第338回「AI for Scienceの展望⑦ 「使いこなす」研究者カギ」
関連論文が急増
論文データベースの分析によれば、AI(人工知能)の開発と他分野研究への活用を含むAI関連論文は、2015年には世界で3万報弱だったが、25年には50万報近くと16倍に急増した。本格的なAI時代を迎える中、AI技術そのものの研究者だけでなく、AIを使いこなす研究者層をどれだけ厚くできるかが、人間の問いとAIによる高速処理・高度分析を融合させたAI時代の研究力のカギとなる。
AI関連論文のうちコンピューター科学以外、すなわちAIを活用する分野における論文数は、15年には8000報に満たなかったが、25年には21万報に増えた。AIを研究に取り入れる動きが各分野で急速に広がっている。
もっとも、分野によってAIとの関わり方は異なる。経済学などではAIの研究者自身が研究に参加するケースが比較的多い。一方、地球科学や医学では、その分野の研究者がAIをツールとして研究を進める例が増えている。工学をはじめ、地球惑星科学、エネルギー、ビジネスなど大量のデータを扱う分野でもAI活用が先行している。
日本は低水準
AI関連論文から国・地域ごとの特徴も見えてくる。欧米や豪州では人文社会系の論文も多く、AIの応用に加え、社会や倫理への影響を分析する研究が広がる。AIが社会に普及するにつれ、その制度や倫理を議論する重要性も高まっている。一方、日本を含む東アジアでは、材料科学や化学などでAI活用が進む。
AI関連論文の総数では中国がけん引しているが、全論文に占めるAI関連論文の割合はインドが突出して多く、韓国が続く。これに対し、日本は主要国の中で低い水準にとどまり、研究へのAI活用が他の主要国と比べ進んでいない状況が見て取れる。こうした状況を踏まえ、文部科学省は26年3月に策定した「AI for Scienceの推進に向けた基本的な戦略方針」において、AI関連人材の裾野拡大と高度化を推進する方針を掲げた。
AIは、研究者の分析や発見の力を拡張する点で、かつての顕微鏡やスーパーコンピューターと同様に重要なツールと位置付けられる。文献調査や翻訳・校正など論文執筆の効率化から、自律的実験や大量データからの解の探索・現象の予測といった高度利用まで、AIを使いこなす研究者層の厚みが問われる時代になっている。

※本記事は 日刊工業新聞2026年5月22日号に掲載されたものです。
<執筆者>
野澤 龍介 CRDS主任専門員(エビデンス分析グループ)
東京大学工学部卒。医療機器メーカーにおいて技術開発に従事。18年から現職、論文・特許などの定量分析を担当。
<日刊工業新聞 電子版>
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