プログラム紹介

ムーンショット目標92050年までに、こころの安らぎや活力を増大することで、精神的に豊かで躍動的な社会を実現

研究開発プログラム概要

 近年、「こころ」に起因する社会問題はますます深刻化しています。個人から集団までにおいて、それぞれの「こころ」を総合的に理解し合い、思いやりのあるコミュニケーションを図り、互いに調和しながら自ら望む方向や、自ら進むべき方向に向かえるようになることが、精神的に豊かで躍動的な社会を実現していくための鍵となりえます。
 本研究開発プログラムでは、科学技術による「こころの安らぎや活力の増大」を目指して、「個々のこころの状態理解と状態遷移」及び「個人間・集団のコミュニケーション等におけるこころのサポート」を実現する技術の創出を目指した研究開発を推進していきます。

構想ディレクター(PD)

熊谷 誠慈京都大学 人と社会の未来研究院 准教授

【PDメッセージ】
 本目標では人々の「こころ」に安らぎと活力を届けるための、幸せのテクノロジーの実現を通じ精神的に豊かで躍動的な社会を目指します。目標実現に向けては、こころの機序を解明し、その成果を活かし、こころの状態を遷移する技術を社会に実装することが必要と考えます。自然科学と人文社会科学等との異分野融合による総合知の創出も含め研究開発を推進していきます。国内外の志ある方々の総力を結集しながら、PDとして目標達成に向けて挑戦をしていきたいと思います。
アドバイザー
井ノ口 馨 富山大学 学術研究部医学系 卓越教授
西田 眞也 京都大学 大学院情報学研究科 教授
森田 朗 次世代基盤政策研究所 代表理事
遠藤 薫 学習院大学 法学部 教授
苧阪 直行 京都大学 名誉教授
櫻井 武 筑波大学 医学医療系 教授
銅谷 賢治 沖縄科学技術大学院大学 神経計算ユニット 教授
永田 智也 D3 LLC マネージング・パートナー
林(高木) 朗子 理化学研究所 脳神経科学研究センター 多階層精神疾患研究チーム チームリーダー
堀 浩一 人間文化研究機構 理事
三浦 麻子 大阪大学 大学院人間科学研究科 教授
村井 俊哉 京都大学 大学院医学研究科 教授
横澤 一彦 筑波学院大学 経営情報学部 教授

*副構想ディレクター(サブPD)

研究開発プロジェクト

「研究開発プロジェクト名」「研究開発プロジェクトの概要」は、採択後の作り込み(提案した研究開発プロジェクトの見直しおよび具体化)を経て変更される場合があります。

仏教・機械・脳科学で実現する安らぎと慈しみの境地
プロジェクトマネージャー(PM) 今水 寛(株式会社国際電気通信基礎技術研究所 脳情報通信総合研究所 認知機構研究所 所長)
研究開発プロジェクト概要

仏教と脳科学の知見にもとづき、心の状態遷移を脳ダイナミクスの観点から解明、その応用を行います。大規模調査と小集団への詳細な調査を組みあわせた心の状態に関する個性のモデル化、脳ダイナミクスの遷移をリアルタイムで推定し、可視化する技術の開発、それらに裏打ちされた瞑想法の開発と社会実装を行います。これらを通して、自分自身と向き合うことで、安らぎと活力を増大し、他者への慈しみを持てる社会を実現します。

多様なこころを脳と身体性機能に基づいてつなぐ「自在ホンヤク機」の開発
プロジェクトマネージャー(PM) 筒井 健一郎(東北大学 大学院生命科学研究科 教授)
研究開発プロジェクト概要

さまざまな場⾯でコミュニケーションを⽀援する「⾃在ホンヤク機」を開発し、多様な⼈々を包摂する社会をもたらします。神経科学・分⼦⽣命科学と、VR/AR・ロボット⼯学の分野の研究者が協⼒して、こころの状態を定量化する技術を研究するとともに、知覚・認知や運動機能への介⼊法を研究します。これらの成果を融合して開発する「⾃在ホンヤク機」は、個⼈、個⼈間、あるいは、数⼈から数⼗⼈程度の⼩グループを対象としてコミュニケーション⽀援します。

データの分散管理によるこころの自由と価値の共創
プロジェクトマネージャー(PM) 橋田 浩一(理化学研究所 革新知能統合研究センター グループディレクター)
研究開発プロジェクト概要

中央集権AI(CAI)と注意経済(AE)がこころの自由と民主主義を脅かしパーソナルデータ(PD)による価値創造を阻害しています。個人のPDを本人のパーソナルAI (PAI)だけがフル活用する分散管理の方が付加価値が高いことを示しそれをPAIの民主的なガバナンスとともに普及させてCAIをPAIで置き換え、さらに情報の真正性の検証と多様な情報へのアクセスを容易にする共同作業支援ツールをPDの分散管理とともに広めることで、こころの自由を擁護し価値共創を促進します。

脳指標の個人間比較に基づく福祉と主体性の最大化
プロジェクトマネージャー(PM) 松元 健二(玉川大学 脳科学研究所 教授)
研究開発プロジェクト概要

社会状況に応じて「幸せ」は変化します。「幸せ」の異質な2要素、「福祉」と「主体性」を、社会科学的に追求、特定するとともに、仮想現実技術を用い、個々人の実感としての「効用」と「動機」へとそれぞれ還流します。そのために、それら「幸せ」の指標を、個々人が実感できかつ個人間比較可能な形で脳・神経活動から計測する確かな技術を実現・提供します。本プロジェクトは、人文・社会科学的なアプローチと自然科学的なアプローチとを統合することで、社会状況に応じた「幸せ」を常に更新しつつ、その向上と平等化が常に追求され続ける社会を実現します。

逆境の中でも前向きに生きられる社会の実現
プロジェクトマネージャー(PM) 山田 真希子(量子科学技術研究開発機構 量子医科学研究所 グループリーダー)
研究開発プロジェクト概要

逆境の中でも人々が「前向き」に生きられる社会の実現を目指し、個々人の「前向き」の程度を数値化して計測・調整する技術(前向き計測技術、前向き訓練技術、前向きアシスト技術)を開発するとともに、個々人のニーズに合わせた「前向き」をサポートできるように、「前向き」を支援する専門家(前向きトレーナー)の養成を提言するなど、「前向き」の社会支援実装に向けた環境を整備します。

Awareness Musicによる「こころの資本」イノベーション
プロジェクトマネージャー(PM) 山脇 成人(広島大学 脳・こころ・感性科学研究センター 特任教授)
研究開発プロジェクト概要

本プロジェクトでは、1)音楽や超知覚音の「自分や他者のこころへの気づき」促進効果の脳科学的根拠に基づくAwareness Musicの創発、2)ウエアラブル感性可視化装置を用いたAwareness Musicによる気づき促進技術、3)Neuro-Bio Feedbackによる癒し・感動・一体感などポジティブ感性の向上技術、4)共感を促進する感性コミュニケーション技術などを開発します。これらの技術を統合した「こころの資本」強化技術を社会実装し、2050年のメタバース時代に、個々人がこころ豊かに活躍し、相互理解と共感による平和社会の実現を目指します。

子どもの好奇心・個性を守り、躍動的な社会を実現する
プロジェクトマネージャー(PM) 菊知 充(金沢大学 医薬保健研究域医学系 教授)
研究開発プロジェクト概要

幼少期に自尊感情が著しく傷つけられるとレジリエンスが生涯にわたり低下します。これを防ぐことで、だれもが安心できる環境で、生来の好奇心を発揮しながら成長できる環境を実現します。それにより能動的意欲と独創性に満ちた社会を実現します。具体的には、個性の脳画像技術により子どもの脳の個性を客観化し、最適化された芸術活動による介入の効果を「見える化」し、自治体の「子どもの好奇心・個性を守る学校構想」と連携しながら社会実装していきます。

食の心理メカニズムを司る食嗜好性変容制御基盤の解明
プロジェクトマネージャー(PM) 喜田 聡(東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授)
研究開発プロジェクト概要

食は愉しみを通してこころを満足させます。一方、食習慣は食嗜好性によって形成され、経験依存的に変化します。時には食習慣は疾患の原因となりますが、健康重視の食習慣への改善は精神的苦痛となります。そこで、本プロジェクトでは食の観点から「こころの安らぎや活力を増大させる」ことを達成するため、齧歯類モデルを用いて食習慣形成のメカニズムを神経科学的に解明し、健康に優しい食を愉しんで食べる食習慣への改善技術を開発することに挑戦します。

こころの可視化と操作を可能にする脳科学的基盤開発
プロジェクトマネージャー(PM) 内匠 透(神戸大学 大学院医学研究科 教授)
研究開発プロジェクト概要

行動中マウスの脳機能ネットワーク動態を可視化するバーチャルリアリティ(VR)システムを開発することで、社会的環境において互いにコミュニケーションを行うマウスの「こころ」の状態を脳機能ネットワークの変化として定量化します。さらに、オプトジェネティクスによる脳機能ネットワーク光操作技術を開発し、マウスの「こころ」の状態変化を人為的に生じさせることで、脳機能ネットワークがどのように「こころ」の変化に対応し、行動を変化させるに至るかを明らかにします。

被虐待児、虐待加害、世代間連鎖ゼロ化社会
プロジェクトマネージャー(PM) 友田 明美(福井大学 子どものこころの発達研究センター センター長、教授)
研究開発プロジェクト概要

後々では取り返し難い「こころ健やかな幼少期を送ること」を、すべての人が享受できる被虐待ゼロ化社会を実現するブレイクスルー技術の社会実装を目標とします。そのために、子どもの被虐待状態、母親の虐待加害リスクを反映するエピゲノムパネルの開発・実用性検証を行います。また、加害母や保護された被虐待児への介入・新規治療標的の開拓を目的に、ロボットを介した遠隔育児支援の実用試験、こころと身体の乖離に関わる神経生物学的基盤の脆弱性解明を⾏います。

AIoTによる普遍的感情状態空間の構築とこころの好不調検知技術の開発
プロジェクトマネージャー(PM) 中村 亨(大阪大学 大学院基礎工学研究科 特任教授)
研究開発プロジェクト概要

本研究開発プロジェクトでは、IoT(Internet of Things)による日常生活下での生体情報計測とAI(Artificial Intelligence)技術の融合(AIoT)により、主観報告によらない動物種を超えた客観的かつ普遍的な感情状態空間(生体情報―感情状態マップ)の構築を目指します。さらには、感情状態空間内での状態遷移動態に基づき、ヒトの心身の不調や変調、あるいは幸福やウェルビーイングといった活力ある状態(好調)を検知・把握する技術の確立を目指します。

「私たちの子育て」を実現する代替親族制のための情報社会基盤の開発
プロジェクトマネージャー(PM) 細田 千尋(東北大学 大学院情報科学研究科 准教授)
研究開発プロジェクト概要

子育ての責任偏重は、子育て世代の精神機能の低下、女性の社会進出の停滞、高いストレスを持つ親元で育つ子どもの心の豊かさに影響を及ぼします。本プロジェクトでは、親と子どものこころの状態遷移を計測・共有し他者と共感的な関係性を生み出し維持する仕組みと、制度的な関係の相互保証を実現するブロックチェーンに基づく子育ての仕組み“代替親族制”を構築し、子育て世代と子どものこころの豊かさの実現を目指します。

楽観と悲観をめぐるセロトニン機序解明
プロジェクトマネージャー(PM) 宮崎 勝彦(沖縄科学技術大学院大学 神経計算ユニット シニアスタッフサイエンティスト)
研究開発プロジェクト概要

神経修飾物質の一つであるセロトニンは将来報酬のための辛抱強さを調節する役割があることが分かっています。本研究では同じ辛抱行動であってもその目的が「喜び」なのか、反対に「苦しみの回避」なのかによってセロトニン神経ネットワークにどのような違いが生じるか、行動課題中マウスの神経活動記録・操作から詳細に調べます。私たちが活力にあふれたこころで生きていく上で大切なことは何か?この謎の答えを神経活動から探索します。

関連情報

お問い合わせ

国立研究開発法人科学技術振興機構 ムーンショット型研究開発事業部
第二推進グループ ムーンショット目標9 担当

e-mail moonshot-goal9メールアドレスjst.go.jp