2020年4月24日

第51回「DX、科技・イノベ変容 」

現場に浸透
人工知能(AI)、自動化、ビッグデータ(大量データ)などデジタル技術の活用がもたらす新たな価値と変革の観点から、科学技術のさまざまな分野の研究開発にいま何が起きているのかを横断的に俯瞰すると、分野の枠を超えて、「デジタルトランスフォーメーションに伴う科学技術・イノベーションの変容」が起こっていることが見て取れる。

研究開発の現場にデジタル技術が浸透することによって、21世紀の科学技術はそのあり方を大きく変容させており、いまは分岐点にあると考えられる。研究対象として、絶えず変動するオープンな複雑系システム(ヒトなどの生命システムから環境・社会システムまで)を取り上げることが増えている。そういった複雑なシステムは確率論で論じることが合理的である(論じざるを得ない)ことから、デジタル技術の進歩によって可能になるような、多数のデータの活用と相性が良い。

研究室での仮説の立証のような基礎研究と、成果を産業・社会で実装する活動、そして異分野連携や異業種連携、これら三つの関係がより密接になって動きが速まり、その動きの中から新たな付加価値やサービスが創出されている。

3つの変革
デジタル技術は、科学研究における新たな発見そのものや、研究開発に要する時間とコストの削減にもインパクトをもたらし始めている。特に、創薬研究や新素材研究においてデジタルトランスフォーメーション(DX)は着実に取り入れられ始めている。一方で、自然科学と人文学・社会科学の知見を総合的に活用する、社会システムに関連する研究分野においてはまだまだ要素の進展に留まっている。

こうしたデジタルトランスフォーメーションの時代と向き合うには、研究開発システムの変革、そして人や環境に寄り添う社会の構築に向けた研究開発(社会システムの変革)、大学や社会における教育体系の見直し(教育システムの変革)の三つの変革が必要となる。

そこで求められる研究開発システムは①問題解決に際し両輪となるデータ駆動アプローチと計算理論的アプローチ②計測技術、センサー・ロボット技術とAI技術との融合によるデータ取得・収集③オープンサイエンス・オープンイノベーション型研究プラットフォーム、を構築・活用することである。

※本記事は 日刊工業新聞2020年4月24日号に掲載されたものです。

島津 博基 CRDSフェロー/ユニットリーダー(ライフサイエンス・臨床医学ユニット)

大阪大学大学院理学研究科修了。JSTでは産学連携事業担当を経て、情報、ナノテク・材料分野などで分野の俯瞰や研究戦略立案を担当。マテリアルズ・インフォマティクスの提言などを執筆。弁理士試験合格。

<日刊工業新聞 電子版>
科学技術の潮流(51)DX、科技・イノベ変容(外部リンク)