化対象のモデルの構築が困難な場合や、対象が動的に変化する場合がある
  • 最適化することの本質的な目的が明確でなく、目的関数を定義できない場合がある
  • 得られた結果が実行不可能だったり、関係者間で実行の合意が取れなかったりする場合がある

このため、現実の問題への数理最適化手法の適用がなかなか進まないとの現状がある。

こうした状況を受け、本プロポーザルでは数理最適化手法と機械学習を融合したハイブリッド最適化手法について、以下の三つの研究開発課題の推進を提案する。

  1. 大規模高次元最適化問題に対処する最適化手法の研究開発
  2. 不確実なデータを含む場合の最適化手法の研究開発
  3. 計算時間を短縮し、最適解を繰り返し求める最適化手法の研究開発

最適化手法の社会適用範囲を広げるためには、研究開発だけでは不十分であり、いかにしてその成果を社会価値の実現に結び付けるかの推進方策が重要である。本プロポーザルでは以下の三つの推進方策を提案する。

方策1:機械学習と数理最適化手法の連携
機械学習と数理最適化手法の各研究分野が連携してハイブリッド最適化の研究開発を進める。

方策2:ハイブリッド最適化手法を用いた問題解決プロセス
ハイブリッド最適化手法の実問題への適用からバックキャストして研究開発を行う場を作り、機械学習と数理最適化の融合を進める。そこで得られた知見をソフトウェアツール(ソルバー)として広く利用できるようにする。

方策3:ハイブリッド最適化手法の普及
ハイブリッド最適化手法を広く実問題に適用し、意思決定を支援できるようにしていくために、ハイブリッド最適化手法の意味や価値を分かりやすく伝える実践を進める。

これらの研究開発と推進方策を通じて、従来は経験や勘に頼っていた多くの意思決定を、本提案のハイブリッド最適化手法で支援する意思決定に置き換えることや、複雑すぎて適切に対処できなかった問題に対して、適切な判断の支援が可能になる。その結果、これまでの社会・経済、公共政策や産業のさまざまな部分に存在する無理や無駄、ムラを削減したり解消したりすることにつながり、効率化を通して社会に貢献することができる。また、資源利用の効率化などによって社会の持続可能性の向上などが期待できる。さらに、より多様で不確実性の高い状況を勘案することなども可能になり、より公平な社会の構築に資することも期待できる。

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