JST科学技術振興機構  
トップページ
トピックス
研究総括
領域アドバイザー
研究課題・研究代表者
研究成果
お問い合わせ
 
 
 
新海 征治
崇城大学工学部 教授
九州大学 名誉教授
 物事を把握するときに,私は真正面から真正直に把えるようなやり方にはどうしても馴染めません。斜めから,下から,そして後ろから眺めて,真正面からは見えない“もの”の本質を探り出すのが好きです。イタリアなどで絵画や彫刻を観賞するときも,正面から観てそこに教科書に載っていた写真と同じ“もの”があるのを確認して満足するようなことはできません。それこそ,あらゆる角度から観察して製作者の意図を自分なりに理解しようと努めます。
 物質が形成する「相」は,大きく分類すると気相,液相,固相になりますが,材料設計に適した相ということになると,固相が圧倒的に有利です。すなわち,最近の戦略的研究目標のひとつである「イノベーション」化を達成するためには,気体および液体を「固体化」することが必要になってきます。このプロセスで重要な役割を演ずるのが界面であると考えることができます。本研究領域は、異種材料・異種物質状態間の界面をナノスケールの視点で扱う研究分野が集結することにより、ナノ界面機能に関する横断的な知識を獲得するとともに、これを基盤としたナノレベルでの理論解析や構造制御により飛躍的な高機能を有する革新的材料、デバイス、技術の創出を目指すものです。しかし,「ナノ界面」というキーワードを狭義に定義してしまうと,本研究領域がテーマを発展的に拡大再生産するような基地になるとは思えません。寧ろ,広義に定義して境界領域を積極的に取り込んだ方が,より生産的な結果に繋がると思います。
 一つめは、「界面」が持つイメージを マクロの見方で 「2次元的なもの」のみに限定しない方が良いということです。すなわち、本領域で対象とする界面は、一般的な材料間、物質状態間の2次元界面に限定せず、0次元(ナノ粒子、べシクル、細胞表面など)、1次元(ナノチューブ、分子集合型ナノファイバーなど)、ならびに3次元(多孔質結晶の空孔など)の超構造体が提供する界面あるいは表面も含めて考えた方が、予想外の展開につながる確率が高いでしょう。二つめは、用いる材料です。金属、粒子などのハードマテリアルは勿論ですが、高分子、分子集合体、ゲル、バイオ由来物質などのソフトマテリアルが新規界面の構築に利用されることを期待しています。無機−有機ハイブリッド材料にも大きなポテンシャルがありますし、また「“ゆらぎ”を持つ界面」なども設計できたら面白いかもしれません。
 最後に、私はまだ人生を達観したような哲人には成り切れていません。私自身が,発展途上の現役の研究者です。CREST研究者と同じ目線で物事を観察・討論して本領域をリードして行きたいと願っています。
 
copyright(c)