海外調査報告書
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科学技術・イノベーション動向報告~韓国~

エグゼクティブサマリー

 研究開発戦略センター海外動向ユニットでは、我が国の科学技術・研究開発・イノベーション戦略を検討する上で重要と思われる、諸外国の動向について調査・分析し、その結果を研究開発センター内外に「海外科学技術・イノベーション動向報告」として配信している。調査内容は、最新の科学技術・イノベーション政策動向・戦略・予算、研究開発助成機関のプログラム・予算、研究機関や大学の研究プログラム・研究動向などを主とした、科学技術・イノベーション全般の動向となっている。
 本報告書は、韓国の科学技術・イノベーション政策について調査を実施し、取りまとめた報告書である。
 韓国では科学技術・イノベーションを通じた高付加価値産業を創出することが国の重要課題となっており、この方針は政権を超えて引き継がれている。しかし一方で、政府・組織の運営方針については大統領によって大きく変わる。2008年2月に発足した李明博政権は、科学技術政策の分野においては従来のシーズ志向の政策から新たにニーズ指向の政策への転換を模索し、「緑色成長」の旗印のもと、環境を主軸に置いた国家戦略を掲げた。また、R&D投資を対GDP比5%とし、政府R&Dの5割を基礎・基盤研究に配分するなど基礎研究を強化する方針を打ち出した。一方で、イノベーションの成果については広く諸外国の市場を求め、大統領自ら原子力発電のトップ営業を行い、また米国・EU等とのFTA締結も進めている。キャッチアップ国から先進国へと転換する中、韓国政府が取り組む政策・方針は大統領制という違いがあるものの我が国としても学ぶべき点も多い。また、アジアの先進国同士として競争しながらもどのような協調戦略を取るのか、科学技術・イノベーションにかかわる制度等の面から日韓両国が協力すべき点は多いと考える。