第355回「希少資源、調達から循環へ」
資源に乏しい日本にとって、産業を支える原材料の安定確保は重要課題である。希少な金属資源の調達先確保にとどまらず、使用済み製品からの回収を含め、原料が最終製品になるまでのサプライチェーン(供給網)全体を見渡す視点が求められる。
特殊な供給も
非鉄金属は、銅、亜鉛、アルミニウムなどのベースメタル、金や銀などの貴金属、そして、生産量は少ないが産業上欠かせないレアメタル(希少金属)に大別される。昨今、日本近海の深海底泥からレアメタルの回収が注目された背景には、世界的な供給不安がある。新たな天然資源(1次資源)の開発は、経済安全保障上、極めて重要だが、すべての供給リスクが1次資源の確保で解決するわけではない。経済産業省が備蓄対象とするレアメタル34鉱種には、特殊な供給の仕組みを持つ金属が多く含まれるためだ。
レアメタルのうち、ニッケル、コバルトなどは、それらの金属を取り出せる天然の鉱石が存在するため、鉱石の安定的入手と、それを金属材料に加工する技術や施設の確保が重要になる。一方、半導体産業などで重要なガリウム、インジウムなどは、専用の鉱石が存在せず、他の金属を生産する際の副産物として得られる「副産物金属」(BPM)である。そのため、主となる金属の需要が下がれば、BPMが不足しても生産量を増やせない。34鉱種の半数以上を占めるBPMの場合、1次資源の確保では供給不安に対応できないのである。
製錬を再強化
希少資源の安定確保には、足元の需給だけでなく、将来の産業構造や部素材のサプライチェーン全体を視野に入れる必要がある。その中核となるのが、使用済み製品から回収した金属を再び投入する「資源循環」である。実際、国内で生じる廃棄物に含まれる希少金属の濃度が、天然鉱石より100倍以上高い例もあり、廃棄物を資源として活用できれば、資源安定供給に貢献可能である。
政府の日本成長戦略本部が発表した戦略17分野の官民投資ロードマップでも、1次資源の確保に加え、製錬技術の開発やリサイクルの低コスト化・高効率化への投資が明記された。日本が近代化の過程で培いながらも、海外勢の台頭で競争力低下が懸念される国内の金属製錬産業を再強化し、調達から循環利用までを一体的に機能させることが、地政学リスクに強い産業基盤の構築つながる。

※本記事は 日刊工業新聞2026年10月2日号に掲載されたものです。
<執筆者>
眞子 隆志 CRDSフェロー(ナノテクノロジー・材料ユニット)
東京大学大学院工学系研究科修士卒。電機メーカーにおいて、酸化物材料、携帯燃料電池、半導体実装などの研究開発に従事。19年から現職、ナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略立案を担当。博士(工学)、技術士(応用理学)。
<日刊工業新聞 電子版>
科学技術の潮流(355)希少資源、調達から循環へ(外部リンク)