2023年4月14日

第191回「研究現場に新たな動き」

裾野広げる
日本の大学などの研究現場を活気づけるような、新たな活動が生まれている。研究開発を盛り上げたい、研究者を応援したい、という思いから、従来の研究開発のエコシステムを拡張しようと試みる組織や人々の活動である(図)。資金・研究機器・人材・制度・慣習など、研究活動を持続的に推進する「研究開発エコシステム」の拡張が、研究活動の裾野を広げている。

例えば、インターネットを介して資金を募るクラウドファンディングがある。研究者にとって、従来の公的研究予算や企業からの共同研究費などとは異なる新たな研究資金獲得の手段である。同時に支援者には、大学や研究者から研究の進展や成果を直接聴くことなどを通じた、専門家とのコミュニケーションの機会を生み出している。

国内では他にも、実験機器などの設備・研究環境の充実を支援する事業などが登場している。近年高額化している研究機器をリユースしたり、シェアリングしたりするサービスである。工夫やアイデアによって、厳しい財政状況にある大学の研究環境を支え、先端研究の成果創出につなげている。

欧米では、オープンデータ運動や、資産家による民間研究所や財団の設立などが進んでいる。これらはあくまで一例であり、多様に広がる研究開発エコシステムの拡張に向けた活動は、近年国際的にも盛り上がりを見せている。

発展に欠かせず
研究開発エコシステムがよりよく機能することは、科学技術・イノベーションの発展に欠かせない。一方で、研究現場では研究者の研究時間の不足や公的研究費配分の非効率性など、イノベーション促進を阻む諸問題が顕在化している。このような中で、旧来の限られた組織やセクターのみで解決策を見いだし、エコシステムを改善することは年々難しくなっている。

今、世界的なオープンサイエンスやデジタル技術の導入によって、研究活動そのものの在り方が変化している。研究活動に主体的に関与する新しいタイプの組織や人々の自発的な行動・アイデアの実践が、これからの日本の研究開発エコシステムには求められている。

※本記事は 日刊工業新聞2023年4月14日号に掲載されたものです。

<執筆者>
魚住 まどか CRDSフェロー

京都工芸繊維大学大学院バイオベースマテリアル学専攻修了。自然科学研究機構分子科学研究所、物質・材料研究機構を経て2019年より現職。分野横断的な検討が必要なテーマの調査に携わる。

<日刊工業新聞 電子版>
科学技術の潮流(191)研究現場に新たな動き(外部リンク)