プログラム紹介

熊谷 誠慈PD 写真

ムーンショット目標92050年までに、こころの安らぎや活力を増大することで、精神的に豊かで躍動的な社会を実現

プログラムディレクター(PD)熊谷 誠慈京都大学 人と社会の未来研究院 教授

概要

 近年、「こころ」に起因する社会問題はますます深刻化しています。個人から集団までにおいて、それぞれの「こころ」を総合的に理解し合い、思いやりのあるコミュニケーションを図り、互いに調和しながら自ら望む方向や、自ら進むべき方向に向かえるようになることが、精神的に豊かで躍動的な社会を実現していくための鍵となりえます。
 本研究開発プログラムでは、科学技術による「こころの安らぎや活力の増大」を目指して、「個々のこころの状態理解と状態遷移」及び「個人間・集団のコミュニケーション等におけるこころのサポート」を実現する技術の創出を目指した研究開発を推進していきます。

イラストレーション

▽クリックで拡大できます

解説1 解説2
解説3 解説4

PDからのメッセージ

 本目標では人々の「こころ」に安らぎと活力を届けるための、幸せのテクノロジーの実現を通じ精神的に豊かで躍動的な社会を目指します。目標実現に向けては、こころの機序を解明し、その成果を活かし、こころの状態を遷移する技術を社会に実装することが必要と考えます。自然科学と人文社会科学等との異分野融合による総合知の創出も含め研究開発を推進していきます。国内外の志ある方々の総力を結集しながら、PDとして目標達成に向けて挑戦をしていきたいと思います。

研究開発プロジェクト

2021年度採択

プロジェクトマネージャー(PM) 今水 寛(株式会社国際電気通信基礎技術研究所 脳情報通信総合研究所 認知機構研究所 所長)
研究開発プロジェクト概要

仏教に代表される東洋の人間観と脳科学の知見にもとづき、こころの状態遷移を脳ダイナミクスの観点から解明、その応用を行います。大規模調査と小集団への詳細な調査を組みあわせたこころの状態に関する個性のモデル化、脳ダイナミクスの遷移をリアルタイムで推定し、可視化する技術の開発、それらに裏打ちされた瞑想法の開発と社会実装を行います。これらを通して、自分自身と向き合うことで、安らぎと活力を増大し、他者への慈しみを持てる社会を実現します。

プロジェクトマネージャー(PM) 筒井 健一郎(東北大学 大学院生命科学研究科 教授)
研究開発プロジェクト概要

さまざまな場面でコミュニケーションを支援する「自在ホンヤク機」を開発し、多様な人々を包摂する社会をもたらします。神経科学・分子生命科学と、VR/AR・ロボット工学の分野の研究者が協力して、こころの状態を定量化する技術を研究するとともに、知覚・認知や運動機能への介入法を研究します。これらの成果を融合して開発する「自在ホンヤク機」は、個人、個人間、あるいは、数人から数十人程度の小グループを対象としてコミュニケーション支援を行います。

プロジェクトマネージャー(PM) 橋田 浩一(理化学研究所 革新知能統合研究センター グループディレクター)
研究開発プロジェクト概要

中央集権AI(CAI)と注意経済がこころの自由と民主主義を脅かしパーソナルデータ(PD)による価値創造を阻害しています。 個人のPDを本人のパーソナルAI (PAI)だけがフル活用する分散管理の方が付加価値が高いことを示しそれをPAIの民主的なガバナンスとともに普及させてCAIをPAIで置き換え、また同じく分散管理に基づいて情報の真正性と多様な情報へのアクセスを確実にすることで、こころの自由を擁護し価値共創を促進し民主主義と経済パフォーマンスを同時に強化します。

プロジェクトマネージャー(PM) 松元 健二(玉川大学 脳科学研究所 教授)
研究開発プロジェクト概要

このプロジェクトは、「幸せ」の個人レベルでの向上だけでなく、その社会レベルでの集約や平等性の実現を目指しています。そのために、個人間で比較可能な「幸せ」の指標を脳活動から測定する革新的な技術を提供します。「幸せ」は、各人の生活を利する「福祉」だけでなく、人それぞれの生き方である「主体性」によっても高まります。これからの社会における「福祉」と「主体性」を、人文・社会科学的手法と仮想現実技術を用いて研究します。そして、その個人間比較を、個々人の実感としての「喜び」や「志」の脳指標を解明することで実現します。そうすることで、詳細な神経科学研究を、スマートシティにおけるモビリティ政策の評価など、実社会の活動へと橋渡しします。

プロジェクトマネージャー(PM) 山田 真希子(量子科学技術研究開発機構 量子医科学研究所 グループリーダー)
研究開発プロジェクト概要

逆境の中でも人々が「前向き」に生きられる社会の実現を目指すため、多様で多義的な「前向き」の構成要素を明確にし、身体姿勢および脳・生理反応の計測により前向き指標を算出し、前向き支援技術により個人の状況に合わせた前向き要素をアシスト・訓練・教育するための技術を確立します。

プロジェクトマネージャー(PM) 山脇 成人(広島大学 脳・こころ・感性科学研究センター 特任教授)
研究開発プロジェクト概要

1)音楽や超知覚音の「自分や他者のこころへの気づき」促進効果の脳科学的根拠に基づくAwareness Musicの創発、2)ウエアラブル感性可視化装置を用いたAwareness Musicによる気づき促進技術、3)Neuro-Bio Feedbackによる癒し・感動・一体感などポジティブ感性の向上技術、4)共感を促進する感性コミュニケーション技術などを開発します。これらの技術を統合した「こころの資本」強化の革新的技術を社会実装し、分野融合型研究(総合知科学)による新リベラルアーツの創出とともに、2050年のメタバース時代において個々人がこころ豊かに活躍できる、相互理解と共感に満ちた平和社会の実現を目指します。

プロジェクトマネージャー(PM) 菊知 充(金沢大学 医薬保健研究域医学系 教授)
研究開発プロジェクト概要

幼少期に自尊感情が著しく傷つけられるとレジリエンスが生涯にわたり低下します。これを防ぐことで、だれもが安心できる環境で、生来の好奇心を発揮しながら成長できる環境を実現します。それにより能動的意欲と独創性に満ちた社会を実現します。具体的には、個性の脳画像技術により子どもの脳の個性を客観化し、最適化された芸術活動による介入の効果を「見える化」し、自治体の「子どもの好奇心・個性を守る学校構想」と連携しながら社会実装していきます。

プロジェクトマネージャー(PM) 喜田 聡(東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授)
研究開発プロジェクト概要

食は愉しみを通してこころを満足させます。一方、食習慣は食嗜好性によって形作られ、食経験によって変化します。食習慣は疾患の原因となりますが、健康重視の食習慣への改善は精神的苦痛となります。そこで、本プロジェクトでは食の観点から「こころの安らぎや活力を増大させる」ことを達成するため、齧歯類モデルを用いて、食の嗜好性によって快情動や共感がもたらされるメカニズムを脳科学的に解明し、健康に優しい食を愉しんで食べる食習慣への改善技術を開発することに挑戦します。

プロジェクトマネージャー(PM) 内匠 透(神戸大学 大学院医学研究科 教授)
研究開発プロジェクト概要

行動中マウスの脳機能ネットワーク動態を可視化するバーチャルリアリティ(VR)システムを開発することで、社会的環境において互いにコミュニケーションを行うマウスの「こころ」の状態を脳機能ネットワークの変化として定量化します。さらに、オプトジェネティクスによる脳機能ネットワーク光操作技術を開発し、マウスの「こころ」の状態変化を人為的に生じさせることで、脳機能ネットワークがどのように「こころ」の変化に対応し、行動を変化させるに至るかを明らかにします。脳の直接的操作が可能なマウスの研究により、人のこころの機序を解明するための基盤技術を創出します。

プロジェクトマネージャー(PM) 中村 亨(大阪大学 データビリティフロンティア機構 特任教授)
研究開発プロジェクト概要

本研究開発プロジェクトでは、IoT(Internet of Things)による日常生活下での生体情報計測とAI(Artificial Intelligence)技術の融合(AIoT)により、主観報告によらない動物種を超えた客観的かつ普遍的な感情状態空間(生体情報―感情状態マップ)の構築を目指します。さらには、感情状態空間内での状態遷移動態に基づき、ヒトの心身の不調や変調、あるいは幸福やウェルビーイングといった活力ある状態(好調)を検知・把握する技術の確立を目指します。

プロジェクトマネージャー(PM) 細田 千尋(東北大学 大学院情報科学研究科 准教授)
研究開発プロジェクト概要

本研究開発プロジェクトでは、「子育て」の場に、多様な人々が柔軟かつ責任をもって関わることができる仕組みの要件を明らかにし 、これをChild Care Commons として提案します。この仕組みのもとで、社会全体で「子育て」を行う社会の実現を目指します。主養育者に責任や負担が偏りうる「わたしの子育て」に対し、社会全体で取り組む子育て(「わたしたちの子育て」)が実現されることで、親(養育者)・養育される子ども・育児参画をする非血縁者という3つの立場の人々のこころの安らぎや活力を増大させ、それぞれがやりがいを感じ、多様な人が活躍できる社会を目指します。

プロジェクトマネージャー(PM) 宮崎 勝彦(沖縄科学技術大学院大学 神経計算ユニット シニアスタッフサイエンティスト)
研究開発プロジェクト概要

神経修飾物質の一つであるセロトニンは将来報酬のための辛抱強さを調節する役割があることが分かっています。私たちはセロトニンが目標達成に向けた「楽観・悲観」を調節する働きをしていると考え、本研究では同じ辛抱行動であってもその目的が「喜び」なのか、反対に「苦しみの回避」なのかによってセロトニン神経ネットワークにどのような違いが生じるか、行動課題中マウスの神経活動記録・操作から詳細に調べます。辛抱強さの糧となる楽観、諦めにつながる悲観、これらが生まれる神経メカニズムを明らかにすることで、誰もがみな、自分自身で「人生の困難を乗り越える力」と「こころの活力」を高められる社会の実現を目指します。

2023年度採択

プロジェクトマネージャー(PM) 篠田 裕之(東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授)
研究開発プロジェクト概要

本プロジェクトでは、非接触で多様な触感を再現できる触感再現技術によって、こころの状態を改善する技術を開発します。触覚パートナー、すなわちパートナーとなるAIが、視聴覚に加えて触覚を様々な身体部位に生成し、感情に働きかけます。安らぎや覚醒と強く結びついた触覚によって子どものこころを安定させるとともに、望ましいこころの反応を体得するのを助けます。それぞれの子どもの好みや状況に応じて触覚パートナーの外見や触感も変化し、一人ひとりにとって最適なパートナーとなって子どものこころを導きます。

プロジェクトマネージャー(PM) 菱本 明豊(神戸大学 大学院医学研究科 教授)
研究開発プロジェクト概要

私たちが独自に見出した若年自殺者エピゲノム異常の先進的知見と新規の脳内AMPA受容体認識技術を基盤に、①子どもの被虐待や自殺リスクを予測するバイオマーカーの開発、②被虐待・自殺傾性におけるエピゲノム・遺伝子発現・AMPA受容体の異常を明らかにします。それにより、子ども自身での表出が難しい被虐待・自殺リスクの可視化と、被虐待?さらにはそれが自殺リスクにまでつながる情動不安定性の生物学的基盤の解明および解明した基盤に基づいた新規治療標的の同定を目指し、子どもの虐待・自殺がゼロになる社会の実現に貢献したいと考えます。

終了

被虐待児、虐待加害、世代間連鎖ゼロ化社会
プロジェクトマネージャー(PM) 友田 明美(福井大学 子どものこころの発達研究センター センター長、教授)
研究開発プロジェクト概要

後々では取り返し難い「こころ健やかな幼少期を送ること」を、すべての人が享受できる被虐待ゼロ化社会を実現するブレイクスルー技術の社会実装を目標とします。そのために、子どもの被虐待状態や発達、母親の虐待加害リスクを反映するエピゲノムパネル、脳画像モデルの開発・実用性検証を行います。また、3歳までの発達や環境の影響を反映する標準的なエピゲノム変化モデルを確立し、縦断型のエピゲノムパネルの開発を行います。加害母や保護された被虐待児への介入を目的に、ロボットを介した遠隔育児支援の臨床試験を行います。

アドバイザー

クリックしてアドバイザーのリストを見る

井ノ口 馨 富山大学 学術研究部医学系 卓越教授
西田 眞也 京都大学 大学院情報学研究科 教授
森田 朗 東京大学 名誉教授
遠藤 薫 学習院大学 名誉教授
苧阪 直行 京都大学 名誉教授
櫻井 武 筑波大学 医学医療系 教授
銅谷 賢治 沖縄科学技術大学院大学 神経計算ユニット 教授
永田 智也 D3合同会社 マネージング・パートナー
林(高木) 朗子 理化学研究所 脳神経科学研究センター 多階層精神疾患研究チーム チームリーダー
堀 浩一 人間文化研究機構 理事
三浦 麻子 大阪大学 大学院人間科学研究科 教授
村井 俊哉 京都大学 大学院医学研究科 教授
横澤 一彦 筑波学院大学 経営情報学部 教授

*副構想ディレクター(サブPD)

関連情報

お問い合わせ

国立研究開発法人科学技術振興機構 ムーンショット型研究開発事業部 目標9 担当

e-mail moonshot-goal9メールアドレスjst.go.jp