2026年5月29日

第339回「民間研究投資 米で急拡大」

米国では近年、官民合わせた研究開発投資、特に民間企業の研究開発投資が急増している。実際に、米国では官民合わせた名目の研究開発投資が2013年の4550億ドルから23年の9560億ドルと、10年間で2倍以上に増大しており、その増分のほとんどは民間企業が担っている。

デジタルけん引
それでは、米国での民間研究開発投資は、どのような産業分野で増大しているのであろうか。13年から21年のデータを分析すると、この期間の民間企業研究開発投資の増分(約40兆円)の約3分の2は非製造業(サービス業)によるものである。いわゆる情報産業はもちろんのこと、金融保険業、小売業など多様なサービス業において急増している。また、これらの非製造業を含めた民間研究開発投資の増分のうち、その半分強はソフトウエア分野に係る研究開発投資の増大によるものであると推計することができる。

一般的に、このような米国の民間企業の研究開発投資の増大は、近年、事業規模を急拡大している「GAFAM」と呼ばれるビッグテック企業5社によるものとみなされている。ただ実際に分析すると、ビッグテック企業5社によるインパクトは、これらの期間における民間研究開発投資増分の約4割程度にしか過ぎないと推計される。すなわち、米国の民間企業の研究開発投資は、ビッグテック企業の研究開発投資がけん引しつつも、デジタル分野の役割の増大というトレンドの中で、その他のサービス産業を含む産業全体のエコシステムが形成される形で、急拡大してきていると言える。

野心的な目標
日本政府も研究開発投資の増加に意欲を示す。26年3月に発表した第7期科学技術・イノベーション基本計画では、計画期間(26年度からの5年間)での官民合わせた研究開発投資について、総額180兆円(年平均にすると36兆円)との目標を掲げている。日本における24年度の実績が24兆円弱であったことを踏まえると、かなり野心的な目標であると言える。

米国の民間研究開発投資の増大は、米国独自の産業構造に基づくものであり、そのまま日本に適用することはできない。しかし、デジタル分野の役割の増大というトレンドの中で、日本の産業構造を踏まえた、官民投資目標の実現に向けた検討・取り組みが求められる。

※本記事は 日刊工業新聞2026年5月29日号に掲載されたものです。

<執筆者>
市川 類 CRDSフェロー(STI基盤ユニット)

政策研究大学院大学博士課程(科学技術・イノベーション政策)修了。中央省庁にて技術・イノベーション政策、デジタル・AI政策に従事。23年から現職。博士(政策研究)。

<日刊工業新聞 電子版>
科学技術の潮流(339)民間研究投資、米で急拡大(外部リンク)