2026年7月17日

第346回「光データ通信技術の革新」

大規模なデータセンター(DC)では、AI(人工知能)の学習などで大量のデータ処理や計算が求められている。しかし、演算を行うプロセッサーとメモリー間、サーバー間でのデータ通信がボトルネックであり、これを克服しDCの規模を拡大するためには、高速・大容量のデータ通信が可能な光データ通信技術の革新が重要である。

4階層への対応
このボトルネックの要因は、従来の電気配線技術によるデータ通信の高速化が、伝送損失や発熱の増大により限界を迎えている点にある。その解消には光技術が不可欠であるが、これまで長距離の光通信で培われた技術を転用するだけでは不十分だ。

DC内での実装には、機器の小型化や集積化などの新たな技術が必要であり、光データ通信技術を構成する四つの技術階層において課題への対応が求められる。例えば、DCネットワークアーキテクチャー(基本設計)では新たなAIモデルへの対応、電気信号と光信号を変換する光モジュール技術では高い信頼性や容易なメンテナンス、各種の光デバイスでは小型化や高密度化、材料・集積技術では優れた光学特性を持つ新材料の利用や異なる材料のデバイスを集積する技術などが求められる。これらの課題に関しては、世界中で研究開発が活発化している。

優位性保持を
今後のDCでは、AIエージェントなど新たなサービスが提供され、内部のネットワーク構成や必要となる光モジュール、光デバイスの機能・性能も多様化するだろう。

現状のDCのビジネスは米国の巨大IT企業が先導しており、そのエコシステムの中で、わが国は高速光デバイスの研究開発やビジネスで優位性がある。シリコン材料で光回路を形成し、低速ではあるが小型化・集積化に優れるシリコンフォトニクス技術では、欧米や台湾などが一歩リードしているが、高速性に優れるリン化インジウム(InP)系の技術ではわが国がトップである。

わが国としては、今後もビジネスや研究開発で弱みを克服し優位性を保持していくことが重要である。各技術階層の研究者・技術者が協力して将来のDCの方向性や技術課題を考えて共有し、産学が連携した研究開発の推進が期待される。これにより光データ通信技術の中核となる強い技術を創出し、その強みを生かして海外連携や人材育成につなげられれば、世界の光データ通信関連のエコシステムの中で、わが国はビジネス・研究開発・人材において存在感を示していけるだろう。

※本記事は 日刊工業新聞2026年7月17日号に掲載されたものです。

<執筆者>
馬場 寿夫 CRDSフェロー(ナノテクノロジー・材料ユニット)

電気通信大学大学院電気通信学研究科応用電子工学専攻修士課程修了。電機メーカー、内閣府総合科学技術会議事務局(ナノテクノロジー・材料/ものづくり技術担当)を経て、12年から現職。博士(工学)。

<日刊工業新聞 電子版>
科学技術の潮流(346)光データ通信技術の革新(外部リンク)