JSTトップ > 地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS) > 成果発信 >

メキシコ沿岸部の海底観測網の整備と防災教育で津波被害を予防

メキシコ沿岸部の海底観測網の整備と防災教育で津波被害を予防

研究分野/領域
防災

研究の背景は?

イメージ

 メキシコは日本と同様に地震多発国として知られています。メキシコ太平洋沿岸部はココスプレートの沈み込み帯に位置し、大規模な地震によって過去250年間にわたり多くの津波被害を受けてきました。一方で、ゲレロ州沿岸北部では過去100年間地震が発生していません。その理由として、数年間隔で繰り返しスロースリップ(ゆっくり地震)が発生し、プレート間のゆがみの一部が地震動を伴わずに解消されていることが明らかになっていました。ただ、全てのゆがみが解消されているわけではなく、ゆがみが徐々に蓄積し、近い将来巨大地震を引き起こす可能性が高いことが示されていました。
 一方、将来の巨大地震の可能性を評価したくても、メキシコにおける地震観測は陸上での測地観測が主体で海底観測は実施されていませんでした。また、津波に対する備えや対策が不足している状態でした。
 そこで、本プロジェクトはゲレロ地震空白域を対象とし、将来発生しうる巨大地震の大きさを評価し、巨大地震と津波の災害シナリオや減災教育プログラムを開発することを目指しました。

メキシコは日本から約10,000 km離れていて、日本から行くと約13時間かかります。

研究代表者は?

伊藤喜宏
日本

伊藤 喜宏

京都大学 防災研究所 准教授

ビクターマニュエルクルーズアティエンサ
メキシコ

ビクター マニュエル クルーズ アティエンサ

メキシコ国立自治大学 地球物理学研究所 教授

何ができたかな?

メキシコに海底観測技術を導入し、海底観測網を整備しました!

 メキシコにおける地震観測は陸上での測地観測が主体でしたが、メキシコ国立自治大学等と共同で、メキシコ太平洋沿岸部のゲレロ州にあるゲレロ地震空白域周辺の陸上及び海底にGNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)と地震観測網を導入しました。

海底観測機材の海底への投入

海底観測機材の海底への投入

日本は地震観測において最先端の知見と技術をもっているんだ。

スロースリップと巨大地震との相互作用におけるプレート間固着について解明しました!

 陸上及び海底の地震観測網によって得られたデータを解析し、メキシコで2017年~2019年に発生した3つの大地震とスロースリップの関連性を解明しました。スロースリップとは、通常の地震に比べて遅い断層すべり速度でゆがみを解放する現象です。この地震空白域は周辺と比べてプレート間の固着が弱い、つまりプレートとプレートの境界部分の付着が弱いために、プレートがプレートの下にスムーズに沈み込んでゆがみがたまりにくく、ゆっくりとした地震が発生します。
 さらに本プロジェクトは、ゲレロ地震空白域で初めてこのゆっくり地震の発生を検出しました。ゲレロ地震空白域で過去100年近く大地震が発生していないのは、ゆっくり地震によってゆがみを解消しているためであって、100年分のゆがみがたまっている訳ではないことが分かりました。

地震空白域は地震・津波災害を特に警戒すべき場所として注目されていたけれど、これまで海底に地震観測網がなかったため、状況が明らかではなかったんだね。
ゆがみが解消されているとはいえ、ゆっくり地震が大地震を引き起こすこともあるから、引き続き地震・津波防災に向けた対策は必要です。

ハザードリスクマップを作成・検証し、減災教育プログラムを確立しました!

 ゲレロ地震空白域での最新の観測データから、地震・津波シナリオを作成しました。また、現地の社会・経済・文化的背景を基盤に据えた減災教育プログラムを確立し、現地の防災局と連携しながら日頃の備えを地域全体に浸透させました。

津波避難訓練に取り組む子どもたち

津波避難訓練に取り組む子どもたち

今後はどうなるの?

本プロジェクトの成果はメキシコ国内での評価が高く、今後も活用される見込みです。津波減災教育プログラムについては、メキシコ国内の他地域や中南米・カリブ地域等の他国への展開に向けて動きはじめています。プロジェクトは2022年度に終了しましたが、今後も共同研究は続いていきます。

船上での観測機材の準備

船上での観測機材の準備

プロジェクトの詳細は課題ページをご覧ください。
研究課題の概要や実施風景、報告書などがご覧になれます。

防災

メキシコ合衆国

ページ
TOPへ
ページトップへ