未来のAI計算システムを支える光データ通信技術 ~ネットワークアーキテクチャーから光デバイス材料まで~
エグゼクティブサマリー
本プロポーザルは、人工知能(AI)活用が増大する今後のデータセンター(DC)におけるデータ処理・AI計算処理のボトルネックとなるデータ通信に対し、通信速度・電力効率などを増大させるための光データ通信技術に関する研究開発戦略である。
最近のAI技術の急速な進展に伴いDCの処理能力の拡大・大規模化が進んでいるが、DCが膨大な電力を必要とすることから、電力供給、水資源、立地選定などの社会的な課題や、スケーラビリティ(システムの拡張性)、電力効率、セキュリティなどの技術的な課題も顕在化している。その中でも、将来の大きな技術的課題として、スケーラビリティに関するDC内のデータ通信ネットワークの高速・大容量化がある。これは、生成AIなどの登場により膨大な計算処理が必要となり、多量のGPU(Graphics Processing Unit)やサーバーを相互接続して並列処理を行う際に、このネットワーク性能がDCの処理能力向上のボトルネックとなっているためである。
このボトルネック解消は、従来の電気配線技術では困難であり、光データ通信技術の導入が不可欠である。しかし、これまで長距離の光通信で使われてきた技術の単なる延長では、将来のDCを実現することはできない。ネットワークアーキテクチャー、光モジュール、光デバイス、材料・集積化技術などのDC内の光データ通信技術を構成する各技術レイヤーにおいての各技術課題を克服する必要がある。
これらの課題克服に関しては世界的に研究開発が活発化している。現状、わが国はインジウムリン(InP)系の高速光デバイス・材料の研究開発および関連ビジネスにおいて優位性がある。しかし、集積化に優れるシリコンフォトニクス技術を用いた低速の光デバイスや光データ通信モジュール技術では、欧米や台湾の後塵を拝している。今後も日本がこの分野で優位性を保持・拡大するためには、DCの新たな要求や課題に対して世界に先駆けて長期的な研究開発の課題を明らかにし、戦略的な研究開発を推進すべきである。
具体的な研究開発課題としては、ネットワークアーキテクチャー、光モジュール、光デバイス、材料・集積化の4つの技術領域(技術レイヤー)に分けて整理している。ネットワークアーキテクチャーでは、コンポーネントの革新を生かしたアーキテクチャー設計に加え、さまざまなサービスや運用などの要件へのフレキシブルな対応、DC内外領域接続における分散処理やリアルタイム処理などへの対応がある。光モジュールでは、データ送受信先を切り替えるスイッチの小型化・高密度化、光インターポーザー、光チップレット、種々の短距離光通信方式の評価などがある。光デバイスでは、半導体レーザー、光変調器、導波路などの高速化・高効率化・小型化・低コスト化・高信頼化、飛躍的な性能向上が期待できる新たな概念・機能の創出などがある。材料・集積技術では、新たな光デバイスの創出に向け、既存の材料とは異なる組成や物性を有する材料の創出、異なる材料系のデバイスを集積するための異種材料集積技術開発がある。
上記の研究開発を効率的に進めていくために、長期的な視野を持ち、多様な研究者によるコミュニティ形成、産学官連携コンソーシアムによるロードマップ作成、技術レイヤー間連携の新規プロジェクトの推進、大規模拠点・共用施設の活用、日本の強みを活かした海外連携、人材育成の促進を提案している。
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