第354回「AI・水、新たなつながり」
水需要が拡大
進化を続けるAI(人工知能)を支えているのは、データや電力だけではない。水もまた、AIに欠かせない資源だ。一方でAIは、水資源の適切な管理を支える重要な技術にもなりつつある。
AIの利用拡大に伴い、国内外でデータセンター(DC)の新設や増設が進む。DCは大量の電力を使うだけでなく、その冷却には多くの水を必要とする。さらに、DCの中核を担う半導体の製造や発電所などでも多くの水が使われている。
国際エネルギー機関は、DCに関わる世界の水消費量が2023年の約5600億リットルから、30年には約1兆2000億リットルに倍増すると推計している。23年の内訳では、約3分の2が燃料の生産・輸送と発電、約4分の1がDC内の冷却、残る約12分の1が半導体製造に由来する。
AIは世界各地で利用される一方、こうした水需要はDCや発電所、半導体工場などの施設が立地する特定の地域に集中する。日本は水資源が豊富とされるが、利用できる水の量は地域や季節で異なる。地域によっては、生活や農業・産業用水との競合も起こり得る。
負荷を抑える手段としては、水資源に余裕のある地域を選ぶほか、水消費を抑える冷却方式や再生水の利用などが挙げられる。また、低消費電力の半導体の導入や、AIの演算回数とメモリーアクセス回数を減らす工夫により電力消費を抑えることも、施設内の冷却負荷だけでなく、発電に伴う水消費の削減につながる。
管理にも活用
一方、AIは水の利用や管理にも活用され始めている。水道では漏水リスクの予測や設備異常の検知、需要予測など、安定した供給や効率的な運用を支える技術が導入されている。
活用先は水道に限らない。農業では気象や土壌水分、衛星などのデータをAIで解析し、必要な水量に応じて灌漑の時期や量を調整する取り組みが進む。こうした水の有効利用に加え、洪水・干ばつリスクの予測や、水量・水質の監視など、水資源管理への応用も広がっている。
AIは水の新たな需要を生む一方、水資源管理の高度化を通じて、地域の水需給に余裕を生み出すことにも寄与する。両者を相互に連関するものとして捉えることで、限られた水資源のどこに負荷が生じ、どのような利用が望ましいかが見えてくる。AI時代の水利用を持続可能にするには、負荷と便益の全体像を俯瞰し、施設立地、技術開発、運用ルールのあり方を総合的に考える視点が欠かせない。

※本記事は 日刊工業新聞2026年9月18日号に掲載されたものです。
<執筆者>
坪井 彩子 CRDSフェロー(環境・エネルギーユニット)
千葉大学融合科学研究科博士課程修了。15年入職。科学技術情報連携・流通促進事業、戦略的創造研究推進事業での業務に従事し23年4月から現職。博士(工学)。
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