2026年7月3日

第344回「エネルギー転換の現場から㊦ 地熱・重要鉱物の活用拡大」

AI(人工知能)やデータセンターの拡大に伴い電力需要が急増する中、エネルギーやインフラに不可欠な素材として、地中に埋蔵されている資源をより有効に活用する試みが進められている。掘削や探査技術の進展により、地熱や重要鉱物の活用の前に立ちはだかってきた大きな「壁」が打破されつつある。

探査と開発
地熱発電は従来、太陽光発電などと違い天候に左右されないという利点がある一方、地下に豊富な熱水や蒸気といった地熱流体が存在することが絶対条件であった。そのため、火山国である日本には高温の岩盤が広く存在するにもかかわらず、地下深くの熱水や蒸気の量を調べる難しさと莫大なコストが足かせとなり、資源を十分に生かし切れていなかった。ところが近年は、天然の熱水や蒸気がなくても、岩盤中に人工的に水を循環させて熱を回収する「次世代型」の技術開発が進み、活用の拡大が期待されている。

重要鉱物をめぐっては、新規鉱山の立ち上げに世界平均で十数年を要するのが実態であり、安定供給のためには探査技術の高度化や許認可手続きの迅速化が求められている。

3月に米国ヒューストンで開催された世界有数のエネルギー国際会議「CERAWeek2026」でも、地熱や重要鉱物の活用促進に向けた取り組みの紹介、課題の共有などが行われ、関心の高まりが感じられた。とりわけ地熱分野では、初期段階の地下探査のリスク低減に各国政府が関与する仕組みなど、官民の役割分担をどう設計するかが論点の一つとなった。

供給の不確実性
わが国における地熱と重要鉱物の開発では、「供給の不確実性」を技術と方策により低減することが極めて重要である。強靱なサプライチェーン(供給網)を築くには、新規開発に依存するだけでなく、地熱では従来の掘削技術や地下データの転用、重要鉱物では国家備蓄やリサイクル資源の活用などが、それぞれ必要である。

地熱の活用拡大は電源構成の多様化に、重要鉱物の供給は代替材料や省資源技術の育成につながり、地政学的リスクの低減に寄与すると期待される。こうした分野ごとの特性を踏まえつつ方策を組み合わせることで、単一技術に依存しない資源供給体制が形成される。そのためには、官民の結束した取り組みと継続的な投資が欠かせない。分野を超えた資源に関する方策の進展が、わが国の未来を確かなものにする。

※本記事は 日刊工業新聞2026年7月3日号に掲載されたものです。

<執筆者>
𠮷井 政之 CRDSフェロー(環境・エネルギーユニット)

千葉大学大学院工学研究科修士課程修了。総合化学会社にて石油化学品の製造・循環に関する研究開発などに従事。25年8月から現職。環境・エネルギー関連分野の俯瞰調査と戦略立案を担当。修士(工学)。

<日刊工業新聞 電子版>
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