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平成21年11月23日

東京大学
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科学技術振興機構(JST)
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均一構造のナノシリカ粒子カプセル状分子の中で達成:画期的なナノ粒子合成法を開発

東京大学 大学院工学系研究科の藤田 誠 教授らは、自己組織化の手法によって合成したカプセル状分子の内側をテンプレートとして使うことにより、カプセル状分子の分子レベルで制御された構造の精密さを活かし、5ナノメートル以下のシリカナノ粒子を大きさ・形状にばらつきがないように厳密に合成することに成功しました。

近年、材料科学の分野においては、新規物性を開発し応用的展開を図るためには無機ナノ粒子の構造、つまり大きさや形状を、分子レベルで精密に制御することが最も重要な課題の1つです。このようなナノ粒子を作るためには、カプセルの中で合成反応を行うことが最も効率的な方法であることが分かってきています。しかし、これまでに知られているカプセルは、カプセルそのものの構造にばらつきがあったり、また、思うようにカプセルの構造を微調整することができなかったりと、設計した通りにナノ粒子を作れない問題がありました。

本研究グループは今回、12個の金属イオンと24個の糖類を連結した配位子から自己組織化によって作られた球状の配位錯体を、カプセル状構造を持つテンプレートとして用いることで、構造にばらつきがなく、高い単分散性を持つシリカナノ粒子を合成できることを明らかにしました。

本研究により、これまでは合成が極めて困難であった5ナノメートル以下の無機ナノ粒子を合成することが可能となり、ナノ粒子材料を合成する一般的かつ極めて有力な手法を確立することができました。実際に試した反応はテトラメトキシシランという原材料のゾルゲル反応で、シリカゲルと呼ばれる触媒担体や乾燥剤としてよく使われる無機材料が生成物として得られます(図1)。通常、この反応は溶液中で行われ、生成物の大きさや形状にはおおきなばらつきが生じます。この反応をカプセル状分子の中だけで行うために、原材料と親和性の高い糖類が内側に高密度に集積するように設計した球状の配位錯体を反応溶液に加えました。生成物を解析したところ、生成したシリカゲルは球状で、大きさや形状にはほとんどばらつきがなく、その指標として使われる多分散度は1.01以下という驚くべき結果が得られました。本手法を用いると、分子量では5千〜3万1千、直径では2〜4ナノメートルの範囲内で、ねらった通りのシリカゲルを精密に合成できることを見いだしました。

今回の手法をさまざまな無機ナノ粒子の合成反応に適用することで、今まで作ることが難しかった新しいナノ材料を設計してねらった通りに合成できる可能性があります。また、このような誰も作ったことのない分子レベルで構造制御された無機ナノ粒子を応用的に活用することで、新反応の開拓や新薬の創成、分子レベルでのマテリアル設計など多分野の発展に大いに貢献することが期待されます。

本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)の研究領域「ナノ界面技術の基盤構築」における研究課題「自己組織化有限ナノ界面の化学」(研究代表者:藤田 誠)の一環として行われました。

本研究成果は、2009年11月22日(英国時間)発行の英国科学雑誌「Nature Chemistry」本誌に掲載されます。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。

JST 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)

研究領域 「ナノ界面技術の基盤構築」(研究総括:新海 征治 崇城大学 教授)
研究課題名 「自己組織化有限ナノ界面の化学」
研究代表者 藤田 誠(東京大学 大学院工学系研究科 教授)
研究期間 平成19年10月〜平成24年3月

JSTはこの領域で、異種材料・異種物質状態間の接合界面を扱う研究分野の融合によってナノ界面機能に関する横断的な知識を獲得するとともに、これを基盤として界面ナノ構造を自在に制御し、飛躍的な高機能化を可能にする革新的なナノ界面技術を創出することを目的としています。上記研究課題では、独自技術をもって自己組織化構築される中空構造体の表面および内面で「有限系の界面化学」を展開し、新機能の創出や界面現象の解明を達成することを目標としています。

<研究の背景と経緯>

(背景)

合成化学は、我々の生活に必要なさまざまな物質・材料を創り出す上で欠かすことのできない工業の分野です。近年、ナノ科学とナノ技術の発展に伴い、ナノメートルの大きさを持つ物質を分子レベルで、極めて厳密に構造制御することで、従来得られなかった新しい機能・重要な性質が見いだされることが分かってきています。長い歴史を持つ無機材料の構造の厳密な制御には、多くの興味が持たれてきていますが、3次元的な立体構造を持つ無機ナノ粒子の、5ナノメートル以下の大きさでの構造制御は困難でした。

(経緯)

東京大学の藤田教授らは、自己組織化の原理を使って構築された、12個の金属イオンと24個の配位子から、分子レベルで構造が制御されたカプセル状構造を持つ球状の配位錯体の合成法を報告してきました。この配位錯体の内側や外側は、合成化学の手法によって化学修飾すると、自在にその性質を変えられることが分かってきています。本研究では、このカプセル状分子の内側をテンプレートとして用いたシリカナノ粒子の合成反応に取り組みました。反応の原料と親和性が高い糖類をカプセルの内側に高密度に配置することで、構造にばらつきがなく、1.01以下という高い単分散性を持つシリカナノ粒子を合成できることを明らかにしました。

<研究の内容>

  1. 1東京大学の藤田教授らは、カプセル状配位錯体の内部をテンプレートとして、分子レベルで構造制御した無機ナノ粒子の合成手法を開発しました。自己組織化という合成手法を使うことで厳密に制御された配位錯体の構造を、内部での反応生成物に厳密に転写することに成功しました。
  2. 2今回、シリカナノ粒子の合成を検討し、この方法では、従来法では作ることが難しかった5ナノメートル以下の大きさの粒子を、非常に均一な構造を持つ球状粒子として得ることができました。構造均一性の指標となる多分散度は、1.01以下という驚くべき結果が得られました。
  3. 3この手法により、分子量では5千〜3万1千、直径では2〜4ナノメートルの範囲内で、ねらった通りのシリカゲルを精密に合成できることを見いだしました。
  4. 4この手法は合成目的物質に合わせて、カプセル状錯体の内側の化学修飾を変えるだけで、同様に他の無機ナノ粒子の合成に応用できます。

<今後の展開>

  1. 1今回開発した手法を、他の反応に応用することを目指します。特に、これまで分子レベルでの構造制御が難しかった無機ナノ粒子である金属酸化物の合成反応への応用を目指します。
  2. 2得られた無機ナノ粒子は、これまで誰も作り得なかった構造均一性を持ち、また、大きな比表面積を持つため、触媒担体や吸着材料としての応用利用を目指します。

<参考図>

図1

図1 球状配位錯体2の中でのナノシリカ粒子の合成

球状の配位錯体2a-cは24個の配位子1a-cと12個のパラジウム(II)イオンとの自己組織化によってあらかじめ調製しました。テトラメトキシシラン(TMOS)を加えてゾルゲル反応を行うと、糖鎖を内側に化学修飾した錯体2aと2cの内部で球状のナノシリカ粒子を合成することができました。

<論文名>

“Template synthesis of precisely monodisperse silica nanoparticles within self-assembled organometallic spheres”
(自己集合性球状錯体の内部における単分散シリカナノ粒子の精密テンプレート合成)
doi: 10.1038/nchem.446

<お問い合わせ先>

<研究内容に関して>

藤田 誠(フジタ マコト)
東京大学 大学院工学系研究科 応用化学専攻 教授
〒113-8656 東京都文京区本郷7−3−1
Tel:03-5841-7259 Fax:03-5841-7257
E-mail:
http://fujitalab.t.u-tokyo.ac.jp/

<JSTの事業に関して>

廣田 勝巳(ヒロタ カツミ)
科学技術振興機構 イノベーション推進本部 研究領域総合運営部
〒102-0075 東京都千代田区三番町5 三番町ビル
Tel:03-3512-3524 Fax:03-3222-2064
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<報道担当>

東京大学 工学部 広報室
内田 麻理香(ウチダ マリカ)
Tel:03-5841-1790
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科学技術振興機構 広報ポータル部
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
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