研究分野/領域
防災
2011年3月、東北関東大震災は日本列島に甚大なダメージを与えました。いつどこで地震や津波が発生するのか、自然災害である以上確実に予測するのは難しいのが現実です。とはいえ最大限の予測、被害防止に努めることが何よりも大切だと、今回の震災を通じて改めて感じます。そのために、個々人が災害対策に対してアンテナを張ると共に、専門家による地盤構造や海底地形の分析、耐震建築などの技術面での研究は欠かせません。遠く地球の裏側の国ペルーは日本と同じように大陸プレートの下に海洋プレートが沈み込んでいる「プレート境界地域」(注釈1)にあるため、過去に何度も地震や津波の被害を被ってきました。2007年にはマグニチュード(以下M)7.9(阪神淡路大震災はM7.3 )の大地震がペルー南部のピスコを襲い、多くの家屋が損壊、被災者8万人以上、死者500人以上となる大災害となりました。ペルーでは、地震・津波対策の必要性が高まっています。
注釈1:2つ以上のプレート同士がせめぎ合い、地盤の面がずれる断層運動によって大地震が発生します。(発生しやすい場所は、ペルー、日本、チリ、メキシコ、フィリピン、インドネシア、パプアニューギニア、ソロモン諸島、フィジー、ニュージーランドなど沖合や海岸付近)
日本側研究代表者名:山崎 文雄
千葉大学大学院工学研究科教授
東京大学工学部土木工学科卒業。その後、東京大学大学院工学系研究科工学修士を修了し、清水建設株式会社、東京大学工学博士(論文)、東京大学生産技術研究所助教授、アジア工科大学院教授を経て、現職に。専門分野は都市システム安全工学、地震工学など。
日本国側の視点
今回の大震災をはじめ、過去何度も地震や津波の被害を被っている日本では、優れた防災技術を持っています。この技術を利用して、日本のみならず世界中で起きている地震被害の減少への貢献を目指します。
日本と同じように、「プレート境界地域」にあるペルーの事例を研究することは、日本の地震・津波減災技術の向上にも大きく貢献します。
ペルー側研究代表者名:Carlos Zavala
ペルー国立工科大学教授
CISMID(日本・ペルー地震防災センター)所長
ペルー国立工科大学卒業。その後、東京大学大学院の博士課程を修了し、ペルー国立工科大学の准教授を経て、CISMID所長に就任。
相手国側の視点
ペルーやその隣接国のチリでは過去何度も大地震の被害を被っており、2007年のペルー地震、2010年のチリ地震と、大地震の発生が相次いでいます。これにより、政治家から国民まで、災害への社会的な関心が高まり、耐震技術の向上や地震予測といった減災技術が求められています。
日本の持つ技術を利用し、ペルーの減災への貢献を目指すとともに、本研究を、日本の耐震技術の向上のみならず、同じ地震の発生しやすいプレート構造を持つ国において役立てることができる、国際共同研究プロジェクトです。具体的には、以下のようになっています。
注釈2:この部分の研究が進めば、「この斜面の地盤は非常に固いので震度5強ぐらいまでの地震がおきてもまず大丈夫。それに比べてこっちの斜面は地盤が軟らかいので震度4ぐらいでも危ないので家を建てちゃだめ。」といったことが測定可能になります。
山崎先生
ペルーを含む南米諸国では、M7以上の大地震が頻発しています。
1970年のペルー大地震(M=7.7、死者約7万人)をはじめ、最近では2001年にM8を超す大地震が発生、2007年にはピスコという都市が大きな被害をうけました。ピスコ地震では1~3メートルの津波も発生しており、地震による死者は500人以上、負傷者1万5千人、倒壊家屋4万戸以上という大きな被害を出し、家を失った被災者は8万人を超えると推定されています。
山崎先生
過去の大地震の影響によって、社会的要請が高まったということに加え、日系移民が多く、古くから日本と交友関係がある国だからです。
山崎先生
地震の事例研究は多くのデータを要します。そのため、一国だけで研究を行うのではなく、同じ地震発生システムをもつ複数の国で行うことで、日本のみならず、多くの国の予測技術や災害予防の向上に貢献します。また、現地観測や構造実験を共同で実施することにより、人材育成や技術移転による今後の自発的な研究に貢献します。
山崎先生
研究によって得られた知識や経験を活用・普及させていくためには、研究実施中から企業や一般市民を何らかの形で巻き込むことが望まれます。しかし、国民の関心が高まりつつあるとはいえ、実際にはまだまだそれが難しく、防災に対する意識向上や官・民がパートナーシップを組むための工夫などを考える必要性を感じています。
山崎先生
研究を通じて、研究者とペルー防災行政関係者が力強いパートナーシップと情報共有を行い、ペルーにおいて地震・津波の防災研究を進める自立的な組織を構築してまいります。そして、プロジェクト終了後もそれをしっかりフォローアップをします。また、得られた研究成果を中南米を中心とするアジア太平洋地域に対し、研修などを通して移転・普及させたいと考えています。
ペルーは乾燥しているので建物もなかなか風化しないんだよ。だからナスカの地上絵もあんなに長く残っているんだね!