第340回「回路設計、AI活用カギ」
米中韓が存在感
半導体が世界的に注目され、先端の研究開発が大きく動いている。AI(人工知能)の計算を高速化するAIアクセラレーターなどの高性能プロセッサーを実現するための仕組みから、高速・低消費電力・小型化のための製造方法に至るまで、その対象は幅広い。この潮流の中で、存在感を高めているのが中国と韓国である。
米国電気電子学会が主催する世界トップレベルの会議「国際固体素子回路会議(ISSCC)」では、2022年までは米国の半分以下の発表件数であった中国が、23年には米国を抜いてトップに躍り出た。26年には中国97件、米国55件、韓国47件となり、高性能プロセッサーに関する挑戦的な研究や学生・女性の研究発表が目立った。
一方、日本は前回比4件増の12件にとどまり、若手研究者の発表も少なかった。このままでは最先端研究をアピールする場において、日本の国際プレゼンスが低下していくことが危惧される。ISSCCでは、研究者間の交流を促す機会として毎年デモ展示セッションが開催されている。日本も斬新なアイデアの発表に挑戦し、このような場で研究者間の交流を深め、産学連携や国際共同研究への足掛かりを見つけてもらいたい。
「協調」で両立
半導体の研究では、省電力化と高性能化を両立させる挑戦が続いてきた。そして、両立を実現する方法の一つが、コ・デザインやコ・オプティマイゼーションといった「協調」である。
コ・デザインは、ハードウエアは簡単な構造とし、ソフトウエアで複雑な処理を実現するといった考え方である。コ・オプティマイゼーションでは、例えば高速で処理でき、消費電力が少なく、かつ回路面積も小さいプロセッサーを実現するなど、複数の要求をバランスよく満たすことを目指す。
ただ近年は回路が複雑になり、人の手でバランスさせることが難しくなってきた。そこでAIの出番である。今回のISSCCでもAIを駆使して回路の最適設計を試みた半導体チップに関する発表があった。従来、チップレイアウトは人が設計しやすいように、視覚的・幾何学的に整然と規則正しく配置されていたが、AIによる設計では電力、面積、速度のバランスが優先され整った並びではなくなった。
このように、今後は人間による常識的な設計では考えつかなかった回路や実装の形態が次々と出現するであろう。設計や最適化においてAIを徹底的に活用する力が、日本の存在感を高めるカギになるのではないか。

※本記事は 日刊工業新聞2026年6月5日号に掲載されたものです。
<執筆者>
平池 龍一 CRDSフェロー(システム・情報科学技術ユニット)
京都大学大学院工学研究科修了。電機メーカーにて研究開発ならびに技術戦略策定に従事。24年から現職。通信ネットワーク、コンピューティングを中心に技術動向の俯瞰調査、研究開発戦略の提案を担当。
<日刊工業新聞 電子版>
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