第345回「研究設備の活用促進カギ」
迅速なアクセス
少子高齢化・人口減少や生成AI(人工知能)の発展、地政学リスクの高まりなどを背景として科学技術・イノベーションの重要性があらためて認識され、科学の再興が課題として指摘されている。この実現のため研究者が研究に専念できる十分な研究環境を整えることは重要である。しかし、わが国では特に若手研究者が迅速かつ十分に研究体制を整えることは難しい。諸外国では研究環境の充実に向けた多様な取り組みがあり、参考になる国の一つが韓国である。
韓国では若手を含む幅広い研究者が、自身の研究室で先端設備などの研究インフラを所有していなくとも迅速にそれらにアクセスできる仕組みがある。2015年に導入された研究設備活用ポータルサイト(ZEUS)は、国の研究開発事業を通じて購入した3000万ウォン(約300万円)以上の研究設備・機器の情報や稼働状況などが一元的に登録されている。26年1月時点で登録されている機器は9万9753点に上り、研究者は登録機器の一部をオンライン検索し利用できる。
ZEUSの仕組みを運営しその活用を促進しているのが、日本の文部科学省に相当する科学技術情報通信部傘下の国家研究施設・設備振興センター(NFEC)である。NFECは11年から毎年、研究機関などを対象とした実態調査も行い、各機関のZEUSへの登録状況や管理体制の調査結果を公表し改善策を講じている。
また、NFECは複数の機関で必要以上に研究設備・機器の購入が重複しないよう、ZEUSによる申請と厳格な事前審査の仕組みを運用している。さらに、活用が低調な設備などについては機関内の再配置やZEUSを通じた譲渡なども促進している。公的な研究開発事業を通じた研究設備・機器の購入や活用においてZEUSの仕組みとNFECの支援が重要なカギとなっている。
新事業の開始
日本でも、26年4月開始の第7期科学技術・イノベーション基本計画において、優れた研究設備・機器を最大限に活用できる仕組みを構築すべく、わが国の大学などにおける研究基盤を刷新することが打ち出された。この一環として、文科省とJSTが先端研究基盤刷新事業(EPOCH)を開始した。向こう10年間で、先端的な研究設備・機器の整備・共用・高度化を掲げている。
韓国の取り組みは一例だが、諸外国のさまざまな工夫も参考に、日本の研究環境の充実に向けたさらなる進展が求められている。

※本記事は 日刊工業新聞2026年7月10日号に掲載されたものです。
<執筆者>
川澤 良子 CRDSフェロー(横断・融合グループ)
早稲田大学大学院商学研究科修了。修士(商学)。民間シンクタンクの研究員、内閣府への出向などを経て、24年4月から現職。研究基盤・研究インフラやイノベーション促進型公共調達などについての調査を担当。
<日刊工業新聞 電子版>
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