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2014年2月14日

 石井先生、小檜山研究員(櫻井チーム、医薬基盤研)、櫻井先生(北九州市立大)らの論文“Nonagonistic Dectin-1 ligand transforms CpG into a multitask nanoparticlulate TLR9 ligand”が米国科学アカデミー紀要(PNAS)の2014.2.10米国時間のOn line版に掲載されました。また、その成果がプレス発表された結果、日経、読売、毎日新聞などの他、NHK福岡で採り上げられました(いずれも、2/11付)。
 今回の成果は、免疫を活性化することが知られていた核酸の一種CpG ODN と多糖の一種であるβーグルカンとを複合化することにより、生体内で凝集することなく免疫細胞に効率よく到達して作用する薬剤の開発に成功したものです。マウスでは、インフルエンザワクチンのアジュバントとして、日本で許可されている無毒ワクチンと組み合わせることで生ワクチンに匹敵する効果を示すことがわかっていましたが、今回、哺乳類であるカニクイザルやヒト細胞でも抗体価を飛躍的に増大させることが確認できるとともに、その作用機序も明らかにできました。この複合体はインフルエンザワクチンのアジュバントとしてだけでなく、がんワクチンやほかの感染症のワクチンへの応用も可能であり、今後、新規ワクチンまたは治療法の開発が大いに期待されます。
 なお、この成果は、多糖と核酸との複合体を見出した櫻井先生とCpG ODNを見出した石井先生との運命的出会いから共同研究に発展した結果生み出されたものです。
2014年2月10日

 栗原和枝先生(栗原チーム、東北大)らの論文“Effect of Confinement on Electric Field Induced Orientation of Nematic Liquid Crystal” がSoft Matter誌に掲載され(2014.2.7 on line 版)、東北大学からプレス発表されました。 
 今回の成果は、栗原研究室で開発された表面力装置を用いる共振ずり測定法を駆使して得られたものです。雲母に挟んだ液晶(6CB:4-シアノ4’-ヘキシルビフェニル)に与えたせん断の応答で粘性を評価したもので、通常は電場を与えると液晶が水平配向から垂直配向に変化して粘性を増すが、雲母間距離を13nm以下にまで近づけると、粘度が上昇して電場をかけてもかけなくても変わらなくなる(制御できない)ことが観測されました。基礎科学的にも、液晶ディスプレーの微細化の限界を知る上でも非常に重要な知見となるものです。
(東北大ホームページへのリンク)
2014年1月20日

 石谷治先生、稲垣伸二先生(稲垣チーム、東工大、豊田中研、研究期間平成18-23)らのCREST成果による論文”Efficient light harvesting via sequential two-step energy accumulation using a Ru-Re5 multinuclear complex incorporated into periodic mesoporous organosilica”がChemical Sciences掲載され(2014, 5, 639-648)、さらにChemistry worldにその記事が紹介されました。東工大からプレス発表され、日刊工業(2014.1.13)、化工日報(2014.1.13)、日経産業(2014.1.16)などに紹介されています。
 今回の成果は、光捕集アンテナ機能を有するメソポーラス有機シリカの細孔内に、Ru-Re5多核錯体を導入し光照射したところ、メソポーラス有機シリカの骨格有機基に吸収された光エネルギーが細孔内のRe5錯体へ移動し、更に最終的にRu錯体に集約される2段階の光捕集機能を示しました。これは、植物の光合成と同様に、2段階のエネルギー移動で光を捕集できたことを示します。今後、CO2還元触媒や水から水素を取り出す触媒と組み合わせていくことで、人工光合成系の開発にもつながることが期待されます。
(東工大ホームページへのリンク)
2013年12月9日

 本領域の研究総括である新海征治先生(崇城大学教授)が、Daiwa-Adrian賞を受賞され、11月27日、 ロンドンのThe Royal Society(王立協会)における表彰式で受賞講演をされました。
この賞は、1992年に創設され、基礎科学、応用科学の分野で、優れた日英共同研究プロジェクトに対して3年毎に授与されます。研究プロジェクトの科学分野における重要性、これまでの研究経緯はもとより、日英科学交流への長きにわたる貢献を顕彰するものです。
今回の受賞は、新海先生が日本側のリーダーとして、University of BathのTony D. James教授らと共同で進められたプロジェクト、Chemonostics: Using chemical receptors in the development of simple diagnostic devices for age related diseasesの成果が評価されたものです。
2013年11月7日

 平川先生(平川チーム(研究期間H19.10-H24.3)、東京大学)、岩佐先生(川崎チーム(研究期間H18.10-H23.3)、同)らの成果”Large modulation of zero-dimensional electronic states in quantum dots by electric-double-layer gating”がNature Communicationsに掲載(10月24日10時 英国時間)、東京大学からプレス発表され、日経新聞(11/5付け)などに取り上げられました。今回の成果は、平川先生らが長年研究してきた自己形成量子ドットを用いた単電子トランジスタ(SET)に関するもので、従来のSETに比べて100倍の効率(エネルギー変化)で作動することに成功したものです。ゲート電極にイオン液体を用いて電気二重層を形成させたところが成果の核心とのことです。この方法では、電子のスピン状態の制御も劇的に向上していることから、超低消費電力トランジスタやその量子情報処理への応用に新たな進展をもたらすことが期待されます。
2013年11月5日

一ノ瀬先生(一ノ瀬チーム、NIMS)らの成果 “Flash Freezing Route to Mesoporous Polymer Nanofibre Networks” がNature Communicationsに掲載され(10月22日10時、英国時間)物質・材料研究機構からプレス発表され,ました。
 今回発表された成果は、ポリスチレンやポリカーボネートなどの高分子溶液を急冷し、溶媒を深冷下でナノ結晶化させることで相分離構造を形成さた後、溶媒を除去することで直径10nmの細孔を有する高分子多孔体の合成に成功したものです。この多孔体は水中に溶解したオイルを効率的に吸着するだけでなく、活性炭にくらべて高温での脱離性能にも優れるため、繰り返し使用が可能で、石油随伴水の浄化などの環境保全プロセスを温和な条件で可能とすることが期待されます。さらには炭酸ガスの吸着性能にも優れることが確かめられており、今後、様々な用途への拡がりが期待されます。現在、物質・材料研究機構は、ベンチトップ型水処理システムの設計を進めており、ラボスケールでの実証実験が実施される予定です。
2013年5月31日

栗原和枝先生(東北大学、栗原チーム)が「IUPAC Distinguished Women in Chemistry or Chemical Engineering」に選ばれました。本表彰は化学および化学工学分野で貢献した世界の女性化学者に贈られるもので今回が2回目、日本人としては2人目の受賞です。栗原先生の受賞理由は表面力測定に関する卓越した業績と学術におけるリーダーシップと貢献で、CRESTでの研究もその中心を成しています。表彰は本年8月、イスタンブールで開催されるIUPAC総会で行われる予定です。
2013年4月1日

 藤田先生(藤田チーム、東京大学)らの論文“X-ray analysis on the nanogram to microgram scale using porous complexes”のNature誌への掲載が決まりその成果が東京大学からプレス発表されました。
今回の成果は、金属イオンと有機配位子から成り分子認識力を有する細孔性錯体、結晶スポンジを利用したものです。この結晶スポンジを、微少化合物の溶液に浸すと、細孔内に化合物が浸透し、さらに内面の分子認識能によって配列するため、サンプルの結晶化をせずにX線結晶構造解析が可能になるというものです。これまでの実績では、試料の量は5μgあれば十分で、最少80ngの化合物の構造解析に成功しています。液状物質のX線構造解析や光学活性化合物の絶対配置の同定も可能であるなど、構造化学の観点からも極めて汎用性に富んだ分析手法の開発であり、今後、医薬、食品、農薬、香料など有機化合物を扱う多くの分野に革新的な分析手法をもたらすことが期待されます。(東京大学工学部の発表記事)
2013年2月12日

 小江先生(小江チーム、九州大学)らの論文“A Functional [NiFe]Hydrogenase Mimic that Catalyzes Electron and Hydride Transfer from H2”のScienceへの掲載が決まりその成果がプレス発表され、朝日、毎日、読売、日経新聞(いずれも2月8日付、西日本版)などにとりあげられました。
 今回の成果は、自然界に存在する水素活性化酵素「ニッケル-鉄ヒドロゲナーゼ」をモデル(模範)として、同様の働きをする新しいニッケル-鉄触媒を開発したものです。小江グループでは、同機能、すなわち常温・常圧で水素から電子を取り出す機能を有する触媒として、すでに、ニッケル−ルテニウム系の触媒を開発していましたが、今回の触媒は高価なルテニウムの代わりに安価な鉄を用いるもので、燃料電池における白金触媒代替としての開発をより現実的にするものと期待されます。
2013年1月30日

 櫻井先生(櫻井チーム、北九州市立大学)らの論文“Hydrophobic Molecules Infiltrating into the PEG Domain of the Core/Shell Interface of a Polymeric Micelle: Evidence Obtained with Anomalous Small-Angle X-ray Scattering”のJournal of the American Chemical Society への掲載が決まりその成果がプレス発表され、化学工業日報、西日本新聞(1/30付け)、日経バイオテクONLINE(1/29付け)などにとりあげられました。
 今回の成果は、薬物運搬用ナノ粒子(DDS)の有力候補の一つである高分子ミセルの内部構造を、SPring−8の安定したX線計測システムと、小角X線異常散乱とを組み合わせて精密に解析し、粒子内部の薬剤の保持状態を可視化することに世界で初めて成功したものです。その結果、ミセル内部に閉じ込められていると思われていた薬剤がミセルの内核と外殻の界面層にもはみ出していることが分かりました。
 高分子ミセルが薬剤を取り込む時にこのような層を形成しているならば、ミセルと細胞が接した時に、この層から細胞に薬剤が入っていく効率的な伝送につながる可能性も考えられます。 本研究成果により得られた基礎的な知見は、遺伝子治療や抗がん剤の副作用の低減に向けたより高性能なDDSの開発につながると期待されます。



2012年10月3日

 藤田先生(藤田チーム、東京大学)らの論文“Protein encapsulation within synthetic molecular hosts”のNature Commnications への掲載が決まりその成果がプレス発表され、日経産業新聞、日刊工業新聞(いずれも10/3付け)などにとりあげられました。
 今回の成果は、金属イオンと配位子による自己組織化で生成する中空の金属錯体(人工カプセル)に、巨大分子であるたんぱく質(ユビキチン)を閉じ込めることに成功したものです。用いた配位子がある角度を持つことで、その角度に応じた大きさの中空錯体が形成されます。この構造に一切の分布を持たないため、たんぱく質を閉じ込めた構造にも一切の分布がない(一義構造)ところが、従来のホスト-ゲスト化学で得られているものとは大きく異なる点です。また、ユビキチンの閉じ込めを確実にするために、配位子の一つに糖鎖をぶらさげ、それを介してユビキチンを結合しておくという工夫もなされています。
 この一義構造のため、詳細な構造決定が可能となり、単結晶構造解析により、用いた原料に対して100%の効率で「たんぱく質を丸ごと閉じ込めた人工カプセル」生み出されたことが分かりました。
 今後、使用する配位子やその化学修飾、自己組織化条件などの検討で閉じ込めるたんぱく質の種類の拡大、さらには、カプセル側から修飾基を通じてたんぱく質の生体機能や酵素活性を人工的に精密制御することによる付加的な機能発現も将来的に可能になると期待できます。  



2012年8月20日

 柴田先生、平川先生(平川チーム、東京大学)らの論文“Photon-Assisted Tunneling through Self-Assembled InAs Quantum Dots in the Terahertz frequency Range”が、Physical Review Letters 109, 077401 (2012).のオンライン版に掲載されると同時に、注目論文(Editors' suggestions)に選ばれ、アメリカ物理学会のホームページに概要が紹介されました。
今回の成果は、今回の成果は、単一の半導体量子ドット構造における1個1個の電荷やスピン状態を、未開拓の電磁波として知られるテラヘルツ電磁波によって制御することを可能とするものです。
量子ドットを用いた単一電子トランジスタ素子では、量子ドットへの高周波電界の印加による単一電荷やスピン状態の制御が可能であり、量子情報処理デバイスへの応用が期待されています。本研究では、まず極微細InAs量子ドットを用いることで、電子準位間隔を10 meVオーダーまで大きくしました。その上で、素子にテラヘルツ帯のアンテナと集光レンズを実装することで、テラヘルツ電磁波と量子ドット電子系との相互作用を、従来にないほど強くすることに成功しました。その結果、テラヘルツ電磁波による量子ドット中の電子1個1個の励起と、それに伴うトンネル伝導(テラヘルツ光支援トンネル伝導)の観測に成功しました。本研究は、テラヘルツ電磁波による単一スピン偏極電子の生成や、電荷・スピン状態のコヒーレント制御など、テラヘルツ電磁波の量子情報処理への応用に道を拓くものです。





2012年8月3日

 International Conference on Gold Science, Technology and its Applications(金の科学、技術とその応用に関する国際会議)は、金に焦点を当て、その科学・技術・応用に関する様々な分野の研究者と技術者が世界各国から集まり、最新の研究開発成果および実用技術を紹介し、情報交換と人的交流を行うことを目的とするものです。 今回は、春田先生を組織委員長としてアジアではじめて開催されるもので、触媒、化学、ナノテク・材料分野から、内外の24名の招待講演の他、300件の一般講演を予定しています。
  9月8日(土)にはJST CREST Symposium が開催され、CREST研究の成果が報告されます。このSessionのみ参加は無料です。参加登録はシンポジウムのホームページからお願いします。



2012年8月1日

 北川宏先生(京都大学)、坂田修身先生、藤原明比古先生(高輝度光科学研究センター)らの論文“Step-by-Step Fabrication of a Highly Oriented Crystalline Three-Dimensional Pillared-Layer-Type Metal?Organic Framework Thin Film Confirmed by Synchrotron X-ray Diffraction”が Journal of the American Chemical Society誌(6月13日号)に掲載されました。また、その成果が京都大学高輝度光科学センター等からプレス発表され、日刊工業新聞(7月26日版)に掲載されました。
 今回合成に成功した薄膜は、鉄イオンで架橋されたテトラシアノ白金錯体の2次元単分子層を、ピラジンを柱としてlayer-by-layer法により30層積み上げた剛直な構造を持つもので、面内方向、面外方向ともにほぼ完全な結晶を形成した多孔性配位高分子ナノ薄膜であることが大型放射光施設SPring-8のX線回折により確認されました。また、種々のベンゼンの蒸気圧下にXRD測定が行なわれた結果、蒸気圧に応じて2次元単分子層間隔が伸び縮みしていることが確認されました。これは、面間でベンゼンの吸脱着が起こっている直接的な証拠となるもので、同時に、ゲスト分子の出入りに対しても構造が壊れることなく維持されることを示したものです。
 この成果は、今後、異なる機能を持つMOFを精密に集積することで、例えばオールMOFによる燃料電池など新たな機能を有する素子を作成する可能性に繋がるものと期待されます。



2012年5月29日

 阪大産研・imec 国際シンポジウム 2012では、半導体ナノ構造、有機ナノ構造、プリンティッドエレクトロニクス、ナノカーボン、イメージング技術、DNA/バイオ技術、スピンナノテクノロジーなど、More than Moore、 Beyond CMOS領域における最新のデバイス、物理、システム、構造評価などを対象に、これらの材料系、バイオ系、情報系を研究するimecと阪大の第一線の研究者が一同に会し、その特徴や特性、有用性などについて深い議論を行います。
参加は無料です。 ご興味のある方は産官学を問わず是非ともご参加下さい。(プログラム)(シンポジウム会場へのアクセス)



2012年5月7日

 君塚信夫先生(君塚チーム、九州大学)が、平成23年度の高分子学会賞を受賞されることになりました。授章式ならびに受賞講演は第61回高分子学会年次大会(横浜)で5月30、31日に行われる予定です。
 今回の君塚先生の受賞理由は、「ナノ界面の自己組織化制御に基づく機能性高分子システムの創成」の業績に対するものです。これは、一次元金属錯体を主鎖とする分子集積型高分子や分子適応性を有するアダプティブな自己組織化システムの開発、さらには自己組織化による金属ナノ結晶の構造制御と散逸ナノ構造の発見(09.5.25、09.9.14付けトピックスご参照)など、本研究領域における研究課題の成果が高く評価されたものです。



2012年4月26日

 木下豊彦先生(尾嶋チーム、JASRI)らの論文“Three Dimensional Spin Orientation in Antiferromagnetic Domain Walls of NiO studied by X-ray Magnetic Linear Dichroism Photoemission Electron Microscopy”がPhysical Review B に掲載(2012.3.29オンライン版)、その成果がJASRI、JSTなどからプレス発表され、日経(Net)4月2日版、科学新聞(4月20日版)、日刊工業新聞(4月25日版)などに採り上げられました。
 今回の成果は、SPring-8 の高輝度放射光を用いた光電子顕微鏡により、代表的な反強磁性体である酸化ニッケルの磁壁を直接観察し、これまで難しいとされていた幅や内部のスピンの方向など磁壁の構造を世界で始めて明らかにしたものです。
 これは、スピン同士に働く相互作用など反強磁性体の微小領域の磁性に関する理解を大きく進展させるもので、基礎的な物性物理の分野でも大きな成果です。また、酸化ニッケルは磁気記録用の反強磁性材料としては現在用いられていませんが、今回得られた成果は磁気ナノデバイスをデザインするにあたって非常に重要なものといえます。例えば携帯電話に使われている小型のインダクタ(コイルの代わりに使われるもの)で、磁化の向きに応じて電波の周波数応答を変えるという特性をうまく利用すると、これまでになく小型で高性能のインダクタの開発が期待できます。



2012年3月12日
藤田先生(藤田チーム、東京大学)らの論文“An M18L24 stellated cuboctahedron through post-stellation of an M12L24 core”のNature Chemistry への掲載が決まり、その成果が東京大学からプレス発表され、日刊工業新聞(3/12付け)、日経産業新聞(3/15付け)にとりあげられました。
 星形正多面体は凹表面を許容することで新たに定義される一連の正多面体で、これまで分子構造として構築された例はありませんでした。藤田先生らの方法は、まず、金属イオン(M)と湾曲した有機配位子(L)からなる錯体分子の自己組織化によって立方八面体の分子(M12L24組成)を合成します。次にこれの6 つの頂点に収まる金属イオンを追加すると、さらに自己組織化でM18L24 組成の星形化した立方八面体が得られたとのことです。
 頂点部の金属イオンは可逆的に取り外して元の立方八面体に戻すことができます。この時、元の立方八面体に存在する大きな正方形の窓を可逆的に開け閉めできることがX線構造解析により確認され、将来DDSとしての応用の可能性も見えてきました。”有限ナノ界面の化学”の展開へ向けた強力な武器がまた一つ追加されました。



2012年3月6日
International Conference on Gold Science, Technology and its Applications(金の科学、技術とその応用に関する国際会議)は、金に焦点を当て、その科学・技術・応用に関する様々な分野の研究者と技術者が世界各国から集まり、最新の研究開発成果および実用技術を紹介し、情報交換と人的交流を行うことを目的とするものです。 今回は、春田先生を組織委員長としてアジアではじめて開催されるもので、触媒、化学、ナノテク・材料分野から、内外の24名の招待講演の他、300件の一般講演を予定しています。 一般講演の中にはCRESTセッションも開催され、春田先生はじめCREST研究者を含む8件の講演があります。
 ご興味のある方は産官学を問わず是非ともご参加下さい。(シンポジウムHPへのリンク



2012年2月14日

 藤田誠先生(藤田チーム、東京大学)が、トムソン・ロイターの 第3回リサーチフロントアワードを受賞され、2月21日(火)トムソン・ロイター赤坂オフィスにて授賞式が行われました。
 受賞理由は、トムソン・ロイターの選定するリサーチフロント(先端研究領域)の一つである「自己組織化によるナノメートルスケールの構造・空間・機能の創出」において、論文の被引用数などに基づく分析から、卓越した研究活動により、国内外のリーダー的役割を果たしていることが認められたものです。
 本領域における藤田チームの課題(自己組織化有限ナノ界面の化学)は、藤田先生の一連の研究の中でまさに現在の中心を成すものです。 (参照:東京大学記者発表一覧



2012年2月6日

 北川 宏先生(北川チーム、京都大学)が、2011年度の井上学術賞を受賞、2月3日に KKR HOTEL TOKYO で授賞式が行われました。
 井上学術賞は自然科学の基礎的研究で特に顕著な業績を挙げた50歳未満の研究者に対し贈呈されるもので、今回の北川先生の受賞理由は、「多彩な電子・水素相の創出と固体プロトニクスへの展開」の業績に対するものです。これは、多孔性金属錯体におけるプロトニクスなど、本研究領域の研究課題の成果について主に評価されたものです。また、人工擬パラジウムの発見など、「元素戦略を基軸とする物質・材料の革新的機能の創出」研究領域の成果についても評価されました。



2012年1月27日

 一ノ瀬泉先生(一ノ瀬チーム、物質・材料研究機構)らの論文“Ultrafast Viscous Permeation of Organic Solvents Through Diamond-Like Carbon Nanosheets”が Science (1月27日発行)に掲載、その成果がプレス発表され、毎日新聞、日経産業新聞(1/27付)、日経バイオテクONLINE(1/30付)、科学新聞(2/10付)などにとりあげられました。
 今回の成果は、約35ナノメートルという薄さでも分離時の圧力に耐える優れた力学的強度を有するカーボン膜(DLC膜)ろ過フィルターを作製することに成功したものです。カーボン膜の内部には、直径約1ナノメートルの流路が無数に形成されており、有機溶媒はこの流路を超高速で透過することができます。オイルの1成分であるヘキサンの透過速度は、230L/h・m2・barを超えており、不純物のモデル物質として用いたアゾベンゼンの阻止率は90%以上という高いものです。この処理速度は、同等の性能の市販のフィルターと比較して、約3桁大きいということです。
 この高性能ろ過フィルターは、有機溶媒を高速透過させる画期的なものであり、化学工業における製品(塗料、機能性ポリマー、医薬品など)の分離、触媒などが混入した有機溶媒のリサイクルなどへの応用の他、オイルサンドからの原油の抽出における排水処理やディーゼル油中の硫黄の含有量低減など、環境問題への貢献も大いに期待されます。



2011年10月28日

 戸嶋直樹先生、春田正毅先生(春田チーム、山口東京理科大、首都大学東京)らの論文“Catalyrically highly active top gold atom on palladium nanocluster” がNature Materials に掲載、その成果がプレス発表され日刊工業新聞、化工日報(10月24日版)、日経産業新聞(10月31日版)にとりあげられました。
 今回の成果は、Pdクラスター(1.8nm径)の12個の頂点部のPd原子をAuに置き換えた構造の触媒を合成し(その形から Crown Jewel 触媒と名づけられた) 、グルコースの空気酸化を行ったところ高い活性と100%に近い選択率でグルコン酸が生成することがわかったもので、その金属原子あたりの活性は、Pd単独、Au単独のクラスターのそれぞれ3.8倍、3.1倍に相当し、このCrown Jewel構造のAu原子が特異な活性を発現していることが示唆されます。金属クラスター触媒の構造因子の重要性を示したもので、一般の触媒設計に指針を与える成果と言えます。また、グルコン酸は食品添加剤として現在は長時間を要し副生成物も多い発酵法で生産されており、より合理的な製法として実用化が期待されます。



2011年10月26日
尾嶋正治先生(尾嶋チーム、東京大学)が、米国電気学会で「Synchrotron radiation photoelectron spectroscopy of Metal gate / HfSiO(N) /SiO(N) / Si gate stacks」というタイトルの論文発表を行われ、2011年10月11日の220th ECS MeetingでBest Paper Award を受賞されました。内容は、SPring-8東大アウトステーションにおいて3次元ナノESCA装置を完成させ、70nmサイズの放射光ナノビームを使ってLSIデ バイスをピンポイントで深さ方向分析することに成功したもので、多くのナノデバイス、ナノ触媒などへの適用が期待される成果です。



2011年9月13日
小江先生(小江チーム、九州大学)らの論文“Molecular Catalysis in a Fuel Cell”が、Angewandte Chemie International Editionのオンライン版に近日中に掲載されます。表紙にも採用されています。また、その成果がプレス発表され、朝日新聞、読売新聞、日経新聞(いずれも、9月13日版)、産経新聞、日刊工業新聞(いずれも、9月14日版)などに掲載されました。
 今回の成果は、既に小江先生らによって開発されている、水素をヘテロリティックに開裂させることを特徴とするNi-Ru系錯体を電極として用いた燃料電池で、水素が錯体に結合し、酸素と反応して水を生成する過程で電子をやりとりするメカニズムの全解明に成功したものです。白金を触媒とする燃料電池に比べて、まだ取り出せる電流が小さく実用レベルには達しないものの、燃料電池の発電メカニズムを解明した意義は大きく、今後の錯体型電極触媒の開発に大いに貢献することが期待されます。



2011年9月6日

 本ワークショップでは、半導体ナノ構造・ナノワイヤ、ナノカーボン、単一分子等の極微細構造における最新の加工技術、構造評価、物性探索、デバイス応用などを中心に議論を行います。従来、これらの材料系はややもすると、それぞれが異なる会議で議論がなされていましたが、実はこれらの極微細構造にはそれぞれ深い関連があり、共通した物理や応用等が見いだせる可能性を秘めています。
 本会議ではこれらの材料系を研究する第一線の研究者が一同に会し、その極微細構造における特異な物性や応用展開などについて議論を行います。
 ご興味のある方は、是非ご参加下さいますようお願い申し上げます。(参加無料)



2011年7月25日
大岩先生、平川先生(平川チーム、東京大学)らの論文“Electrically tuned spin-orbit interaction in an InAs self-assembled quantum dot”が、Nature Nanotechnology 2011.7.24のオンライン速報版に掲載されました。また、その成果がプレス発表され日経新聞7月25日版に掲載されました。
 今回の成果は、強いスピン軌道相互作用を示す半導体であるInAsの量子ドットからなるトランジスタ構造を作成し、ドットの中に電子を閉じ込め、サイドゲート電圧によりスピン軌道相互作用の大きさを広い範囲で制御したものです。また、近藤効果を利用して相互作用の大きさを定量的に測定できたことも重要な鍵で、世界で初めての成果です。将来的な応用として、量子情報処理デバイスが考えられますが、磁場ではなく電界でスピン軌道相互作用を制御できたこと、量子ドットのような微小空間での制御に成功したことで、より高速・高集積なデバイスへの展開が期待されます。



2011年7月15日
尾嶋先生、組頭先生(現、高エネルギー加速器研究機構教授)らの論文“Metallic Quantum Well States in Artificial Structures of Strongly Correlated Oxide”が、Science2011.7.15号に掲載されました。また、その成果がプレス発表され日経産業、日刊工業新聞(いずれも、7/15付け)などに掲載されました。
 今回の成果は、強相関酸化物の一つである SrVO3 を材料として用い、レーザー分子線エピタキシー技術を駆使して作製した層状構造について、高エネルギー加速器研究機構の放射光を用いた角度分解光電子分光で、量子井戸構造を確認したものです。強相関酸化物の精密な層状構造の作製とその量子井戸構造の制御は世界で初めての成果であり、今後、新しい動作原理に基づいた超伝導デバイスや光スイッチングデバイスといった”強相関エレクトロニクス”への発展が期待されます。



2011年7月4日
春田正毅先生(春田チーム、首都大学東京)が、Royal Society of Chemistry(英国王立化学協会)の2011年度 The Spiers Memorial Awardを受賞されました。 The Spiers Memorial Awardは、毎年1度開催されるFaraday Discussion(物理化学の分野を対象とした国際討論会)で、最も研究の幅が広くインパクトのある内容の講演をした研究者に授与されるもので、春田先生の受賞は日本人としては初めてのものです。 今回は、CREST研究においても大きく進展した、金の化学および金の触媒作用と言う新しい分野の創出に対する卓越した業績に対して授与されたものです。 なお、7月4日〜6日まで英国のCardiff大学で開催される”Gold: Faraday Discussion 152"で授与式が行われます。



2011年6月10日

 川崎雅司先生、福村知昭先生(H22.6まで川崎チーム)らの論文"Electrically Induced Ferromagnetism at Room Temperature in Cobalt-Doped Titanium Dioxide"がScience(27 May 2011: Vol. 332 no. 6033 pp. 1065-1067 DOI: 10.1126/science.1202152)に掲載されました。また、その成果がプレス発表され、日経産業新聞(5/27)、科学新聞(6/10)などに掲載されました。また、IOP(英国物理学会)のWebsiteの May 2011版Newsで詳細に紹介されています。
 今回の川崎先生らの成果は、電界効果型トランジスタ構造を構成する半導体部に、ゲート電圧をかけることにより室温で強磁性を発現せしめることに成功したものです。半導体としては、独自の材料である、TiO2に磁性元素であるCoを少量添加したもの、また、この上部(ゲート電極との間)には、電気二重層となるイオン液体を用いるという独自の技術が用いられています。 今回の成果は、強磁性体が用いられる磁気メモリに記録された情報に対して、電気的にオン・オフの操作が可能となることを意味しており、TiO2が透明材料であることから、窓ガラスなどに貼り付けた透明磁気メモリの実現も期待できるものです。



2011年5月31日

 上野和紀先生(川崎チーム、東京大学(平成23年3月まで東北大学))が、トーキン科学技術振興財団 研究奨励賞(第21回)を受賞されました。
 受賞の対象となった業績は「電場誘起超伝導の発見」で、CRESTの中心的な研究テーマである、酸化物と有機物の界面を用いた高電界印加により、超伝導を誘起する先駆的な研究内容が評価さ れたものです。
 なお、上野先生は、現在、さきがけ「新物質科学と元素戦略」研究領域の研究者です。



2011年5月23日

 川崎雅司先生(川崎チーム、東京大学)らの論文"Discovery of superconductivity in KTaO3 by electrostatic carrier doping "がNature Nanotechnologyのon line版に掲載されました。また、その成果がプレス発表され、日経新聞、日刊工業新聞(5/23)、RSC(英国化学会)WebサイトのWorld News などに掲載されました。
 超伝導材料の探索は、大別すると、金属合金系と絶縁物系に分けられます。絶縁物に対しては、従来、少量の不純物を混ぜるという化学ドーピング法によって超伝導となる材料が見出されてきましたが、川崎先生らの独自の方法は、電気二重層を導入した電界効果のみでキャリアを誘起させることにより超伝導を発現させるもので、今回、化学ドーピング法が困難なKTaO3が超伝導となることを初めて見出したものです。今回発見された超伝導転移温度は絶対温度0.05Kと非常に低温ですが、今回、材料選択の幅が大きく広がったことから、今後、より高温で超伝導となる材料の開発に結びつくものと期待されます。



2011年5月12日

 大友明先生(川崎チーム、東京工業大学)が、ゴットフリード・ワグネル賞を受賞されました。
 受賞の対象は、「原子レベル制御による金属酸化物界面の創製と高移動度電子デバイス応用」で、酸化物界面に2次元電子面を形成し、予想を超える高い電子移動度を実現した業績が認められたものです。特にLaAlO3/SrTiO3界面で初めて見出された分極効果は学術的インパクトが極めて高く、国際的な研究ブームに発展しています。 引き続いて分極界面の原子レベル制御を追及された結果、ZnO/MgZnO界面でも量子ホール効果を実現されました。本研究の対象となった材料は先端コンピューティングからクリーンエネルギーの製造に至る幅広い応用の可能性を秘めています。非真空環境の製造技術を開発することで、太陽エネルギー、半導体照明、ディスプレイ技術に大きな影響を与えると考えられており、その研究プロポーザルも受賞の理由です。



2011年4月6日
本ミニシンポジウムは、CRESTで目指している化学に根差したDDS研究の推進に資するために、有機化学、高分子化学、生化学といった領域間を超えた知見の融合を図ることを目的としたものです。櫻井先生の他、英国からも著名な研究者お二人が講演されます。会費は無料ですのでこぞってのご参加お願いいたします。 プログラム 英語版はこちら。 プログラム日本語版はこちら



2011年3月8日

 栗原和枝先生(栗原チーム、東北大学)が、A.E.alexander Lectureship Award(オーストラリア化学会)を受賞されました。この賞は、シドニー大学の故Alexander教授の先駆的な貢献を記念し設けられた、同化学会コロイド及び界面科学部会の最高の栄誉で,コロイドおよび界面科学の分野で顕著な活躍をした科学者にオーストラリア化学会より贈られるもので、数年に1度の賞です。
 今回、栗原先生の受賞の対象となった業績は表面力測定を用いたコロイド力の理解に対する革新的な貢献,液体を介する様々な表面間の相互作用の距離ならびに力の最も信頼性の高い測定、さらに日豪会議ならびに国際コロイドおよび界面科学連盟のリーダーとしての活動などです。
 昨年3月にアナウンスされ、今年の1月30日〜2月3日のAustralian Colloid & Interface Symposium (ACIS2011)、並びに2月4日にシドニー大学で受賞講演を行われました。



2011年2月23日

 北川 宏先生(北川チーム、京都大学)らの論文“Bottom-up Realization of a Porous Metal-organic Nanotubular Assembly”(多孔性のナノチューブ集合体のボトムアップ実現)がNature Materials誌(2011.2.27付AOP版)に掲載され、その成果がJST等からプレス発表されました。 また、その内容が、日経新聞、日経産業新聞、日刊工業新聞、化学工業日報、京都新聞(いずれも、2.28版)で紹介されました。
 今回の成果は、白金イオン(Pt2)と4,4’ビピリジン、エチレンジアミンから構成された一辺がおよそ1nmの正方形状の金属錯体とヨウ素を室温で反応させることにより、正方形状の金属錯体がヨウ素を介してつながった四角柱状のナノチューブの作製に成功したものです。単結晶X線結晶構造解析により、対角方向の直径がおよそ1.5nmの内細孔を持つナノチューブの構造を確認したとのことです。 金属錯体をパーツとして用い、望みの構造に組み上げるボトムアップ法の成功例といえます。
 また、このナノチューブは、細孔内に水やアルコールの分子は取り込まれるのに対して、窒素や二酸化炭素の分子は取り込まれないこと、また、シリコンより低いバンドギャップを持つ半導体であることが分かりました。
 今後、分子に対して敏感に応答するセンサー材料や、化学的なドーピングにより電導性をコントロールすることで、ガス吸着能と導電性を併せ持つ新たな多機能電子デバイスへの応用などにつながることが期待されます。



2011年2月23日

 川崎雅司先生(川崎チーム、東京大学)が、第8回本多フロンティア賞を受賞されることになりました。
 受賞の対象は、「酸化物界面の原子レベル制御による新光電子機能の開拓」で、酸化物の薄膜・ヘテロ接合の形成技術を飛躍的に向上させ、既存の半導体では不可能な新しいエレクトロニクスを提案するとともに、いくつかの重要なコンセプトを雛形デバイスとして実証されてきた業績が認められたものです。特にCREST期間中の成果である、 酸化物で初めての量子ホール効果の実現と、世界初の電界効果による絶縁体の超伝導化(2008.10.12、2009.11.23付けトピックスご参照)は、学術的なインパクトがきわめて大きい研究として広く世界的に認知されているところです。また、酸化物の薄膜技術を軸にワイドギャップ半導体としてのZnOに研究を展開され、紫外レーザー発振、p型半導体化、 MgO固溶によるさらなるワイドギャップ化など、化粧品の白色顔料として有名であったZnOに対して半導体としてその可能性を明示し薄膜結晶プロセスを確立されたこと(2008.10.1、2009.11.25、2010.7.2、2010.10.18トピックスご参照)も受賞の理由です。



2011年2月18日

 Nanotech 2011(東京ビッグサイト、2011.2.16-2.18)のJSTブースで、栗原グループ(栗原チーム、東北大学)の表面力測定・ツインパス型ナノ共振ずり測定装置の説明・展示が3日間、北川宏先生(北川チーム、京都大学)による「ナノ界面基盤技術が拓くグリーンイノベーション」と題したプレゼンが最終日に行われ、いずれも多くの見学者が訪れ、有意義な展示会とすることが出来ました。
 また、春田グループ(春田チーム、首都大学東京)の金クラスター触媒関連の展示が首都大ブースで、領域アドバイザーの渡會仁先生(大阪大学)の、各種ナノ測定原理・装置の展示が大阪大学ブースで同時に行われていました。



2011年1月4日

 北川宏先生(北川チーム、京都大学)らの論文“Hydrogen-Storage Properties of Solid-Solution Alloys of Immiscible Neighboring Elements with Pd”がJournal of American Chemical Society誌(2010.10.27号)に掲載されました。また、その成果の記者説明会がSPring-8シンポジウムで行われ、日刊工業新聞(11月24日)、読売新聞(12月30日)、朝日新聞(12月31日)に採り上げられました。
 今回の成果は、2000℃の液体状態でも相溶しないことが知られている銀とロジウムについて、それぞれの塩の混合物溶液から、特定の条件下で還元する方法により、原子レベルで相溶しているナノ粒子を創り出したことです。また、この固溶体が高い水素吸蔵能を示すことがわかりました。この特性は銀やロジウムにはなく、周期律表で銀とロジウムにはさまれたパラジウムが有する特徴です。 現在、他の安価な金属材料を探索しており、パラジウムに替わる水素吸蔵材料の開発に繋がる成果として期待されます。



2010年12月13

 藤川茂紀先生(君塚チーム、理化学研究所)らの論文“Au Double Nanopillars with Nanogap for Plasmonic Sensor”がNano Letters誌(2010.11.29ASAP版)に掲載され、その成果が理研からプレス発表されました。
 今回の成果は、互いのギャップが数nmからなる外径400nmの金の二重ピラー(筒)を500nm間隔で数センチメートル四方にわたって大量かつ均一に基板上に配列する独自技術を確立し、それが超高感度のプラズモンセンサーとして機能することを見出したものです。この独自の作製方法は、ナノピラーの鋳型をベースとし、ポリマーコーティングをはさんで2回の金コーティングを繰り返した後、鋳型とポリマーを除去するという一連の操作によるものです。これによりポリマー膜厚の制御で、ギャップ幅の精密制御が可能となります。また、この構造体のプラズモンセンサーとしての性能を調べたところ、期待どおり、従来の金ナノ粒子などの20倍に及ぶ世界トップレベルの感度を示すことがわかりました。プラスチックフィルム上にも構築が可能であるため、簡易・フレキシブルプラズモンセンサーとしての応用も考えられます。大量かつ均一な加工を可能とするこの画期的な技術は、ナノギャップ構造体を現実的な機能材料として利用可能とし、今後、光機能性材料の高性能化への貢献が期待されます。 理研ホームページプレス発表記事へのリンク



2010年11月8日
川崎雅司先生(川崎チーム、東北大学)らの論文“Observation of the fractional quantum Hall effect in an oxide”がNature Materials(2010.10.17オンライン版)で公開されました。また、その成果がJSTなどからプレス発表され、化学工業日報(10月18日)、日経産業、科学新聞(10月29日)、ナノテクジャパン(11月1日)などに採り上げられました。 今回の成果は、分子線エピタキシー法を駆使することにより高純度で平滑なZnO/MgZnO界面を実現、この界面で従来の酸化物系の世界最高値(川崎データ)の10倍となる18万cm2/V・Sの電子移動度を達成したものです。また、低温・強磁場下において、GaAs系化合物やグラフェンと同様の分数量子ホール効果が酸化物系で初めて観測されました。 本成果は、酸化物エレクトロニクス研究の一層の展開と実用化に向けた課題解決に大きく寄与するものと期待されます。



2010年9月1日

 高分子学会Wiley賞は、高分子科学の全領域において独創的かつ優れた研究成果を挙げた若手の研究者個人に授与されるもので、今回の受賞は、「高分子薄膜のナノ構造制御と高度分離機能の創出」の業績が評価された結果です。具体的には、金属水酸化物のナノファイバーの発見と、それを濾過で固めた多孔性ナノ薄膜の製造方法を考案したこと、さらに、乾燥泡膜の発見と それを利用した自己支持性の高分子薄膜の新しい製造方法を提案したことなどによるもので、まさにCREST研究の中心課題です。とくに架橋フェリチンの多孔性ナノシートでは、水中の有機色素やタンパク質に対し従来の1000 倍の濾過性能を実現するとともに、ナノ細孔中の水の透過メカニズムの理論的な解明に大きく貢献されました。概要は高分子Vol59,9月号(2010)に掲載されます。



2010年8月10日

 放射光を用いたソフトマテリアル研究のレベルを世界最先端で展開していくためには、ソフトマテリアル分野で放射光を中心とする最先端の量子ビーム利用研究を行っておられる第一線の研究者との交流を促進し、各企業における産業技術への利用に連携することを可能とする場の提供が必要不可欠です。
 本シンポジウムでは、招待講演とポスター発表による研究発表を通じて、放射光、中性子を利用した新規測定技術の開発、生体高分子、分子集合体、ソフトマテリアル、ソフト界面の研究分野間の交流を深めるとともに、次の10年のソフトマテリアル研究における放射光研究の方向性を探ろうとするものです。ご興味のある方は産官学を問わず是非ともご参加下さい(参加登録無料)。
シンポジウムHPへのリンクはこちら



2010年7月26日

 藤田誠先生(藤田チーム、東京大学)らの論文”Networked molecular cages as crystalline sponges for fullerenes and other guests”がNature Chemistry 誌に掲載され(Published Online July 26, 2010)、その成果に関してプレスリリースされました。
 今回の研究では、溶液系で自己組織化した中空正八面体のCo系錯体を、さらに各ユニットの頂点にあるCoイオンを介して連結することで細孔性のネットワーク錯体が得られたこと。この結晶性のネットワーク錯体は、ユニットの錯体が溶液系で有するゲスト分子の包接能を保持しており、フラーレンC60を35wt%まで取り込むこと。また、フラーレンC60:C70=1:1の溶液からC70を純度93%以上にまで濃縮できるなど高い包接選択性を示すこともわかりました。
 取り込まれた化合物が結晶内部でその性質を変化させるのか、通常の溶液状態では達成できないような物性の発現や結晶内でのマテリアル創成など、結晶性スポンジを使った応用展開が大いに期待されています。



2010年7月15日

 尾嶋正治先生、組頭広志先生(尾嶋チーム、東京大学工学系研究科)らの論文”Dimensional-crossover-driven metal-insulator transition in SrVO3 ultrathin films” がPhysics Review Letters(10.4.9 On line公開)に掲載されました。また、その成果が高エネルギー加速器研究機構KEKトピックス(10.6.4)「次元性の変化に伴う金属絶縁体転移の期限を解明」、KEKニュース(10.7.15)「サイズを変えて導体から絶縁体へ 〜 厚さの変化で性質が変わるしくみ 〜」で取り上げられました。
 尾嶋チームの成果は三次元状態では金属的な性質を示すSrVO3が薄膜の2次元状態に近づくと、電子の状態が変化して絶縁体になることを発見したもので、ナノサイズ化する電子デバイスの制御において有益な知見が得られました。三次元状態が安定な酸化物結晶で超薄膜を制御して作るのは困難でしたが、レーザー分子線エピタキシー装置と高分解能角度分解光電子分光装置の複合装置を用いることで観測が可能になりました。 さらに、第一原理計算と組み合わせることで、この導体から絶縁体への変化は、2次元状態にすることで電子の運動エネルギーに相当する量が徐々に小さくなり、ついには電子同士の反発力よりも小さくなってしまうことがその起源であることが明らかになりました。



2010年7月12日

 江崎玲於奈賞は、ナノテクノロジーの分野で世界的な功績のあった研究者を表彰するもので、今回の受賞は、自己組織化を利用したナノ構造物質の開発の成果が評価された結果です。CRESTでは、自己組織化による「有限ナノ界面の化学」という概念の下、界面現象の本質の解明や有用物質の創成に研究を展開中です。 2010.5.6、2009.10.2、2009.2.23付けトピックスをご参照下さい。



2010年7月2日

 川崎雅司先生(川崎チーム、東北大学)らの論文“Nitrogen doped MgxZn1-xO / ZnO single heterostructure ultraviolet light-emitting diodes on ZnO substrates”がApplied Physics Letters 誌に掲載され、その成果がプレス発表され、日経産業新聞、日刊工業新聞(6月29日)などに採り上げられました。
 今回の成果は、これまでに川崎研究室で開発されていたMBEを用いたMgZnO/ZnOの高品質な接合界面を作製する技術に対して、MBEをアンモニア雰囲気下で行うという工夫を加えることにより、MgZnOに対して効果的にNを導入し(MgxZn1-x9O:N)、これまで困難であったp型半導体化に成功したもので、これにより、従来のZnO系LEDと同様の紫外領域で、1万倍の輝度を実現したものです。現在のところ、照明光源に用いられているGaN系LEDに比べると、まだ1/10の輝度ですが、ZnOという汎用的で安価な照明光源としての実用化につながる成果として今後の展開が期待されます。 



2010年6月15日

 北川宏先生(北川チーム、京都大学)らの論文“A Metal-Organic Framework as An Electrocatalyst for Ethanol Oxidation”がAngewandte Chemie International Edition 誌の On line 速報版に掲載されました。また、その成果がプレス発表され、日刊工業新聞、化学工業日報(6月15日)、日経産業新聞(6月18日)に採り上げられました。
 今回の成果は、電子とイオンの両方を良く通す材料であることが北川先生らによって既に見出されていたルベアン酸銅を構成単位とするMOF(金属−有機物構造体)が0.4Vという低い電位でエタノールを酸化することを初めて見出したものです。また、この事実は同MOFとエタノールとの相互作用を量子化学手法で計算した結果からも裏付けられました。この成果は、今後、バイオエタノールを利用した白金触媒を用いない燃料電池の開発に大いに貢献することが期待されます。



2010年5月31日

 北川宏先生(北川チーム、京都大学)らの論文“Surface Nano-Architecture of A Metal-Organic Framework”がNature Materials 誌に掲載されました。また、その成果がプレス発表され、日本経済新聞、日刊工業新聞(5月31日)などに採り上げられました。
 今回の成果は、ナノレベルの結晶性・多孔性金属錯体薄膜の作製に世界で初めて成功したものです。2種の自己組織化法を巧みに組み合わせることにより金属錯体の単分子層を20層積み上げたもので、SPring-8で精密なXRD解析の結果、配向制御された結晶性の膜であることが確認されました。活性炭やゼオライトなどのミクロ孔からなる多孔性物質は、 CO2など有害ガスの吸着や分離材として期待されています。今回開発された多孔性・結晶性薄膜はこれらに比べて脱着エネルギーが小さい上に、配向性や構造設計の自由度など、より優れた材料として吸着・分離材の他に、高効率な電極触媒(例えば燃料電池の電極触媒)などの開発にも大きく貢献することが期待されます。



2010年5月18日

 有賀哲也先生(有賀チーム、京都大学)らの論文“Large Rashba spin splitting of a metallic surface-state band on a semiconductor surface”がNature Communications 誌に掲載されました。また、その成果がプレス発表され、日刊工業新聞(5月18日)などに採り上げられました。
 今回の成果は、磁石を使わずに電子のスピン状態を識別することができる半導体表面を見出すことに世界で初めて成功したものです。具体的には、ゲルマニウム結晶表面に鉛原子が1層並んだ表面を作ってその電子構造を詳細に調べた結果、巨大ラシュバ効果によって表面を流れる電流スピンが特定の方向に揃うことがわかりました。この現象を応用することで、特定のスピン状態の電子のみを半導体中に注入したり、 スピン状態を電圧で制御することが可能になり、超低消費電力の半導体デバイスの実現につながるものと期待されます。



2010年5月6日

 藤田誠先生(藤田チーム、東京大学)らの論文”Self-Assembled M24L48 Polyhedra and Their Sharp Structural Switch upon Subtle Ligand Variation”が Science 誌に掲載され(Published Online April 29, 2010. Science DOI: 10.1126/science.1188605)、東京大学で記者会見が行われました。 科学新聞(5月14日)などに採り上げられています。
 今回の成果は、金属イオン(M)と、僅かに湾曲した有機配位子(L)を混合することで、M24L48 組成の巨大な球状の構造体が自己組織化により形成されることを見出したものです。この化合物は一義構造体としては世界最大とのことです。 また、有機配位子を二種用いて湾曲の度合いをわずかに変えることで、構造がM24L48からM12L24構造に劇的にスイッチすることがわかりました。 この現象こそ、生物が多成分の自己組織化で一義構造を獲得するしくみそのものであり、今回、この生物の営みを人工的な分子を使って体験し、立証した、極めて意義深い成果といえます。



2010年4月28日
川崎雅司先生(川崎チーム、東北大WPI材料機構)が、業績名「原子レベル制御した酸化亜鉛ヘテロ接合の形成と新光電子機能の開発」に対して第42回市村学術賞・功績賞を受賞されました。本賞は、大学ならびに研究機関で行われた研究のうち、学術分野の進展に貢献し、 実用化の可能性のある研究に功績のあった技術研究者(50歳未満)に贈呈されます。



2010年4月13日
川崎雅司先生、上野和紀先生(川崎チーム、東北大WPI材料機構)、岩佐義宏先生、下谷秀和先生(川崎チーム、東大工学系研究科)が、業績名「電界誘起超伝導の発見」に対して第14回超伝導科学技術賞を受賞されました。本賞は、最初の高温超伝導体が発見された年から10年目に当たる平成8年度に、 (社)未踏科学技術協会・超伝導科学技術研究会によって創設されました。第1回の授賞式は平成9年4月に超伝導シンポジウムの会場で行われ、内外の大きな注目を浴びました。以来毎年シンポジウムの場において、超伝導科学技術の研究に関して卓越した業績を残された研究者を顕彰しています。



2010年4月12日

 櫻井グループ(櫻井チーム、北九州市立大学)では、石井グループ(同、大阪大学)と共同で、多糖と核酸が今までにない超分子複合体を形成することを発見し、その基礎研究を進めるとともに、DDSへの応用展開を進めてきました。 今回、この多糖複合体と核酸医薬の一種であるCpGDNAを抗原提示細胞に効率的に運搬することで、インフルエンザワクチンの新規アジュバント(効果増強剤)を開発しました。
 現在使われているスプリットワクチン(Split)は不活性化した全粒子ワクチン(Whole)を精製して抗原となるタンパク質のみを分離することで作成されます。しかしながら、その過程で欠落したウイルス由来のCpG配列を含んだ核酸の断片は自然免疫の活性化には不可欠であることが判明しました。 そこで、これを補うために、免疫担当細胞に特異的に送達できる多糖(SPG)と複合化したCpGDNAをSplitワクチンと同時に添加して、致死量のウイルスに暴露した時の死亡率を比較(図)したところ、Splitのみ(図緑)では未防御とほとんど変わらないが、SPG/CpGDNA同時添加(赤)系ではWhole(黄色)と同程度の致死率まで回復することがわかりました。
 この成果は、鳥インフルエンザ等のパンデミックの効果的な予防薬の開発につながると期待されます。
 論文の書誌事項は以下のとおりです。 S. Koyama, T. Aoshi, T. Tanimoto, Y. Kumagai, K. Kobiyama, T. Tougan, K. Sakurai, C. Coban, T. Horii, S. Akira, K. J. Ishii, Plasmacytoid dendritic cells delineate immunogenicity of influenza vaccine subtypes. Sci. Transl. Med. 2, 25ra24 (2010). 10.1126/scitranslmed.3000759



2010年4月1日
◆春田チームからは2件(日本化学会賞、学術賞)の受賞に輝きました。
春田先生の日本化学会賞の対象は、「金ナノ粒子の新しい触媒作用」で、これは、化学的に不活性とされた金でも直径5nm以下のナノ粒子として卑金属酸化物上に分散・固定すると、室温以下でのCO酸化やプロピレンのエポキシ化などに触媒活性を示すことを発見されたことによるものです。

 また、佃先生の学術賞の対象は、「金クラスターの精密合成とサイズ特異的機能」で、これは、原子1個のレベルで原子数を精密に制御した金クラスターを合成し、原子数によって特異的に液相反応が進行することを発見されたことによるものです。
 それぞれ、CREST研究において行った金クラスター触媒によるグリーンケミストリーの開拓と金クラスターのサイズ選別に関する研究成果が受賞の主要な対象となっています。

◆北川先生の学術賞の対象は、「多彩な電子・水素相の創出と固体プロトニクス材料への展開」で、これは、「固体プロトニクス」の学理構築と近い将来の産業利用に向けた基盤研究を展開したことにあります。特に、1)低次元系に固有なゆらぎ効果に基づいて、動的相互作用の新しい競合状態・融合状態の創出を行い、2)酸化還元、酸塩基性、電子移動、プロトン移動、光反応性などの作用が複合的にかかわる新しい型の機能と物性に着目し、柔軟性と多様性に富む分子性物質を創製し、新しい型の物性化学を展開し、3)ナノサイズに特有な新しい量子現象や新機能を見出したことが評価されました。CREST研究「錯体プロトニクスの創成と集積機能ナノ界面システムの開発」の成果は2)の評価と深く関わっています。



2010年1月27日
石井健先生(大阪大学)、櫻井和朗先生(北九州市立大学)(いずれも櫻井チーム)らの論文
"Immunogenicity of Whole-Parasite Vaccines against Plasmodium falciparum Involves Malarial Hemozoin and Host TLR9" がCell Host & Microbe誌に掲載されました(Volume 7, Issue 1, 50-61, 21 January 2010)。 マラリアは未だに世界で最も猛威を振るう感染症のひとつですが、有効なワクチンの作成には誰も成功していません。石井先生らはマラリア原虫の粗抽出液を使ってWhole parasite vaccineとして有効であることを示し、 その効果がトル様受容体9(Toll-like receptor (TLR) 9)を介したアジュバント効果によることを世界で初めて証明されました。そしてそのアジュバント因子が、マラリア原虫が赤血球のヘモグロビンを消費した後に ヘムの代謝産物として生成する、ヘモゾイン(Hemozoin(HZ):ヘムの2量体のポリマーでnm〜μmサイズの結晶体。マラリア毒素(Malaria toxin)ともいう)であること、ヘモゾインがTLR9に特異的に結合し、 TLR9タンパクの高次構造を変化させることも世界で初めての知見です。またNMR解析によりTLR9リガンドであるCpGDNA(免疫賦活化作用のある一本鎖オリゴ核酸)とヘモゾインはTLR9のシステイン、ヒスチジンを 介して結合していることが判明しました。さらに、合成のヘモゾインも作成し、20-200nmのサイズのヘモゾインが最もアジュバント効果が高く、実際にイヌのアレルギーワクチンのアジュバントとしてその効果が証明されました。 これらの知見は、マラリアワクチンの開発研究に貢献するのみならず、アジュバント全体の作用機序、TLRなどの自然免疫受容体のリガンド認識機構に深く迫るものとして注目されるとともに、櫻井チームで開発しようとしている インフルエンザワクチンのTLR9リガンドアジュバントであるCpGDNAとSPGの複合体の作用機序解明にも貢献すると期待されます。なお、論文は同じ号のPreviewで紹介された他、Faculty of 1000 BiologyでMust read論文として紹介されました。



2010年1月25日
本シンポジウムでは、量子ナノ構造における新規な物性とそのデバイス応用に関する最新の成果を、国内外の気鋭の研究者による口頭講演と若手研究者によるポスター発表により、集中的に議論致します。 当該分野における最新の情報入手や新しい研究者ネットワークの構築など、ご興味の方は是非ご参加下さい(参加登録無料です)。なお、本シンポジウムは、平川CREST、樽茶ICORP、 平山ERATOおよび戦略的日独国際共同研究プロジェクトの共催によるものです。



2009年11月25日
川崎雅司先生(川崎チーム、東北大学)らの論文”Electric field control of two-dimensional electrons in polymer-gated oxide semiconductor heterostructures”がAdvanced Materials(2009.11.25オンライン版)で公開されました。 また、その成果がプレス発表され、化学工業日報(09.11.25)、日刊工業新聞(10.1.20)などに紹介されました。トランジスタとしての材料構成は、ZnO/MgZnO/導電性ポリマーからなるものです。ZnO/MgZnO界面に誘起される2次元電子は移動度が高いこと、 および、MgZnOに特定の導電性ポリマーを塗布することで界面はショットキー接合が形成されることが既に川崎先生らによって見出されています(関連発表12)。 今回は、このショットキー接合を介した電界効果によりZnO/MgZnO界面に蓄積した2次元電子の密度と伝導特性が制御でき、On-Off状態が実現することが 確認されたものです。本成果をきっかけとして、酸化物の透明エレクトロニクス応用を目指した研究が一挙に進展するものと期待されます。



2009年11月23日
藤田誠先生(藤田チーム、東京大学)らの論文“Template synthesis of precisely monodisperse silica nanoparticles within self-assembled organometallic spheres”がNature Chemistry(09.11.22 On line公開)に掲載されました。また、その成果がプレス発表され、 日刊工業新聞(09.11.23付)などにも紹介されました。この成果は、自己組織化により合成したカプセル状の錯体の内側をテンプレートとして使うことにより、5nm以下の極めて均一なシリカ球状粒子を合成することに成功したものです。カプセルとなる錯体の構造が極めて均一であること、その内側に、ゾルゲル反応の原料となるシラン化合物を導き入れる糖類が配置されていることがポイントです。 シリカの分子量の多分散度は1.01以下という驚くべき均一性が達成されています。この手法ををさまざまな無機ナノ粒子の合成反応に適用することで、新反応の開拓や新薬の創成、分子レベルでのマテリアル設計など多分野の発展に大いに貢献することが期待されます。



2009年11月23日
岩佐義宏先生(川崎チーム、東北大学)らの論文”Liquid Gated Interface Superconductivity in an Atomically Flat Film”がNature Materials(2009.11.22オンライン速報版)で公開されました。また、その成果がプレス発表され、日経産業新聞(09.11.24)、日刊工業新聞(09.11.23)などに紹介されました。 この成果は、昨年発表された成果(本ページ09.10.12付けトピックス)をさらに発展させて達成されたものです。今回は、電気二重層を発現せしめる有機物にイオン液体を用いることで伝導キャリヤの数を大幅に増加させるとともに、新しい無機物質として層状構造を有する塩化窒化Zrを用いることによって、超伝導になる温度を、従来の0.4Kから15Kまで大幅に上昇させることに成功したものです。 今後は、この方法をさまざまな物質に適用して、従来化学的な合成法では超伝導にならなかった物質を超伝導化したり、より高い超伝導転移温度を持つ新材料を実現できると期待されます。



2009年11月10日
由井チーム(研究代表者:北陸先端科学技術大学院大学 由井伸彦教授)主催の国際シンポジウム”International Symposium on Nanobio-Interfaces Related to Molecular Mobility”が11月9日、10日、東京大学武田ホールで開催されました。 当日の発表の概要等はこちらをご覧下さい。



2009年10月1日
藤田誠先生(藤田チーム、東京大学)らの論文“X-ray observation of a transient hemiaminal trapped in a porous network”がNature(09.9.31 On line公開)に掲載されました。また、その成果が プレス発表され、日経産業新聞(09.10.01付)、日刊工業新聞(09.10.08付)、科学新聞(09.10.09付)にも紹介されました。 この成果は化学反応の途中経過をまるでスナップショットのようにX線構造解析で直接観測した画期的なものです。約1nmの空間が規則的に配列した有機金属錯体からなるフレームワークを設計・合成し、この空間に反応物分子をしみこませ、 低温での反応凍結・X線照射と昇温による反応の進行とを繰り返すことにより経時変化が追跡されたもので、反応中間体の構造も明瞭に示されました。出発物が生成物に至るまで、堅固な空間に閉じ込められているために規則的配列(結晶) 構造が維持されているところが鍵です。今後、実用上有用でありながら反応機構が不明であった反応の機構解明や、微量で済むことにより危険物質を安全に試作・評価できることなど、化学の進歩への大きな貢献が期待されます。



2009年9月16日
君塚信夫先生(君塚チーム、九州大学)らの論文”One-Pot Room-Temperature Synthesis of Single-Crystalline Gold Nanocorolla in Water”がJournal of the American Chemical Society(09.9.16 On line公開)に掲載されました。また、その成果がプレス発表され、 日経産業新聞、化学工業日報(09.9.11付)にも紹介されました。この成果は花びら状やプロペラ状の複雑な形を持つ単結晶の金ナノプレート−隣り合う花びらの間隔はわずか1nm−を世界で始めて合成することに成功したものです。今回、新たに開発された合成法「ナノ彫刻法」は、金イオンを光によって還元させ金ナノプレートを成長させる反応と、ナノプレートを水中の溶存酸素で酸化して溶解させる(エッチング)プロセスを同時に進行させる簡便なもので、他の金属にも応用できると考えられ、高活性の触媒や表面ラマン分光法の基板としての応用の他、新規な物性を持つ新しい金属ナノ材料が生み出されることが期待されます。



2009年8月18日
一ノ瀬泉先生らの有機分子を高速濾過するナノ膜の研究成果(4.27トピックスご参照)を基に、物質・材料研究機構と旭化成クラレメディカル株式会社が、血液浄化用医療用フィルターなどへの実用化に向けて 共同開発を進めることとなりました。 (物質・材料研究機構のプレス発表ページにリンクします)



2009年7月31日
横谷尚睦先生(尾嶋チーム、東京大学工学系研究科)らの論文"Spectroscopic evidence of the existence of substantial Ca 3d derived states at the Fermi level in the Ca-intercalated graphite superconductor CaC6”がPhysical Review B(09.7.16 On line公開)に掲載されました。 また、その成果が日経産業新聞(09.7.31付)にも紹介されました。この成果はCaC6という超伝導体の高い超伝導転移温度の理由が、3d軌道に由来する伝導電子であることを、共鳴光電子分光で検証したというもので、超伝導臨界温度上昇の可能性を示唆した成果です。



2009年7月13日
尾嶋正治先生、組頭広志先生(尾嶋チーム、東京大学工学系研究科)らの論文” Inhomogeneous chemical states in resistance-switching devices with a planar-type Pt/CuO/Pt structure”がApplied Physics Letters(09.7.10 On line公開)に掲載されました。 また、その成果が日刊工業新聞(09.7.13付)にも紹介されました。尾嶋チームの成果は次世代不揮発メモリーとして注目されている抵抗変化型ランダムアクセスメモリーReRAMのメカニズムを解明したもので、Pt/CuO/Pt構造の素子にパルス電界で形成された低抵抗化領域を 波長可変高輝度放射光を使った光電子顕微鏡によって調べ、「電子が通る道」の可視化に成功しました。現在CRESTで開発中の3次元ナノESCA装置を応用することで、電子が通る道の深さ分布を正確に決定できます。



2009年6月10日
ISNI2009では、バイオとのナノ界面創成における分子運動性の重要性を多方面から議論することを目的として、国内外の新進気鋭の研究者による招待講演と若手研究者によるポスター発表を予定しています。 当該分野における最新情報入手や意見交換のみならず、本シンポジウムを通じたナノ界面研究の新しい研究者ネットワーク構築など、ご興味の方は産官学を問わず是非ともご参加下さい(参加登録無料)。



2009年6月1日
IACISはコロイドと界面科学の分野の研究者の国際連携と研究推進を目的とし、各地域の学会と連携する国際組織で、1979年以来3年に一度国際会議を主催すると同時に各地域での学術活動を支援しています。 この度、IACISの会員の選挙で栗原先生がPresident electに選出されたとのことで、日本人さらにはアジアから、および女性として初めての快挙です。本年6月のNew Yorkでの総会からPresident elect、また、2012年の仙台の総会からPresidentとなられます。



2009年5月31日
牧浦理恵CREST研究員(北川チーム、九州大学)が、日本化学会第89春季年会(2009)において、「ヨウ化銀ナノ粒子のイオン伝導性と相転移挙動」の講演により、優秀講演賞(産業)を受賞されました。 発表された内容は、4.27付けトピックスで紹介したヨウ化銀の室温超イオン伝導性に関する口頭発表で、ヨウ化銀とイオン伝導性高分子とのナノ界面の制御に成功したものです。



2009年5月25日
君塚信夫先生(君塚チーム、九州大学)らの論文が Small誌に掲載されました(22 May. 2009 on line版) “Holey Gold Nanowires formed by Photoconversion of Dissipative Nanostructures Emerged at the Aqueous-Organic Interface”。また、その成果が九州大学およびJSTからプレス発表されました。 君塚先生らの成果は、”散逸構造”の形成をナノレベルにおいて、初めて確認したものです。具体的には、負電荷を有する金(III)錯体の水溶液と、正電荷を有する脂溶性アンモニウムイオンを溶解した有機溶媒を接触させると、その界面で金錯体とアンモニウムカチオンのイオン対が自己組織化し、 自発的にナノレベルの一次元集合体(散逸ナノ構造)を形成することを(この集合体を光還元すると金ナノワイヤーが形成されることから)実証されました。この金ナノワイヤーは、柔らかい綿毛状に生成し、ナノ孔を内在する等、これまでにない特異な構造を有していることもわかりました。今回の成果により、 これまで熱力学的平衡系で作られてきた物質とは異なる構造・機能を有する分子や超分子を開発できる可能性が見えたと言えます。



2009年5月18日
北川宏先生、牧浦理恵CREST研究員(北川チーム、九州大学)らの論文が Nature Materials誌に掲載されました(17 May. 2009 on line版) (”Size-controlled stabilisation of the superionic phase to room temperature in polymer-coated AgI nanoparticles” ) 。 また、その成果が九州大学、JST、理化学研究所、高輝度光科学センターからプレス発表されました。 北川先生らの成果は、室温でも非常に高いイオン伝導性を持ち、大気下で安定かつ耐熱性の高い固体電解質の開発に世界で初めて成功したものです。ヨウ化銀は固体の超イオン伝導体として知られていましたが、相転移温度(超イオン伝導性を示し始める温度)が147℃と高く、電池の電解質としては実用性がありませんでした。 北川先生らは、これを10nm径のナノ粒子とすることで、40℃まで下がること、40〜10nmまでの範囲で径が小さいほど相転移温度が低いことを見出しました。この新しい電解質の発見により、これまでにない安定で高性能な充電池の実現を加速することが期待されます。



2009年4月27日
一ノ瀬泉先生、大野隆央先生(一ノ瀬チーム、物質・材料研究機構)らの論文が Nature Nanotechnology誌に掲載されました(”Ultrafast permeation of water through protein-based membranes” DOI number: 10.1038/NNANO.2009.9026, Apr. 2009 on line版) 。 また、その成果が物質・材料研究機構からプレス発表されました。一ノ瀬先生らの成果は、従来の限外濾過膜に比べはるかに高速で水に溶けている有機分子を除去できる革新的な分離膜の開発に成功したものです。 膜は水酸化カドミウムナノファイバーとフェリチン(タンパク質)から不織布を形成し、グルタルアルデヒドで架橋し強化したもので、たとえば厚さ60ナノメートルの膜では、プロトポリフィン色素を従来の限外濾過膜の1000倍以上の処理速度で濃縮されるという結果が得られています。膜中には直径約2ナノメートルの細孔があり、 その有効長さは5.8ナノメートルに過ぎないことが分かったとのことです。この技術は、今後、飲料水中のウイルス除去等の水処理の他、人工透析の効率化など医療分野での応用が期待されるものです。



2009年4月14日
福村知昭先生と大友明先生(川崎チーム、東北大学)がそれぞれ、「磁性酸化物半導 体の合成と物性およびデバイスの研究」と「原子レベル制御による酸化物界面の創製と量子伝導の研究」の功績により、 4月14日に 平成21年度文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞されました。 本CREST課題では、酸化物・有機分子の界面科学を活用することにより、これら成果を新機能デバイスへ展開しています。



2009年4月14日
藤田誠先生(藤田チーム、東京大学)が、「自己組織化に基づく中空物質群の創成と機能化に関する研究」の功績により、4月14日に平成21年度文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)を受賞されました。 金属錯体の配位結合を活用した自己組織化による多種多様な巨大中空構造体の自在構築とその機能化における長年の成果が認められたもので、 本CREST課題では、この中空構造体の表面・内面を利用した有限系の表面化学・内面化学の展開が図られています。



2009年3月31日
尾嶋チームの組頭広志准教授(東大院工)が、2009年3月の日本物理学会において 日本物理学会第3回若手奨励賞を受賞されました。受賞の理由は、レーザーMBE装置で成長させた酸化物薄膜の電子状態を高分解能放射光光電子分光で解析し、 ナノ領域の界面を制御したという顕著な業績が認められたものです。



2009年3月11日
小江誠司先生(小江チーム、九州大学)が「水溶性金属アクア錯体を用いた水中・常温・常圧での水素分子の活性化」の功績により、 第5回(H20年度)日本学術振興会賞 を3月9日受賞されました。小江先生の成果は、ニッケルや鉄系の錯体触媒を用いて、水中・常温・常圧という穏和な条件下で、 水素をプロトンとヒドリドイオンに高活性で開裂させることに世界で始めて成功されたものです。本CREST研究では、 これらの触媒系を用いた燃料電池等エネルギー変換デバイスの実用化に向けて、さらに強固な基盤が築かれることが期待されます。



2009年3月10日
藤田チームの、河野正規先生(東京大学)が「結晶空間設計に基づく反応過程や不安定種のX線直接観察」の功績により、 第26回(H20年度) 日本化学会学術賞を受賞されることとなりました。 藤田チームでは、自己組織化で得られる中空構造の内面化学の創出をひとつの柱としています。 河野先生は自己組織化で得られる細孔性物質の内壁を反応場・分子認識場に使う研究を担当され、新しい物性や新しい反応の創出、 反応のX線観察などを行ってこられました。すでに本領域での成果として、数報の論文を出しておられます。



2009年2月23日
藤田誠先生(藤田チーム、東京大学)らの論文が Nature Chemistryに掲載されました "Minimal nucleotide duplex formation in water through enclathration in self-assembled hosts" (22 Feb 2009 on line版) 。 また、その成果が東京大学およびJSTから プレス発表され、日経産業新聞、科学新聞(2/23)に掲載されました。藤田先生らの成果は、水中でわずか1、2塩基対からなる DNA(RNA)断片を安定的に保持することに世界で始めて成功したものです。微小な塩基対だと塩基どうしの水素結合に対する 水分子の阻害が無視できず、安定に存在することができません。そこで、生体内の酵素を模して、内側に疎水空間をもたらす ナノサイズのかご状分子を設計し、これを有機金属錯体の自己組織化で実現したものです。この技術は、遺伝情報の複製や発現の ON/OFFを自在にコントロールする技術や、DNA・RNAの中から必要な部位のみを切り出して利用することで遺伝子診断や化学分析、 高効率反応などへの応用が期待されます。



2009年1月28日
アジア地区のMaterial Reserach Society(MRS)の会議(2008.12.9-13、名古屋) のセッションX(Applications of Synchrotron Radiation and Neutron Beam to Soft Matter Science) で櫻井和郎先生(櫻井チーム、北九州市立大学)が招待講演を行われ、これがMRSニュースに採り上げられ、 MRSのホームページから世界に向かって配信されました。 薬物送達システムの構造を放射光をもちいて測定し、薬理効果と構造の関係を詳細に調べる試みとして注目される発表であるとのコメントでした。



2008年12月16日
北川チームの坂田修身先生(高輝度光科学研究センター)らの論文が、Applied Physics Lettersに掲載 されました(2008年12月15日号 “Transformation from an atomically stepped NiO thin film to a nanotape structure: A kinetic study using x-ray diffraction”)。また、その成果が 高輝度光科学研究センター と東京工業大学よりプレス発表され、日刊工業新聞(12/16)、化学工業日報(12/16)に掲載されました。坂田先生らの成果は、 大気中、350℃以下という比較的マイルドな条件下で、NiO薄膜上に自己組織化によるナノテープの作成に成功したこと。 また、これに要するエネルギーがNiとOとの結合エネルギーの約1/300と極めて微小であることを 「その場シンクロトロンX線回折法」により明らかにしたことにあります。この方法は非常に簡便なプロセスであるため、 配線材料や高密度メモリー材料など将来の電子デバイス分野への応用が期待されるものです。



2008年11月27日
北川宏先生、金井塚勝彦先生(北川チーム、九州大学)、坂田修身先生(同、JASRI)らの論文が Journal of American Chemical Society に掲載されました(“Construction of Highly Oriented Crystalline Surface Coordination Polymers Composed of Copper Dithiooxamide Complexes”2008.11.26号)。 また、その成果が九州大学JASRIよりプレス発表され、 日経産業新聞(12/3)、日刊工業新聞(11/27)、化学工業日報(11/27)などに掲載されました。北川先生らの成果は、 原子層オーダーで有機分子と無機分子が積層し、結晶を組んだナノ多孔性配位高分子薄膜の合成に世界で初めて成功したものです。 今回の研究成果は、将来の燃料電池用電極触媒の薄膜材料として有力視されるのみならず、有機EL素子やトランジスタなどの デバイスの作製にも有用な新規材料の合成法を提供するものと期待されます。



2008年10月27日
稲垣チーム・宮坂グループの福谷祥平さん(大阪大学大学院基礎工学研究科)が、 第2回分子科学討論会の優秀ポスター賞を受賞されました。この発表は、 稲垣チームで進めているメソポーラス有機シリカの細孔内に導入した蛍光分子の 拡散運動を最新の単一分子計測法により観測し、光機能材料の設計の基礎データを 得ることを目的とした成果です。

第2回分子科学討論会、2008年9月24-27日“単分子計測によるメソポーラス有機 シリカ材料のミクロ構造評価”(阪大院基礎工・極量セ、JSTさきがけ、JST-CREST、豊田中研) ○福谷祥平、楠見崇嗣、伊都将司、宮坂博、猪飼正道、後藤康友、谷孝夫、稲垣伸二



2008年10月27日
稲垣伸二先生(稲垣チーム、豊田中央研究所)が、「規則状メソ孔物質の合成と機能化」で、 日本吸着学会学術賞を受賞されました。本賞は「吸着における科学技術に関する一連の論文、 著作等、学術的研究成果が特に優れた個人会員」を 顕彰するものです。授賞式は10月24日(金) に第22回日本吸着学会研究発表会(九州大学)で行われ、当日に受賞講演が行われました。



2008年10月12日
川崎雅司先生、岩佐義宏先生(川崎チーム、東北大学)らの論文が Nature Materialsに掲載されました ("Electric-field-induced superconductivity in an insulator "Nature Materials (12 Oct 2008 on line版) 。 また、その成果がプレス発表され、 NHKでの放送(10/13ニュース)の他、日経新聞(10/20)、朝日新聞、読売新聞(10/13)、化学工業新聞(10/14)などに 掲載されました。川崎先生らの成果は、完全な絶縁物であるチタン酸ストロンチウムに電界効果のみでキャリアを誘起させる ことにより超伝導を発現させることに初めて成功したものです。成功の鍵は、FET構造の絶縁層にポリマー電解質を用いる ことにより、ゲート電圧で界面に電気二重層を形成し、十分な濃度のキャリアを誘起させたところにあります。 将来はこの手法を用いて新しい高温超伝導材料を発見できることが期待されます。



2008年10月6日
稲垣チーム・稲垣グループ、および、石谷グループの発表が相次いで、学会ポスター賞、講演賞を受賞されました。 これらの発表は、稲垣チームで進められているメソポーラス有機シリカへの金属錯体の固定による光機能創出を目指した研究の成果です。

(1) IMMS Best Poster Presentation Award (6th IMMS, Namur), 2008年9月8-11日,”Fixation of Metal Complex in Mesoporous Biphenylylene-Silica and its Optical property.”(豊田中研、東工大, CREST/JST) ○竹田浩之、大橋雅卓、谷孝夫、石谷治、稲垣伸二

(2) 第88 春季年会「優秀講演賞(学術)」,2008年3月26-30日、”Ru(II)錯体を連結した直鎖状Re(I)多核錯体の分子内光エネルギー移動” (東工大院理工・産総研・CREST/JST)○山本 洋平・小池 和秀・石谷 治

(3) 平成20年度 第58回錯体化学討論会 ポスター賞, 2008年9月20-22日、”直鎖状及びリング状Re(I)多核錯体から連結したRu(II)錯体への光エネルギー集約” (東工大院理工・産総研・CREST/JST)○山本 洋平・小池 和秀・石谷 治



2008年10月1日
川崎雅司先生(川崎チーム、東北大原子分子材料科学高等研究機構)らの論文 "Transparent polymer Schottky contact for a high performance visible-blind ultraviolet photodiode based on ZnO" (透明なポリマーショットキー接触を利用した高性能な可視光不感ZnO紫外フォトダイオード)が Applied Physics Letters (08.9.24 On line公開)に掲載されました。また、その成果が08.9.24に プレス発表され、 科学新聞(08.10.03)と日刊工業新聞(08.10.06)に掲載されました。川崎先生らの成果は、特殊な高分子化合物が、 代表的な透明酸化物半導体であるZnOに対して、極めて良質なショットキー接合界面を形成することを利用して、 それらのショットキー接合型の紫外線センサーを作製し、波長250nmから400nmの紫外線領域でほぼ100%の光電変換率を持つという、 高性能な特性を実現することに成功したものです。なお、博士課程大学院生の中野匡規さんが、本研究成果に対して応用物理学会 講演奨励賞を受賞されました(08.09.02)。



2008年7月9日
組頭広志先生、尾嶋正治先生(尾嶋チーム、東大工学系研究科)らの成果に関する論文が Phys. Rev. Lett. 2008.7.11号に掲載されました。 尾嶋チームの成果は、通常の絶縁体である LaAlO3とSrTiO3の2つを接合させると生じるとされている界面金属伝導層の起源を放射光に よって解明したもので、従来界面近傍でのみ起こる酸化・還元反応であると考えられていた現象が、 実は長距離的な力で電子が界面に集まって出来る現象であることが分かりました。 つまり、極性をもつ酸化物をゲートに用いることにより素子に非常に大きい電界をかけることができ、 それによって絶縁体界面に流れる電流を大幅に制御出来ることを示しています。この様な現象は、 beyond CMOSの3端子素子や電界誘起抵抗変化不揮発メモリーなどに応用できるものと期待されます。



2008年6月11日
尾嶋チームの近松彰さんの論文「その場放射光光電子分光によるマンガン酸化物薄膜の 電子状態解明の研究〜新しい強相関エレクトロニクス素子開発をめざして〜」が 第22回独創性を拓く 先端技術大賞 ニッポン放送賞を受賞されました。 授賞式での写真を掲載しました。



2008年4月7日
藤田誠先生(藤田チーム、東大工学系研究科)らの成果に関する論文がJ. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 1578. および、J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 15418.に掲載されました(ハイライト記事:Nature, 2008, 451, 410)。 また、その成果が化学工業日報(08.4.7付)に紹介されました。藤田チームの成果は、細孔性単結晶化合物の 細孔を反応場として利用する技術を開発したものです。細孔の中には、アシル化剤やアルデヒドなどが単結晶性を 維持したまま浸透し、細孔内部にあらかじめ取り込んだゲストと反応します。単結晶ならではの特性を活かし、 結晶構造解析することで、反応で起こった構造変化の直接情報が得られことが最大の特徴です。従来は結晶化が 不可能であった不安定化合物も、細孔内でその場合成することで、結晶構造解析できるようになりました。 単結晶1個(0.1 mm角程度)を使って実験を行えるので、用いる試薬や反応で生じる廃棄物は痕跡量であるという利点もあります。



2008年3月27日
川崎雅司先生(川崎チーム、東北大WPI材料機構)が「コンビナトリアル格子工学によ る金属酸化物の電子機能開拓」で日本化学会第25回学術賞を受賞されました。本賞 は「化学の基礎または応用の分野で先導的・開拓的な研究業績を挙げた個人会員」を 顕彰するものです。授賞式は3月27日(木)に日本化学界第88春季年回(立教大学)で行われ、前日に受賞講演が行われました。



2008年2月27日
尾嶋正治先生(尾嶋チーム、東大工学系研究科)らの論文”Depth profiling of chemical states and charge density in HfSiON by photoemission spectroscopy using synchrotron radiation”がApplied Physics Letters(08.2.27 On line公開)に掲載されました。また、その成果が日刊工業新聞(08.2.18付)にも 紹介されました。(尾嶋チームの成果は放射光照射時間依存光電子分光法によって次世代LSI用高誘電率 ゲート絶縁膜中の欠陥を非接触で決定する手法を開発したもので、大きな注目を集めています。 現在開発中の3次元ナノESCA装置に応用することで、欠陥の面内分布を正確に決定できます。



2008年2月21日
尾嶋正治先生(尾嶋チーム、東大院工)が業績名「高輝度放射光を用いた半導体・磁性体の表面電子状態の研究」 に対して日本表面科学会第12回(平成19年度)学会賞 を受賞されることとなりました。本賞は、「表面科学の発展に、または、本学会の発展に、特に顕著な貢献があったと認められる個人会員」を 顕彰するものです。授賞式は2008年5月10日(土)に日本表面科学会総会(東京大学 山上会館)で行われる予定です。

→授賞式の写真を掲載しました。



2008年2月7日
北川チーム主催の第2回錯体プロトニクスとナノ界面に関する国際ワークショップが3月10日、11日、東京大学物性研究所(千葉県柏市)で開催されます。



2008年1月15日
堀場弘司先生(尾嶋チーム、東大院工)が 「軟X線・硬X線光電子分光による強相関化合物の電子状態の研究」で日本放射光学会の第12回学会奨励賞を受賞されました。本賞は、放射光研究において優れた業績を挙げた35歳未満の若手研究者に贈られるものです。2008年1月12日放射光学会第21回年会・合同シンポジウムにて授賞式および受賞講演が行われました。



2007年11月14日
大友明先生(川崎チーム、東北大金研)が 「原子レベル制御による酸化物界面の創製と物性開拓」でサー・マーチン・ウッド賞を受賞されました。本賞は、日本の研究機関において凝縮系科学(固体物理学、無機・有機固体化学、材料科学、表面物理など)において優れた業績を挙げた40歳以下の若手研究者に贈られます。11月14日(水)イギリス大使館にて授賞式が行われました。



2007年11月2日
尾嶋チームのメンバーである東京大学大学院工学系研究科修士学生谷村龍彦さんが6th International Symposium on Atomic Level Characterizations for New Materials and Devices '07 (金沢:10/28-11/2)においてStudent Awardsを受賞されました。内容は、放射光照射時間依存性を調べることでLSIゲート絶縁膜のバンドオフセット精密決定を実現し、また絶縁膜中欠陥密度の非接触決定法を開発されたものです。



2007年10月29日
尾嶋正治先生(尾嶋チーム、東大工学系研究科)らの論文”Magnetic domain sturucture of a technically patterned ferromagnetic La0.6Sr0.4MnO3 thin film”が Applied Physics Letters(07.10.29 On line公開) に掲載されました。また、その成果が日刊工業新聞(07.10.29付)にも紹介されました。尾嶋チームの成果はマンガン酸化物強磁性薄膜に微細加工した微小パターン中磁区構造を放射光光電子顕微鏡で解析し、次世代不揮発メモリー用磁区制御方法を提案されたものです。この論文の研究では川崎雅司先生(川崎チーム、東北大金研)も共同研究者の一人です。



2007年10月15日
川崎雅司先生(川崎チーム、東北大金研)が酸化亜鉛による新半導体機能発現に関する研究で第7回山崎貞一賞を受賞されることとなりました。本賞は、論文の発表、特許の取得、方法・技術の開発等を通じて、実用化につながる優れた創造的業績をあげている人を顕彰します。授賞式は2007年11月16日(金)に日本学士院(東京都台東区)で行われる予定です。



2007年9月19日
福村知昭先生(川崎チーム、東北大金研)が酸化物磁性半導体のコンビナトリアル探索と室温強磁性の発見でトムソンサイエンティフィックの Research Front Award 2007を受賞されました。日本で研究が進められている10の領域において最も活躍しているとして 17 名の科学者が選ばれました。各領域における功績と、その領域における影響度を評価する、 トムソンサイエンティフィックのリサーチフロント手法による分析の結果です。



2007年8月24日
尾嶋チームのメンバーである岡山大学大学院自然科学研究科岡崎宏之さんがYamada Conference LXI, 8th International Conference on Spectroscopies in Nobel Superconductors (Sendai, Japan, August 20-24, 2007)においてAward for poster presentationsを受賞されました。内容は、超伝導ダイヤモンドのバンド分散を高分解能で観測することにより、ダイヤモンドバンドが電気伝導性と超伝導性に直接関係していることを直接的に示したものです。



2007年7月4日
尾嶋チームの豊田智史さんの論文「放射光光電子分光によるゲート絶縁膜/シリコン界面の電子状態解析〜次世代ULSI用MOSFET素子開発の設計指針〜」が第21回独創性を拓く 先端技術大賞 ニッポン放送賞を受賞されました。 写真は高円宮妃殿下にポスターを説明される豊田さんと尾嶋先生です。



2007年7月3日
尾嶋正治先生(東京大学工学系研究科)らの論文 "Suppression of silicidation and crystallization by atmosphere controlled annealing for poly-crystalline silicon/HfO2/SiO2/Si gate stack structures"が Applied Physics Letters に掲載されました(Appl. Phys. Lett. 91, 012902 (2007))。また、その成果が日刊工業新聞(07.7.4付)にも紹介されました。




2007年6月26日
川崎雅司先生(川崎チーム、東北大金研)が、科学未来館、夏至の日の夜のトークショー「キャンドルナイト」に“あかり”のスペシャリストとして出演されました。 科学未来館のホームページに掲載されています。
URL : http://www.miraikan.jst.go.jp/j/event/2007/0622_plan_01.html




2007年3月9日
川崎雅司先生(川崎チーム、東北大金研)の論文”Quantum Hall Effect in Polar Oxide Heterostructures ”が Science 誌に掲載されました。(Science 9 March 2007:Vol. 315. no. 5817, pp. 1388 - 1391)。なお、 On line 版に公開されるのに先立ち、本成果についてのプレス発表が2007年1月23日に行われました。





2007年3月2日
川崎雅司先生(川崎チーム、東北大金研)が金属酸化物の精密エピタキシーと電子機能化に関する研究で2006年度日本学術振興会賞を受賞されました。授賞式は3月2日(金)に日本学士院で行われました。




2007年2月24日
北川チーム主催の国際ミニシンポジウム"First International Workshop on Protonics and Nano-Interface of Coordination Chemistry"が京都で開催されました。

プログラム(PDF16KB)
ポスター(PDF240KB)



2007年2月24日
日本放射光学会第20回年会・合同シンポジウムにおいて、尾嶋チームの谷内敏之さん(尾嶋研D3)が「光電子顕微鏡によるLa0.6Sr0.4MnO3ナノ構造の磁区構造直接観察」で学生会員口頭発表賞を、豊田智史さん(同D2)が「角度分解光電子分光による ゲートスタック構造の化学結合状態識別深さ方向分布の評価」で学生会員ポスタ ー発表賞をそれぞれ受賞されました。




2007年1月28日
北川進先生(北川宏チーム、京都大大学院工学研究科教授)の論文が Nature Materials に掲載されました。
A flexible interpenetrating coordination framework with a bimodal porous functionality.,Nature Materials 6, 142 - 148 (2007)
 
 
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