2026年3月
CRDS-FY2025-XR-12
研究基盤・研究インフラの海外政策動向(欧州、米国、韓国)
エグゼクティブサマリー
科学技術・イノベーションエコシステムを形成し機能させる上での課題は多岐にわたるが、そのひとつが研究基盤・研究インフラのうちの研究機器・装置(以下、研究機器)である。
近年、AIやロボットを活用した研究が進展する中で、科学研究の成果創出と研究開発のスピードを支える要素として、先端設備・機器と計算・データ基盤の重要性が高まっている。研究機器は、新たな科学データを創出する基盤であり、研究成果の創出や研究開発の加速において重要な役割を担っている。
一方で、わが国では多くの分野で研究機器の海外依存が指摘されており、研究機器の開発環境や仕組みも限定的である。また、機器共用は進展してきたものの、技術開発から導入・普及までを共用の場と結びつける取り組みなど、研究機器の開発と共用を一体的に捉える政策的枠組みについては、諸外国の動向を踏まえた検討が求められる。
本報告書では、わが国における研究基盤・研究インフラ政策を検討する上での参考として、欧州連合(EU)、米国、韓国における研究基盤・研究インフラ政策の動向について、研究機器の「開発」と「共用」に着目して整理した。
主要各地域・国の動向まとめ
- EU:研究インフラ政策の中核として、ESFRI(European Strategy Forum on Research Infrastructures)が10~20年先を見据えた研究インフラロードマップを策定し、各国はこれを参考に研究インフラ整備を進めている。整備された研究インフラの多くは、ERIC(European Research Infrastructure Consortium)の枠組みの下で国際共同運営が行われている。また、研究データ基盤としてEOSC(European Open Science Cloud)の整備が進められている。研究機器の開発と共用を循環させる制度設計が特徴である。
- 米国:研究機器・研究施設の整備は、NSF、DOE、NIHなど複数の連邦機関が担っている。NSFでは研究機器・研究設備の整備を支援する複数のファンディングプログラムを実施しており、研究者が最先端の研究ツールにアクセスできる環境整備を進めている。DOEは国立研究所を中心に大型研究施設を整備・運営している。研究インフラの設計、開発、導入、運用といった段階ごとに支援制度が整備されている点が特徴である。
- 韓国:科学技術基本法に基づく中長期計画の下で研究施設・設備の管理指針が整備され、科学技術情報通信部(MSIT)傘下のNFEC(National Research Facilities & Equipment Center)が政府横断的に研究設備の共用を推進している。設備導入時の事前審査制度や設備の共用・リユース制度、コアファシリティ事業などにより研究設備の効率的な活用を制度的に支援している。また、研究データの公開・共有を目的とするDataON platformの整備も進められている。
また、いずれの地域・国においても、研究機器と計算・データ基盤を研究インフラの両輪として整備する取り組みが進められている。
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