2021年3月5日

第91回「実験技術者 組織強固に研究力強靭化」

リアル価値創出
工学系や理学系の研究や開発では、基礎から応用まで、さまざまな階層の実験データや技術データの集約・蓄積が必要とされる。また実験の規模にかかわらず、実験プロセスそのものが研究対象となっている場合も多い。このため、実験全体を俯瞰できる責任者の指揮の下、高度なスキルを持つ実験技術者が実験を遂行することが重要である。

プロフェッショナルによる制御された実験のデータは、高い信頼性を有した貴重なデータとしてデータベースに取り込むことができる。たとえ想定外の結果でも、失敗ではなく、有効に活用して次につなげることが可能なデータとなる。

研究インフラの拠点化・共用化の流れが広がっている中、拠点での実験を遂行する実験組織を作り、拠点内外の研究者から要望される実験に対応する研究推進体制は不可欠となっていくであろう。このような状況で高いレベルの研究を行うためには、実験技術者には今まで以上に高い知識と技能が求められる。

実験技術者の維持・育成には多くの課題があるが、それを克服して強固な実験組織を作っていくことが大切である。プロの組織による高度な実験が、「リアル」の価値を高め、研究力の強靭化につながっていく。

装置のDX化
一方、材料や創薬のインフォマティクスなどに不可欠なデータベースの構築では、少しずつ条件を変更して繰り返し行うような実験も重要となる。ここでも、確かなデータを数多く取得するには、スキルを持った実験技術者が携わる必要がある。

前述の実験プロセスそのものが研究対象になっている場合に比べ、このような実験では、設備の自動化や遠隔操作化などが比較的適用しやすい。装置のデジタル変革(DX)を進めることで、試料の交換、実験の遂行、結果の記録および実験現場への移動時間など、これまで実験技術者に課せられていた負担を削減することができる。

また複数の装置を1人で扱うことも可能となることから、組織全体としての作業負担も軽くなる。実験技術者は、生じた余剰時間を新たな知識や技術を習得する時間に充て、自らの能力を高めることに活用できる。プロフェッショナルな実験技術者の育成にとって、研究インフラのDXは欠かせないツールである。

※本記事は 日刊工業新聞2021年3月5日号に掲載されたものです。

竹内 良昭 CRDSフェロー(環境・エネルギーユニット)

九州大学大学院総合理工学研究科修士課程修了、重工メーカーにて新エネルギー関係の研究開発に従事。2020年より現職。環境・エネルギー関連分野の俯瞰調査・政策提言の作成に従事。博士(理学)。

<日刊工業新聞 電子版>
科学技術の潮流(91)実験技術者、組織強固に研究力強靭化(外部リンク)