戦略プロポーザル
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ものづくりイノベーションのためのハイスループット先端計測

エグゼクティブサマリー

ナノテクノロジー、バイオ、半導体などほとんどの先端産業分野において、計測技術は国際競争力の原点である。米国は半導体産業だけでも年間90 億ドルを計測装置に使っていると推定されている。わが国では、ものづくりの最前線で活躍した熟練工の大量退職、人口減少による労働力減少という状況もあり、製造業の強みとなっている新製品開発力、高い生産性の低下が危惧されている。特に問題となるのは、研究開発、製品の品質および歩留まり向上の基盤となる計測技術が、国際競争の中で充分に優位性を持つに至っていないばかりか、かつては優位性を誇った分析機器においても世界市場での地盤低下が目立ってきていることにある。
「ものづくりイノベーションのためのハイスループット先端計測」とは、研究開発および製造における世界的な競争力強化に不可欠な計測技術の高度・高速化のシステムコンセプトの確立とそれを実現する要素技術の開発・統合を目指すものである。
最近のエレクトロニクス、IT、ロボティックスの進歩を取り込んだ発想のもと、サイズ、操作性、高速性、信頼性に優れたハイスループット計測システムを設計・開発し、研究開発および製造現場への普及、デファクトスタンダード化を目指す必要がある。具体的な研究開発課題として、次を提案する。

1)ハイスループットテクノロジーのコンセプト構築とブレークスルー技術の探索
・計測空間および時間因子の変革(短縮、広帯域化)によって、新物質・材料・デバイス開発を中心とするものづくりを従来の100 倍以上高速化することを目標にした具体的なシステムコンセプト、技術構成と重要融合分野の明確化
・革新性、実現性を具備したハイスループット計測要素技術の提示
2)計測装置の超小型化
・MEMS、NEMS 等、超小型化をもたらす先端マシニング技術の活用
・超小型化をもたらす新たな物理・化学原理に基づくシステムの開発
・超小型化がもたらす、ものづくり現場や携帯計測への応用開発
3)計測の超高速化
・高感度化・高輝度化等、測定の超高速化をもたらすブレークスルー技術の開発
・計測試料の高速調整・走査測定技術の開発
・マルチプローブ、マルチビーム等による同時多点(マルチチャンネル)測定技術の開発
4)ハイブリッド計測
・試料とセンサアレイを集積化したシンセシス・アナリシス直結計測システムの開発
5)複合(構造、物性)計測
・ナノからマクロサイズにいたる階層構造の同時計測システムの開発
・各種物性の複合計測技術の開発
・作業現場(または模擬環境下)での品質管理、安全性・信頼性の検査技術
6)計測情報のインフォマティックス
・ハイスループット計測による膨大なデータの高度処理、可視化、データベース、データマイニングからなる情報処理技術の開発と国際標準化